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- 第178回 オムニチャネル
小売業では「オムニチャネル(Omni-Channel Retailing)」化が話題となっている。
これはインターネットやスマートフォンの普及により、店舗だけでなくネットで気楽に買い物ができるようになったため、お店でもスマートフォンでも同じように割引やポイントが付いたり、決済や受け取り方法もその時に応じて都合のいいものが選べるようにするものだ。
そのためオムニチャネルでは、これまでの「売る側の発想」から「買う側の発想」に切り替えることが重要で、「チャネル戦略」ではなく「顧客戦略」と考える必要がある。
しかし、実店舗で試着してネットで購入したり、ネットで予約して実店舗で受け取るなど、顧客の買い方が多様化するため、在庫をどこに持つか、配送の場合は誰がどこから送るか、リアルタイムの在庫管理をどうするかなど、実店舗とネット販売を共通にしたシステムの構築が必要になる。
■GU
このような状況の中で、ユニクロの姉妹ブランドGU(ジーユー)がオンラインストア6周年記念祭として、5月17〜22日に行った、一部商品をネット販売限定で割引するというセールを行い話題になった。
これはネット販売の比率を現在の5%から30%以上に引き上げる狙いの企画で、一部商品を日替わりで店舗より100円から500円ほど安くして割安感を出し、客をネットに誘導するというものだ。
ネットと実店舗の価格を同一にする通常のオムニチャネル戦略に対し、あえて価格差を設けて集客力のある実店舗から販売効率の良いネット通販に消費者を誘導するのが目的だという。
私は最終日の22(日)に銀座店に行ってみたが、「来店した消費者にもネット通販の割引を告知して、店内でも注文してもらう」「通常は、税別5,000円未満の買い物では450円かかる送料も無料にする」という新聞記事とは違い、店内には一切ネット販売セールを告知する表示がなく、店員に聞いても何人かを経由してやっと対象商品が分かるという状況で、試着後にスマートフォンで注文する画面では、店頭1,490円のストレッチハーフパンツが990円となっていたものの、450円の送料が加算されたため税込み1,555円と店頭価格より高くなっていた。
■銀座伊東屋メルシーアプリ
東京銀座にある文具専門店「伊東屋」は、スマートフォン向けに「メルシーアプリ」を開発した。
このアプリは店頭でQRコード、バーコード読み取りによる商品の取り置きからオンライン決済、受取場所(店頭、配送)の選択まで、好きな方法での買い物が可能になるという、オンラインショップの買い方を実店舗に融合したオムニチャネル化された「新たな買い物体験」を提供するものだ。
私は、メルシーアプリを使って自宅でネットで購入したものと、店頭で商品取置したものを受け取り設定し、指定した階のレジで知らせを待っていたが、30分以上経っても知らせが届かないため聞いてみたところ、届いていた商品の確認をしていなかったとのことだった。
オムニチャネル化だけでなく、新しいサービスや企画は、システムがいかに良く出来ていても運用ができていなければ逆に評判を落とすことになりかねないため、事前準備をちゃんとしておくことが最重要だと感じた。