日本経営合理化協会の「社長のメシの種探検隊」で、広島三越の食品売り場を視察した。
百貨店大手4社の発表によると、11月の既存店売上高(速報)は、高島屋のみ化粧品などの婦人雑貨が好調で、訪日外国人向け売上も3カ月連続で増加したため、対前年1.3%増と4ヶ月ぶりにプラスとなったが、そごう・西武が4.7%減、大丸・松坂屋が4.5%減、三越伊勢丹が2.2%減と苦戦が続いている。
10月の全国百貨店売上高も前年比3.9%減と8ヶ月連続でマイナスが続いており、3ヶ月毎で見ても、4〜6月4.1%減、7〜9月3.4%減と、減少傾向が続いている。
■広島三越
このような中で11月に三越伊勢丹は、広島三越、松山三越、伊勢丹松戸、伊勢丹府中の不採算4店舗の抜本改革に乗り出す方針を明らかにし、売場面積の縮小や他社との提携によるテナント導入などの新業態へ転換する方向で検討するとした。
しかし、11月の売上を見ると、三越伊勢丹グループ26店の中で黒字となった4店に広島三越が入っており、4〜11月では唯一広島三越だけが前年同期比100%を越えて(100.4%)おり好調だ。
これは、4月29日に全面リモデルが完成した地下1階の食品売場の貢献が大きい。
食品売り場は全売上の40%を稼いでおり、これにより来店客は半年で16万人増(1日あたり1,000人増)、売上も108%で推移している。
また、食品売場のリモデル後は30〜50代の来店が140〜150%と増加し、高齢者に偏っていた客層も若返っている。
「個店ごとに対面販売をする」というこれまでの百貨店・食品売場の固定概念を破り、ショーケースをなくし、カートを押しながら買い回れるようにし、食べられるイートインスペースを10ヶ所(合計88席)にし、お客様にあきられないよう展示方法を工夫もした。
イートインは好調で、広島宮島口で行列になっている「うえの」のあなごめし、イギリスの紅茶などを販売する「フォートナム・アンド・メイソン」の本格的アフタヌーンティー、期間限定で話題のラーメン店が出店する「名人の台所」、カウンターがすぐに満席になるワインの「エノテカ」、広島の地酒が飲める「日本酒バー」などがある。
■AJIKURA by アルケッチャーノ
その中で、今回探検隊で視察した「AJIKURA by アルケッチャーノ」は、山形県鶴岡市の地産地消レストラン「アルケッチャーノ」の有名シェフ・奥田政行氏と、島根県邑南町のA級グルメレストラン「AJIKURA」がコラボレーションしたパスタハウスだ。
毎日届く邑南町の野菜を使った美味しいパスタやデザートが食べられるので、全国から客が来ているが、夕方からは邑南町で作った野菜を売る「マルシェ」も開催しており人気となっている。
全国で百貨店が苦戦する中、広島三越の取り組みはいろいろな面で参考になりそうだ。