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製造業

第292号 理想的な在庫の量は、ゼロである~その2

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

【急所67】理想的な在庫の量は、ゼロである。(158頁)

 今回も、先回291号に引き続き「在庫の削減方法」の話をいたします。
 
 先回ご紹介した、私が改善のおてつだいをしているN社の課長・Sさんは、ありがたいことに拙著「儲かるメーカー 改善の急所101項」の読者です。
 
 そして、本書をお読みいただいたSさんからいただいた質問で、非常に重要な気づきを得ました。
 
 どんな質問かというと、上記158ページ「理想的な在庫の量はゼロである」についての、こんな質問でした。
 
 「本当に、在庫ゼロなんてことはあり得るのですか?」。
 
 どうやら、そんなことはとても無理だと思っているようです。そして、Sさんはご自分の職場は在庫ゼロからは程遠いと思っているようでした。なぜなら、私からいつも「在庫が多い」とか、「この在庫を持つ理由は?」とか言われ続けているからです。
 
 そこで、私はこうお答えしました。
 
 「在庫ゼロの職場はたくさんあります。げんに、Sさんの職場はジャストインタイムで出荷に合わせて作っているから、完成品在庫はゼロと言えます。ただし、工程内在庫はかなり多いと思います。とはいえ、材料在庫がゼロという現場は、実は私もまだ見たことがありません」。
 
 「在庫ゼロからは程遠いと思っていたのに、私の職場も在庫ゼロなんですか?」とSさんは驚いていました。
 
 しかし、Sさんが驚いていることに、じつは私も驚いてしまいました。なぜなら、自分ではきちんと説明していたつもりが、伝わっていなかったからです。
 
 確かに私は、現場ではモノを指さしながら大声で話すので、それが「完成品在庫」であっても、「工程内在庫」であっても、「材料在庫」であっても、すべてザイコと言ってしまっていたなあ…と反省したのです。
 
 結論から申し上げると、在庫の削減は、大きく3つに分けて考えると実現しやすいということです。
 
 「在庫ゼロ!」と言ってしまうと即座に「無理!」といった反応が返ってくることもありますが、そう思っている方はだいたい在庫を一つに考えてしまっているからです。
 
 まず、在庫には大きく分けて、①「完成品在庫」、②「工程内在庫」、③「材料在庫」の3つがあります。そのすべてをごっちゃにして考えないで、別々に取り扱うのです。
 
 もちろんその三者は相互につながっていますが、アプローチは違います。それと「在庫ゼロ」はゼロでなければみな同じでということでなく、ゼロに近付けるために日々努力しようというように考えていただきたいのです。
 
 私の在庫削減における改善順番は、最初に「工程内在庫」の改善に取り組みます。
 
 段取り替えの時間を短縮したり、運搬をこまめに行って、生産ロットサイズを小さくする、あるいは工程を統合して中間在庫の発生を減らすといった改善で、工程内のモノの停滞を減らして流れを良くします。
 
 その結果、出荷に合わせてモノが作れるようになってくるので、それを意識した生産計画に変更すると完成品在庫は大きく減ります。ジャストインタイム(JIT)になります。JIT生産は完成品在庫がゼロなのであって、工程内在庫や材料在庫はゼロではありません。
 
 カウンターの寿司の作り方はJIT生産だというように言われていますが、お客様の注文を受けてからご飯を炊き始めたり釣りに出かけたりということはありません。すべて用意されています。すなわち完成品をJITで作るので、完成品在庫がゼロだということです。
 
 そして「材料在庫」は最後に取り組みます。季節変動や為替による変動、あるいは供給側の問題など自分の管理ではどうにもならないことも多いので、まずは自分でできることから始めることにしています。
 
 今回は在庫に関する誤解が結構あるということで解説いたしました。「在庫は罪固」という言葉があります。やはり少ない方がいいのです。ゼロに向かって改善を続けましょう!
 
 
 
 

292.jpg

copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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