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第135回 妙見温泉(鹿児島県) 鄙び宿の泡付き湯と洗練宿の絶景露天

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

■鄙び宿と洗練宿、どちらが好き?

「鄙びた温泉が好きなんだよね?」と知り合いからよく聞かれる。たしかに、温泉の話をするときは、鄙びた温泉の話を好んでするし、この連載でも洗練されたキレイな温泉よりも、鄙びた渋い温泉を紹介することが多い。

 たしかに、鄙びた温泉が好きだ。大きくて豪華な湯船と、数人しか入れないような小ぢんまりとした湯船が並んでいたら、後者を選ぶだろう。
 
 しかし、それは決して「洗練されたキレイな温泉が嫌い」というわけではない。いい温泉が湧いていれば、必ずしも鄙びている必要はない。
 
 正直言うと、鄙びた温泉も洗練された温泉も両方好きなのだ。おふくろの味を食べたいときもあれば、高級なコース料理を食べたいときもあるように、気分によってどちらかの温泉を選べたら最高だと思っている。

 そんなわがままな欲望を満たしてくれる温泉地が鹿児島にある。天孫降臨の舞台である高千穂峰を擁する霧島連山と、霧島市街を結ぶ国道223号線沿いに湧く妙見(みょうけん)温泉。天降川の河畔に10軒ほどの宿が立ち並ぶ静かな温泉地である。

 鹿児島空港からアクセスしやすい好立地にもかかわらず、全国的にまだ知名度が高くないのは、近くに霧島温泉郷という人気温泉地があるからだろう。

■湯治客を癒やしてきた「杖いらずの湯」

 妙見温泉はテレビや雑誌で取り上げられるような高級旅館も並ぶ温泉地だが、もともとは鄙びた湯治場である。現在も素朴な湯治宿が健在だ。まさに気分によって、洗練された温泉宿と鄙びた温泉宿の両方を選ぶことができるのが妙見温泉の魅力である。

 鄙び湯の代表は、「湯治の宿 田島本館」。妙見温泉は江戸末期、宿の創業者が水田に湧く源泉を発見したのが始まりとされる。つまり妙見温泉の祖といえる老舗旅館である。

「湯治の宿」と謳うように昔ながらの素朴な建物と設備だが、温泉がすばらしい。「神経痛の湯」「きず湯」「胃腸湯」の3つの湯は温泉効果も抜群で、杖をついてやってきた湯治客が杖を忘れて歩いて帰ってしまうことから「杖いらずの湯」と呼ばれている。

 なかでも「きず湯」は超個性派の本物温泉だ。42~43℃くらいありそうな黄色をおびた湯に体を沈めると、体中に炭酸ガスが付着する。泉温が高温の場合、炭酸ガスは飛んでしまうことが多く、泡付きが見られるのはぬる湯と相場は決まっているが、熱い湯にもかかわらず泡付きが見られる。それほど炭酸ガスの濃度が高く、鮮度がすぐれているという証しだろう。

■川にせり出した絶景露天風呂

 一方、洗練された湯の代表は、女性に人気のある高級旅館「妙見石原荘」。フロントのスタッフの対応やオシャレな雰囲気の館内などは、少し緊張してしまうほど洗練されている。この手の洗練された旅館は、温泉の質は二の次にされるケースも多いが、妙見石原荘の温泉に対するこだわりは、昔ながらの湯治宿以上である。

 もちろん、加水・加温なしの源泉かけ流し。56℃という高温の温泉は、安易に水で薄めることなく、熱交換器というシステムを導入して適温に調整している。さらに、できるだけ新鮮な湯を提供するために、源泉の近くに湯船をつくるという徹底ぶり。普通は宿やお客の都合で湯船の場所が決まることが多いのだが、ここにも宿のこだわりが見てとれる。

 なかでも、雑誌などでよく紹介される天降川にせり出した「椋の木露天風呂」は感動的。メディアによく登場する名物風呂は、実際に訪ねてみると意外にたいしたことがないケースもあるが、椋の木露天風呂は想像以上の野趣あふれるロケーション。

 日差しが川面に反射し、宝石のようにキラキラと輝く。聞こえてくるのは川のせせらぎと小鳥のさえずりのみ。しかも、木々に囲まれた露天風呂にもかかわらず、木の葉ひとつ湯船に浮いていないのは、高級旅館ならではの心遣いだろう。やはり、鄙び湯と洗練された湯は、どちらも甲乙つけがたい。

 

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