2.DX取り組み状況
ナイキの事例
コロナ禍で家の中にいる消費者とのつながりを強固にし、
莫大な数のアプリダウンロード数とナイキ会員の増大を実現した。
「コンシューマー・ダイレクト・アクセラレーション(消費者直接加速)」という戦略
(1)未来のマーケットプレイス
少数の戦略的小売パートナーとともに、
デジタル空間と物理空間(店舗)の融合を進める。
(2)新しい消費者構成
消費者を男性・女性・子供という 3 つの分野に分けて単純化し、
商品開発を再定義する。
(3)エンドツーエンドのテクノロジー基盤
DX(デジタルトランスフォーメーション)により商品や
サービスの提供スピードを加速し、ビジネス効率を高める。
2020年の第4四半期の売上は、
前年同期比 38%減少の 63 億ドル。
純損失は7億9000万ドルを計上した。
ナイキが純損失を計上するのは、
アジア通貨危機1998 年第4四半期以来。
その時に、DXを加速させた。
「デジタルエコシステムを使って消費者とのつながりをより強固にした」(SNS と自社アプリを組み合わせたデジタル戦略)
ナイキは、
EC サイト「ナイキドットコム」の他に、スマートフォンアプリとして
「ナイキアプリ」や「ナイキトレーニングクラブアプリ(NTC)」
などを展開している。
ナイキトレーニングクラブアプリ。有料だった NTC のプログラムを
無料にした。
これにより、消費者は動画によるワークアウトや専門家からの
アドバイスなどが無料で利用できるようになった。
デジタル売上高の推移は
2016年 17億ドル
2017年 22億ドル
2018年 28億ドル
2019年 38億ドル
2020年 55億ドル
2021年 90億ドル
デジタル中心の戦略へ
「コンシューマー・ダイレクト・アクセラレーション( CDA:消費者直接加速)」という新たな戦略
背景は
2019年末に1億8500万人だったアプリ会員数が、
2020年末には2億5500万人へと劇的に増加
(1)未来のマーケットプレイス
デジタル空間と物理空間(店舗)の融合
十分にデジタル投資できない小売店、価格を乱すディスカウント店など
を排除し、価格決定権を小売から奪い市場価格を
コントロールすることにある。
その証拠に、このところナイキの ASP(平均販売価格)は上昇し、
定価販売が着実に増えている。
それを可能にするのが、アプリ会員を軸とした
ナイキメンバーシップの増大である。
(2)新しい消費者構成
これまでの常識だった、
パフォーマンス部門(本格的なアスリート用製品部門)と
スポーツウエア部門(スポーツカジュアル部門)の観点から
消費者を分離するのではなく、
消費者構成を「男性」「女性」「子供」という 3 つの分野に分け、
商品開発を再定義した。
(3)エンドツーエンドのテクノロジー基盤
これは、一般的に言われる DX(デジタルトランスフォーメーション)の
ことで、需要検知、データ収集分析、在庫管理を単一の
統合プラットフォームで可視化することだ。
「エンドツーエンドのテクノロジー基盤」によって、
商品やサービスを提供するスピードを加速させ、
ビジネスの効率を高めることができる。
この CDA 戦略の実践により、2021 年度第 1 四半期の売上は
106億ドルで前期比 1%減、純利益は前期比 10%増の15億ドルを
計上した。デジタル売上は 83%の成長を遂げ、
ナイキアプリ会員は約 200%増加した。
決算報告によれば、第1四半期の売上は卸売事業と店舗の売上の減少を、
デジタル成長によってカバーしたという。
ナイキの会員数とアマゾンプライムの会員数
ナイキ アマゾン
2019年 1億8500万人 1億5000万人
2020年 2億5500万人 2億人
2021年 3億人 -
※ナイキは5月決算、アマゾンは12月決算のため年度単純比較はできない。
結果
DTC(直販)売上比率の推移
2010年 15%
2011年 16%
2012年 17%
2013年 18%
2014年 20%
2015年 23%
2016年 26%
2017年 28%
2018年 30%
2019年 32%
2020年 35%
2021年 38%
と、直販比率が高くなった。
