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第106回 帯広の農家

高島健一の「社長のメシの種」

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 先月、日本経営合理化協会の「社長のメシの種探検隊」で帯広を視察して来た。

 帯広を中心とした北海道十勝地方は、食料自給率が1,100%(日本の自給率20%)という農業地帯で、農家一戸当たりの耕地面積がEU並の42ha(全国平均の28倍、北海道平均h23ha)と大きく、収入も全国平均の300万円、北海道の600万円に対して1,200万円と高くなっている。
 
 その先頭を走っている尾藤農産では、1時間で2~3haの種まきや収穫ができる日本に1台しかないGPS制御のドイツ製、アメリカ製のトラクターや、レーザーセンサーで葉の色を見て肥料の量を加減したり、夜でも作業ができる装置を購入し、夫婦2人で小麦、大豆、ジャガイモなどを100haの畑で作っている。
 
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 また、土作りにこだわり、自分の畑の土をアメリカの研究所に送って土壌分析をし、必要以上のものを土に入れない「低投入型農法」を行なっている。
 これは、肥料、有機物などが大量にあると、土壌の中の微生物に悪影響を与えるためで、農業には「多様な微生物に富んだ土」がいいという考え方をしているためだが、その結果肥料代、農薬代などが減少し、数千万円もする機械が買えるようになったという。
 
 尾藤さんと一緒に、開拓時代の大正8年に建ったレンガ倉庫を改装した焼肉レストラン「KAGURA」をやっているオークリーフ牧場の柏葉さんは、乳牛として有名なホルスタイン種の雄牛を、遺伝子組み換えをしていないトウモロコシや大豆を餌を使い、抗生物質や添加物も与えないという方針で4,000頭飼育している。
 
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 ホルスタインの牛肉は「和牛」とは違い、脂肪分が少ない赤身の大衆肉だが、安くて安全という肉を食べてもらうために努力しており、流通経路を生産段階から最終消費段階、あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態にするトレーサビリティー(追跡可能性)を、日本で最初に肉牛で始めた所でもあるため、牛舎にいる牛の耳にはいろいろな色のタグが付いていた。
 
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 また、乳酸菌、酵素、酵母などを餌に混ぜているためか、牧場臭さをあまり感じなかったが、ここでも微生物を重要視していた。
 
■人体の考え方
 人体の方も微生物を重要視し始めており、最近では「人体は60兆個の人間細胞(2万3,000遺伝子)と100兆の微生物(300万遺伝子)の有機共同体」という考えのもとに、研究が行われている。
 
 人間が食べているものには、人間の持つ酵素では分解できないものがあり、日常カロリーの10%は主に腸内にいる微生物が分解して人間に供給しているようで、その中には母乳に含まれる「グリカン」やビタミンなどもある。
 
 腸内細菌の混乱が肥満、栄養失調、糖尿病、喘息、湿疹、肝臓病、腸の病気、自閉症などとも関連するという報告もあり、抗生物質などで体内細菌を全般的に破壊するのではなく、悪い微生物のみを攻撃する薬や、微生物の遺伝子と病気の関係の研究などが始まっている。
 
 農業、酪農でも医学でも微生物が注目され始めているようだ。
 
 
◎高島健一先生のセミナー
 
======== DATA =========

●尾藤農産
http://www.bitou-nosan.com/

 
●オークリーフ牧場
http://www.oakleaf.jp/
 
●「Microbes maketh man」(微生物が人体をつくる)
英エコノミスト誌 2012年8月18日号
http://www.economist.com/node/21560559
 

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