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人事・労務

第1講 ウェルビーイング経営のススメ―社長は今こそトップメッセージを―

顧客・社員・社会から支持される「ウェルビーイング経営入門」


2 ウェルビーイング経営と健康経営の違い
ウェルビーイング経営と言うと,狭い意味での健康経営を指すこともあります。確かに従業員の健康を高める取り組みは重要です。一方,広い意味でもウェルビーイング経営では,従業員の健康に限定しないことが特徴です。広義のウェルビーイング経営とは「自社のステイクホルダー全員の幸せを共に創り出していく経営」のことであって,このステイクホルダーの中に従業員も含まれる,という位置づけです。したがって,ウェルビーイング経営の中の一部に健康経営がある,という理解が正しいでしょう。

3 ウェルビーイング経営と「三方よし」の違い
また,ステイクホルダーの幸せといえば,近江商人の「三方よし」を思い出す方経営者も多いでしょう。「三方よし」とは,自社だけが利益を追求するのではなく,顧客と従業員をステイクホルダーに掲げ,この三者の利益を共に大事にする近江商人の商売理念,ウェルビーイング経営に近い発想です。では「三方よし」とウェルビーイング経営はどう違うのか?その答えは,ずばり,ステイクホルダーの広さです。

ウェルビーイング経営でいうステイクホルダーには,従業員,顧客だけでなく,仕入先などの取引先,投資家や株主,環境や地域,そして私たちの未来もステイクホルダーに含まれます。
そして,ウェルビーイング経営では,ステイクホルダーのウェルビーイングを実現することは,事業の本質だと考えます。なぜなら,従業員,顧客,取引先,地球環境などのステイクホルダーが廃れて力を失ってしまえば,自社の事業そのものが立ち行かなくなり,逆に,ステイクホルダーが幸せに力を伸ばせば,自社事業も共に成長するという,「幸せ循環」の思考がベースになっているからです。

4 ウェルビーイング経営が求められる背景―幸福のパラドックス―
「ウェルビーイング経営」が求められるようになった背景には,過去の経済成長第一主義や,環境破壊の歴史への反省があります。産業革命以降,企業は,利益や規模の拡大をめざし奔走してきました。経済はめざましく発展し,社会にはモノやサービスがあふれています。インターネットやスマートフォンなどの通信手段も発展し,物流改革とも相まって,わたしたちは24時間どこにいても,好きなものをほしいままに手にすることができるといっても過言ではありません。

一方で,こうした発展は,大量生産大量消費,格差社会,環境破壊といった負の側面を拡大させてきました。実際,地球温暖化や異常気象など環境問題は深刻です。また,これだけ働いて経済発展を遂げても,人の幸福度はちっとも上がっていないというデータもあります。世界幸福度ランキングでも,日本は2020年以降,62位,56位,54位となかなかの低迷ぶりです。このように,経済的な発展と人の幸福度が相関しない現象を「幸福のパラドックス」と言います。このパラドックス現象から脱却し,持続可能で真に幸せな社会を実現するため,経済第一主義から大転換した新しい経営のあり方,これがウェルビーイング経営なのです。

5 ウェルビーイング経営を取り入れるメリット
ウェルビーイング経営を取り入れることで,企業価値が向上することが知られています。たとえば,従業員の幸せに取り組めば,従業員の健康やエンゲージメントが高まり,会社の風土はもちろん,業績も改善されます。幸福度が高い社員の生産性はそうでない社員よりも31%高いという研究結果(慶応義塾大学前野隆司教授)も,それを証明しています。

また,顧客の幸せをもっと実現しようとする姿勢は,既存サービスの改善や,新しい優れたサービスの開発によりつながりやすいと言われています。
さらに,環境に配慮した事業への転換によって,企業の社会的責任を果たすことができます。最近は,環境にやさしい商品を求める消費者のエシカル志向も急激に高まっており,ウェルビーイング経営は,そうした消費者心理に応えることにもつながります。

また,人材獲得の点でも作用します。ウェルビーイング経営という組織文化があれば,共感する人材が集まりやすいうえ,入社後も仕事に誇りを感じ続け,離職率も下がることが知られています。幸せな組織をつくることは,多数のメリットをもたらすのです。
では,実際に,ウェルビーイング経営を明確に打ち出している注目の日本企業事例を紹介しましょう。

次のページウェルビーイング経営を実践する注目の日本企業

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第2講 従業員のウェルビーイングを上げる方法―PERMA理論から見たウェルビーイング経営のポイント―次のページ

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