6 ウェルビーイング経営を実践する企業
ウェルビーイング経営を明確に打ち出している日本企業として,以下は注目です。
(1)丸井グループ
「マルイ」やエポスカード事業を束ねる丸井グループは,そのテーマを「人と社会のしあわせを共に創るWell-being経営」と設定しています。トップメッセージで「丸井グループのめざすWell-being経営は、「Well-being」の視点を通じて新しい価値を創り、社会全体をしあわせあふれる場所にしていくことです。」と述べ,明確なウェルビーイング第一の姿勢を打ち出しています。
丸井グループのウェルビーイングへの取り組みは,現在の青井浩社長の就任と同時に始まったとされており,既に17年の歴史を持っています。ウェルビーイング経営のトップランナーの一つです。
参考/丸井グループの共創理念体系
(2)トヨタ自動車
トヨタ自動車は,自社のミッションを「幸せを量産すること」と定義し直しました。つまり,トヨタの価値は単に車や利便性を売るだけでなく,世界中の人たちが幸せになるモノやサービスの提供であると明示したのです。
自動車生産を「幸せの量産」と言い換えた発想はまさにウェルビーイング経営への転換そのもの,車離れが進む時代でもトヨタが躍進を続ける源泉と言われています。
参考/トヨタフィロソフィー
(3)第一生命グループ
生命保険の第一生命グループは,2021年「日本、そして世界の国と地域ですべての人々のwell-beingに貢献し、社会とともに未来を築く」とミッションを刷新しました。そして,将来世代も含めたすべての人々のwell-beingの実現を目指すこと,社会・地球環境と調和し、世界の持続可能性を確保することは、末永く事業を営む上での大前提であるとの考えを発表しています。ウェルビーイング経営の特徴は,顧客や授業員だけでなく,環境や,未来,将来世代をステイクホルダーとして掲げる点です。それを明確に言語化している点で,ウェルビーイング経営の本質を力強く打ち出したメッセージといえます。
参考/第一生命グループが目指すこと
(4)楽天グループ
巨大EC産業である楽天は, 2019年,経営陣にCWO(チーフウェルビーイングオフィサー)のポストを設け,各部署に100人以上の「しあわせ係」を配置。個人、組織、社会3つの側面からウェルビーイングを高める取り組みを進めています。メッセージだけでなく,実際に組織構成や人員配置に落とし込んでいる点で,一歩進んだ具体例といえるでしょう。
参考/楽天における健康・安全・ウェルネス
このような各社のメッセージや取り組みは,企業の経営方針でもあり,また,ブランディングの価値も含んでいます。
7 パラダイムシフトの波をつかむ
ウェルビーイング経営とは、自社のステイクホルダー全員の幸せを共に創り出していく経営のことです。ウェルビーイング経営の登場は,産業革命以降最大のパラダイムシフトとも言われており,これからの経営のスタンダードとなっていくことが見込まれます。経営者としては,この波をつかむことが必須の力になるでしょう。そして,ウェルビーイング経営を実践する第一歩は,企業のトップが,ウェルビーイングを大事にすると決意し,ミッションを明確にすることです。経営者のみなさん,今こそ,事業の価値をステイクホルダーとの関係で振り返り,ピッタリのウェルビーイングメッセージを打ち出してみてください。