3月始めに、日本経営合理化協会の視察ツアーで行ったUAE(アラブ首長国連邦)を代表するドバイとアブダビは、隣接する首長国だが、経済基盤も今後目指す方向性も大きく違っていた。
前回書いたように、ドバイは世界一の空港、人工港湾、ビル、リゾートなどを建設しているが、それは1966年に石油が発見されているものの、天然資源収入は全体の5〜7%と少ないため、物流のハブ、リゾート、金融などで発展を目指している。
一方、石油の出るアブダビも、このところの原油価格下落や電気自動車へのシフトなどを見据えて、脱石油経済を念頭に置いており、文化・教育の中心地を目指している。
■アブダビ首長国
アブダビ首長国は、UAEの2/3を占める最大の面積を占める首都で、人口210万人、首長は大統領を兼任している。
1958年に石油が発見される前は砂漠の遊牧民で、1930年代は海沿いで天然真珠を採っていたが、養殖真珠が出てきて天然真珠は値下がりしていた。
建国の父であり、初代UAE大統領となったザイード・ビン・スルタン・アル・ナヒヤン前大統領(1918年〜2004年)が1950年代にパリで石油のことを知り、当時、石油探査技術が世界一だったロンドンのBP(ブリティッシュ・ペトローリアム)に依頼して石油を発見、経済基盤ができてイギリスからも独立し、現在の中東となった。
シェーク・ザイド前大統領が緑を好み緑化を進めたことから、街中にはナツメヤシの木を6万本植え、これにより砂嵐の緩和、日除けになっている。
街の中は芝生の公園も多く、鳥が鳴く砂漠とは思えない街となっている。
アブダビ政府は経済多角化計画「アブダビ・エコノミック・ビジョン 2030(Abu Dhabi Economic Vision 2030)」(2008 年公表)、 都市開発計画「プラン・アブダビ 2030(Plan Abu Dhabi 2030)」(2007 年公表)を掲げ、これに基づいたインフラ投資や不動産開発を進めているが、「アブダビ・エコノミック・ビジョン 2030」は、石油・ガス部門以外の重点産業の GDP 寄与度を605以上に発展させることを目標とする経済計画で、対象の重点産業にはエネルギー集約型産業(アルミ、鉄、石油化学など)をはじめ、貿易、観光、航空、宇宙、医療、メディア、通信、教育、金融などが含まれる。
「プラン・アブダビ2030」は、アブダビを300 万人の国際都市にすることを前提にした、水、交通、電力など のインフラ投資計画で、中心地を含めた開発も行っている。
文化面ではNY大学、クリーブランド・クリニックなどがあり、2006年に契約を締結してサディヤット島に建設中のグッゲンハイム美術館が今年オープン予定、来年中に完成予定のルーブル美術館も建設中だ。
現在の空港の拡張工事も始まっており、完成後はアメリカ入国審査を済ませられる第3ターミナル以外は移転し、現在の空港は商業施設となる予定というが、拡張が完成すれば、アブダビ国際空港は許容乗降客数が年間 2,700 万人の計画だ。
同じUAE国内で隣接している首長国だが、ドバイとアブダビの印象は大きく違っており、水と緑の豊富な日本から来た我々は、緑の多いアブダビの方が落ち着けた。