4 ソーシャル・ウェルビーイング ー人間関係の幸福ー
ソーシャル・ウェルビーイングとは、豊かな人間関係の中で感じられる幸せのことです。
人間の悩みのほとんどは人間関係に起因する、と言ったのはアドラーですが、あながち、大袈裟でもないかもしれません。多くの経営者は、社内の人間関係のもめ事やトラブルに頭を悩ませたことが一度はあるのではないでしょうか。
人間関係のトラブルは、仕事に大きな影響を与えます。上司とうまくいかなければ、会社に行くのが嫌になるかもしれません。社内でうまくコミュニケーションできなければ、心配事を相談できず、一人で抱え込んで思わぬトラブルが起きるかもしれません。また、経営者にとって深刻な問題である不正隠蔽やハラスメントなどのコンプライアンス問題も、社内の信頼関係が希薄な状態で起きやすいと言われています。
社内のコミュニケーションを高めるための施策をとったり、コミュニケーションに関する研修を行うことは、ソーシャル・ウェルビーイングの観点から、経営的にも重要な意味があることなのです。
具体的には
・社内のメンバーの顔と人となりがわかるコミュニケーションボードやアプリを導入する
・社内報で社員の紹介インタビューを実施
・季節のイベントを利用した懇親会
・コミュニケーション研修
などが考えられます。
5 ファイナンシャルウェルビーイング
ファイナンシャル・ウェルビーイングとは経済的に安定した状態のことです。精神的な幸せや人間関係も大事ですが、経済的に安定していることは、生活を営む上で、やはり欠かせないことです。
そして、経営者としては、会社の利潤を追求するのが当然ですが、従業員に利益を適切に配分し、社員のファイナンシャル・ウェルビーイングを高める努力をすることで、結局は事業も成長すると考えられます。
なお、社員の資産形成リテラシーを高める教育なども、会社が社員のファイナンシャル・ウェルビーイングのためにできる施策の一つです。
具体的には
・適切な人事制度と給与の仕組み
・従業員持ち株制度やストックオプションの利用
・ファイナンシャルプランナー等による社員の資産形成セミナー実施
・資産形成について相談できる福利厚生サービス
なども有効な戦略です。
6 フィジカル・ウェルビーイング
フィジカル・ウェルビーイングとは、健康で身体的に良い状態にあることを指します。当然のことですが、健康な身体はすべての活動の資本です。昔は、いわゆるブラック企業が従業員を働かせすぎたり、時には精神的に追い込むなどして、健康を奪う実態がありました。
今では、ブラック企業は敬遠され、従業員の健康状態を悪化させれば、生産性は下がり、休職や退職につながることは目に見えています。
働くことで健康を損なうのではなく、むしろ、その会社で働くことが健康を高めるような仕組みを作ることが、フィジカル・ウェルビーイングの観点からの経営戦略です。
なお、経済産業省が推進する「健康経営」は、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する仕組みのことです。つまり、従業員の健康増進が、企業の持続的な成長に大きく寄与することは、もはや経営者の常識です。
具体的な施策としては
・健康(睡眠や食事、メンタルヘルス知識を含む)に関する研修やセミナーを社内で実施する
・運動量を測定するアプリを社内で共有し、運動意欲を高める
・有給休暇の取得率を高めるために、取得状況を社内で部署ごとに見える化し、取得を互いに推奨し合う
・社内のおやつやランチコーナーに野菜素材のヘルシーなおやつや食べ物を導入する
などの取り組みが見られます。