ナイキのDXは、アプリ中心の戦略
2015 年春、「SNKRS(スニーカーズ)」というアプリをリリースした。
これはモバイルデバイスから限定スニーカーを簡単に購入できるアプリ
だが、そこには単なる商品購入にとどまらない仕掛けが実装されていた。
ユーザーはナイキメンバーとして登録すると、ナイキスニーカーの歴史や
デザインについての深い情報を得ることができる。それだけではない。
現在、このアプリには「ゲーミフィケーション(ゲーム化)」という新しい考え方が採用。
「ポケモン GO のナイキバージョン」のようなもの
SNKRS スタッシュが機能し始めると、
街中のどこかにある「スタッシュ・スポット」がアプリ上に出現する。
ユーザーはこのスタッシュ・スポットを求めて外を歩き回り、
スポットを見つけると、アプリの「アイアムヒア(ここにいる)」ボタン
をタップ。すると、アプリは GPS で位置の確認をする。
彼らが本当にそこにいれば、彼らはその場でシューズを
購入することができる。
限定版スニーカー「PSNY ×エアジョーダン12 」をアプリで販売した時、
ワシントンスクエアパークは、このスニーカーを探す人で埋め尽くされた
という。これはまさにストリートがナイキのデジタルストアになった
革命的な瞬間だった。
店舗が存続する可能性
ナイキは卸売先を40の戦略的小売パートナーに絞り、
デジタル小売にフォーカスしていく方針だが、
決して物理的な店舗が不要だと考えているわけではない。
店舗には「ナイキプラスアンロックボックス」という自販機の
ようなものが設置されている。ナイキアプリ内の QR コードを
この機械にかざすと、ユーザー特典としてステッカー、
スマートフォン・ケースなどが3週間に1回、無料でもらえる。
これには非常に高い販促効果があり、特典欲しさに
メルローズの店舗には平均7分に1人のペースで来店があったという。
●ナイキのDXが参考になる
自らの強みをデジタル世界に活かしたナイキ
ナイキのデジタル変革が本格的に始動したのは、ここ5年のこと
リセール(再販)市場
2019年に再販市場についてレポートしたコーウェン社によれば、
スニーカーマニアが再販サイトで購入するスニーカーの総額は、
全世界で60億ドル。その売上の多くがナイキに由来。
資産 とみなしていることを十分に認識していて、
資産価格を下落させないために限定スニーカーの供給量を
慎重にコントロールしている。
再販市場は、今やリアル店舗ではなくデジタル上で成立している。
ナイキのDXが参考になるところは
・コロナきっかけでDXを加速した。
昔から強かったわけではない。
だから、これからの中小企業もやり方次第では
ありうる。
・ビジネスの根幹を変更
直販へ移行、消費者の拡大
DXとは、後述するが、デジタル化をすることではない。
DXとは、ビジネスモデル変化なのだ。
だから、真剣に考えると、どの企業にも新しい売上の柱ができる。
・ブランド力
ナイキはブランド力が合ったからできたのではなく
ブランド力をより高めるために、DX戦略を構築している。
中小企業もブランド力強化をしていかなければならない。
DXを成功させるには、
変わることが重要(顧客・売り場・売り方・購入の意味づけ変える)
売上=客数×客単価×リピート率
この公式に当てはめると
売上げを上げていくには
客数:対象顧客を広げる
客単価:ブランド力を上げる、販売方法を変える
リピート率:特別感
これをしていくことが大切だとナイキの戦略から読み取ることができる。
3. DXは、意識改革が必要!?
DXには、新しいテクノロジーに関するスキルの習得が不可欠である。
だが、それだけでは不十分だ。
従業員がそのスキルを活用して、
新たなチャンスを創造しようという意欲が湧かなければならない。
そのために、デジタルマインドセットが必要なのだ。
心理学者によると、マインドセットとは物の見方や感じ方、
行動のもとになる考え方や、世界への向き合い方を指す。
【DX成功のポイントは、どう稼ぐか?どこで稼ぐか?
を再思考することと、
現在の課題は何かを全社思考で考えるきっかけになる。】
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