
だからこそトヨタ式改善を本格的に導入するにあたっては是非とも「人づくり」も並行して進めることが必要になりますし、「改善によって知恵ある人を育てよう」という思いも大切になります。
では、「知恵ある人を育てる」には何が必要なのでしょうか?
1、答えを教えるのではなく自分で考えさせる
仕事をしていると上司はつい部下に細かい指示を与え、答えを先に教えることがよくありますが、それでは部下の考える力は育ちません。時間はかかるし、しっぱいもあるかもしれませんが、答えを教えるのではなく、自分で考えさせ、上司はアドバイスをするという姿勢が必要になります。
2、+αの知恵にこだわる
トヨタ式の基礎を築いた大野耐一さんの口癖は「言うとおりにやる奴はバカ、やらない奴はもっとバカ、もっと上手にやる奴が利口」でした。今の時代に同じことを言うと、パワハラになりかねませんが、大切なのは「指示した通り」「言われた通り」の仕事ではなく、そこに少しでも「部下なりの+αの知恵」をつけて、少しでもより良いやり方をすることです。知恵の数だけ競争に勝てるし、人は成長します。
3、制約の中でこそ知恵は出る
これも今の時代だとパワハラになりかねませんが、大野さんは部下に対して「ゼロを1つとれ」「一桁多い」「1時間を3分にしろ」といった無茶な注文をすることがあったといいます。そこにあったのはたくさんのお金や人、材料があれば誰でもものはつくれるが、限られた中でつくるには知恵がいる、という考え方です。
「制約の中でこそ創造性は発揮される」という言い方がありますが、ある種の制約の中で懸命に考えることも大切なことなのです。
4、3人寄れば文殊の知恵
1人の知恵には限界がありますが、みんなで考えれば良い知恵も出ます。あるいは、「チリも積もれば山となる」的に小さなアイデアを集めてよいアイデアにするのも大切なことです。
ほかにもたくさんの仕組みがありますが、何より大切なのは「知恵は誰にでもある。違いは引き出し方が上手いか下手かだけ」という人間の知恵と力への信頼です。改善によって是非、人の知恵を引き出し、人を育ててください。それこそが企業の成長の源なのです。
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