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人事・労務

第14講 経営者が弁護士と良好な関係を築く方法

顧客・社員・社会から支持される「ウェルビーイング経営入門」

支援の力を持つ弁護士を見極めるための2つの視点

 では、支援の力や姿勢を持つ弁護士とはどうやって見極めるのでしょうか。カギとなるのが、「傾聴力」と「質問力」です。

1. 傾聴力

 一点目は、傾聴力があるか。つまり、弁護士が一方的に見解を述べるだけではなく、しっかりと経営者の話を聞けているか、これが大事です。

 具体的には
 ・目を合わせて聴いているか
 ・途中で話を遮らないか
 ・適度に頷いたり、相槌を打ちながら聞いているか
 ・相談者の意向を踏まえずに法的な結論だけを述べてはいないか

 これらは、人としてのマナーに近い点もあり、信頼関係の基礎でもあります。
 経営者と弁護士は長い付き合いになる可能性もあります。長い付き合いの中で、苦しい時も良い時も一緒に経営の波を渡るパートナーになっていくことが良い関係と言えます。話していて不愉快に感じるようであれば、それは、やはりNOです。

 言い換えれば、法的にはプロかもしれないが、コミュニケーションの面では素人、という相手とは、経営者としては安心して長期的な相談ができないはずです。

 まずは、弁護士が一方的に見解を述べるだけでなく、経営者の話をしっかりと聴く姿勢を持っているかどうか、これが最初のチェックポイントです。

2. 質問力 ―質の高い質問とは?―

 二つ目は、質問力です。質問は、普段から誰でも何気なく行っているようでもありますが、実はその人の発想や視点がそのまま表れたものです。そして、質問は、対話の流れを決定づける威力も持っています。質の高い質問ができるかどうか、これは、相手を見極める重要なカギとなります。

 では、質の高い質問とは何なのでしょうか。弁護士と経営者の対話における質の高い質問とは、視点に関する質問、感情と価値観に関する質問、努力経緯に関する質問、未来に関する質問 などが挙げられます。ひとつひとつ見ていきましょう。

(1)視点に関する質問

 視点に関する質問とは、出来事(事実)だけでなく、その出来事に対して、本人がどう思っているか、どんな視点を持っているかを問う質問です。

 例えば、従業員から離職の申し出が相次いだ時に、その事実の聞き取りに加えて「そのことを、ご自身はどうとらえていますか」と、視点を問うのです。事実は同じでも、人によって視点、捉え方は全く異なります。

 先ほどの例でいえば、相次ぐ離職に対して「自分の力量が足りなかった」という見方もあれば、「今の若い人は根性が無いから」という見方もあり得ます。そして、人は、自分の視点をあたかも当然のことのように思っていることが多いもの。また、時には、その視点を自分が当然のものとして持っていることに気が付かないことさえあり、質問されて初めて気が付く、ということもあるわけです。

 人は、起きた出来事そのものよりも、それをどうとらえたか、視点によってそのあとの判断を決めています。視点の質問ができることは、質問力が高い人のサインとも言えます。

(2)感情と価値観に関する質問

 視点や考え方をたずねたときに、さらには、同時にどんな感情が沸き起こっているかを尋ねるのも良いとされています。

 時に、「経営と感情論は別もの」という考え方もありますが、現実的には、経営者も人であり、また、組織とは人の集まりです。人には常に感情がある以上、感情を抜きにした判断は現実的ではなく、感情をおろそかにするとむしろ失敗します。感情的になって間違った判断をしないためには、むしろ、さまざまな感情に向き合うことから始めるのが知的な判断過程なのです。

 優れた経営者は感情知性が高いといいます。経営者自身の感情や従業員の感情を無視せず、それをうまく言語化し、調整できること、すなわち、理論と感情を共に制御できるのが優れた経営者です。その観点で、経営者に対して、弁護士側から、例えば「その事実を知ってどんな感情が起きましたか」などと問うのであれば、それは質の高い質問と言えます。

 さらに、「その感情は経営者としてのどんな価値観から生まれているのでしょうか」といった質問は、感情と価値観を合わせて問う質問であり、かなりレベルの高い質問です。

 例えば「部下に対して甘い管理職にはとてもイライラして腹が立つ」という場合に、その下にある価値観をたずねると「管理職たるもの、部下には多少厳しくても徹底的に指導すべきだ」という価値観が表れてきたりします。

 このような価値観の存在は、普段は自分でも気づかないことが多いものですが、実際にはこうした経営者の価値観が、会社の雰囲気や風土に強い影響を与えているものです。こうした角度の質問ができるならば、その人は質問力が高いと言っていいでしょう。

(3)努力経緯に関する質問

 努力やそこまでの経緯に関する質問も重要です。弁護士はついつい、結論や現状がどうなっているかという点に目が行きがちです。

 しかし、経営者のみなさんならわかるとおり、弁護士への相談に行く前に、なんらかの対応をしていたり、手を打って努力してきた経緯がきっとあるはずです。その過程にしっかり目を向けて、そこにフォーカスした質問ができるか、これは弁護士が持つべき質問力の一つです。

 なぜなら、それまでの経緯に、経営者の価値観が表れていることもよくありますし、そもそも、その経緯や努力には、弁護士も敬意を払うべきだと考えられるからです。相談に来るまでの経営者の努力や経緯に目を向ける質問があるか。これも弁護士の質問力を見極める大事なポイントです。

(4)未来に関する質問

 そして、経営とは常に未来を作っていく営みです。その未来に照準を合わせて、いったいどんな未来を作っていきたいか、という視点を問いに出せる弁護士は信頼できるといっていいでしょう。

 弁護士にとっては、法律に基づいて杓子定規に判断をすることはある意味、容易なことでもあります。しかし、それが長期的に見て、経営者自身や会社の未来をどう形作ることになるのか、それこそが経営支援において真に大事なところです。

 経営者に伴走するということは、現在だけでなく、未来の姿にも思いをはせて、経営者と弁護士が一緒に対話できるような関係に入ることです。そのために、弁護士の側から、「会社の未来をどう描いていますか?」「その時に、あなた自身はどんな存在になっていたいのですか?」といった未来志向の質問ができるなら、伴走力かつ質問力の高いサインと言えるでしょう。
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