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3分でつかむ!令和女子の消費とトレンド/【第12回】令和女子とメイク欲の復活

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★TIRTIR(ティルティル)のクッションファンデーション「MASK FIT BEST CUSHION(マスク フィット ベスト クッション)」

 2つ目の事例は、韓国コスメブランド「TIRTIR」のクッションファンデーションです。

 近年韓国コスメブランドの勢いが増していることが指摘されています。その理由はコロナ禍を経てECでのコスメの購入が増え、さらに韓国ドラマや映画などのコンテンツ、K-POPアイドルなどの影響によって「第4次韓流ブーム(*)」が大きなトレンドとなっているからです。

<韓流ブームの歴史>
◉第1次韓流ブーム:2003年~『冬のソナタ』の大ヒット、『宮廷女官チャングムの誓い』等の韓流ドラマの流行。音楽の分野では東方神起、BoAが登場し人気を博した。


◉第2次韓流ブーム:2010年~ドラマ主導からK-POP音楽主導の韓流ブームに移行。少女時代、KARA、BIGBANG等の人気K-POPグループの日本進出。


◉第3次韓流ブーム:2016年~BTS、TWICEなどのK-POP音楽や、韓流ドラマだけではなく、韓国グルメ(チーズタッカルビ、チーズハットグ)、韓国コスメ(オルチャンメイク)などの流行が若年層を中心に広がり、新大久保のコリアタウンの注目度が高まった。


◉第4次韓流ブーム:2020年~コロナ禍の在宅時間増加で韓国コンテンツの存在感が世界的に増加。Netflix『愛の不時着』『梨泰院クラス』『イカゲーム』ヒット、映画『パラサイト 半地下の家族』等が話題になり、幅広い韓国カルチャーが世界的に老若男女問わず広がった。その他、日韓合同オーディション「Nizi Project」、自宅でのダルゴナコーヒー、日本にいながら韓国へ旅行した気分になれる「渡韓ごっこ」なども話題に。

 「クッションファンデーション」とは、スポンジ状の「クッション」にみずみずしいリキッド(液状の)ファンデーションを染み込ませたものに、パフを押し付けて肌に塗る使い方のベースメイク化粧品で、2008年ごろに韓国で発売されたのが発祥。現在では、世界中の化粧品ブランドが製造している定番アイテムとなりました。

 クッションファンデーションの利点は、まるで従来の「パウダーファンデーション」のように手を汚さずにスポンジで簡単にメイクできるのに、従来の「リキッドファンデーション」のようなツヤのある仕上がりが叶えられること。

左から従来のパウダーファンデーション、従来のリキッドファンデーション、クッションファンデーション

 ただし、これまでクッションファンデーションには「薄づきすぎてカバー力が足りない」「メイクが崩れやすい」という不満もあり、使う人は一部の人に限られていたという側面もありました。

 そんなクッションファンデーションのネガティブイメージを覆し、ヒットしたのがTIRTIRのクッションファンデーション「MASK FIT BEST CUSHION」。

 その特徴は、①厚塗り感は出さずに自然なツヤ肌がつくれるのにしっかり高いカバー力もあることと、②72時間持続して崩れないこと、③乾燥せずツヤ肌がつくれるのにベタつかずマスクにつかないこと。

 まさにリキッドファンデーションとパウダーファンデーションの良いところ取りを叶えた、これまでにないアイテムとして受け取られ、これまでクッションファンデーションを使ったことが無かった層や敬遠していた層からも支持されました。

TIRTIRのクッションファンデーション「マスク フィット レッド クッション」

 「MASK FIT BEST CUSHION」の成功の要因は、まず「ツヤのあるクッションファンデーションなのにカバー力がある、崩れない」という、従来のネガティブイメージを覆す驚きがあったこと。そしてカバー力の高さは写真で見ても分かりやすく、SNSでの口コミでも広がりやすい要素となりました。

 そして、ファンデーションがマスクについてしまうといった身近なインサイト(ストレス)に着目して「マスクにつかない」を押し出したこと。

 また、仕上がりの好みで選べるように「マスクフィットレッドクッション(赤)」「マスクフィットオールカバークッション(ピンク)」「マスクフィットクッション(黒)」と複数ラインナップを展開していますが、その中でも「赤」を定番として広告等では推しているため、「とりあえず話題のTIRTIRでクッションファンデにチャレンジしてみたい!」と衝動的に思い立った人が、店頭で迷わずに購入できることも重要な要素でしょう。

 「MASK FIT BEST CUSHION」の事例から学べることは、「クッションファンデーション」のようにもともと一定数の支持がありながらもニッチだった定番アイテムに着目し、ターゲットからの不満を解消し、ターゲットのニーズに合わせて改良すると、驚きのある、新しい商品としてヒットにつながる可能性があるということでしょう。

★終わりに

 最近のヒット化粧品の事例から学べるヒントは、以下の要素です。

新規性のある独自技術に、メイク欲求をかきたてる要素を掛け合わせて、「自分自身が楽しむための化粧」を叶えてあげること

一定数の支持がありながらもニッチな定番アイテムの不満を解消し、新しいターゲットのニーズに合わせて改良することで驚きのある商品をつくること

✔「試したい!」という衝動が起こったときに、最後に店頭で迷わせない工夫をすること

 新しい時代のターゲットのインサイト(本質的悩みや欲求)を抽出し、それに応えられる商品をつくれると、ヒットを生み出せます。ぜひ、この最新のインサイトを活かしてみてください!

阿佐見綾香(あさみあやか)
電通第4統合ソリュ―ション局・戦略プランナー。企業や商品・サービスのマーケティングや商品開発、リサーチ、企画プランニング、コミュニケーション戦略立案などを担当。GIRL’S GOOD LAB(旧・電通ギャルラボ)研究員として、時代とともに変化する女性インサイトと消費トレンドを研究。著書に『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる調べ方の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)。

ビジネス見聞録WEB 目次
p1 収録の現場から 〈楮原達也「決算書を読み解く技術」映像講座
p2 講師インタビュー 日淺光博「会社を進化させる『中小企業のDX導入法』」 
p3 今月のビジネスキーワード「リスキリング」
p4 3分でつかむ!令和女子の消費とトレンド/【第12回】令和女子とメイク欲の復活
p5 展示会の見せ方・次の見どころ

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