中小企業のこれからの経理人材育成の課題
少子高齢化による人手不足が深刻化する中、多くの中小企業で人手不足が問題になっています。また、新卒も中途も採用が厳しい状況が続いており、せっかく雇用したとしてもなかなか定着してくれないのが現状です。
特に20代の離職率は高く、3人に1人が就職後3年以内に辞めてしまうと言われています。貴重な若手人材をいかに育成し、定着させるかは、企業経営を左右する重要な課題です。
経理部門においても、状況は同じです。
そこで今回は、経理の若手社員の育て方について、説明します。
経理社員の平均年齢は何歳ですか?
■ 経理の仕事道具を刷新する
経理部門に新入社員や若手社員を配属する前に、見直すべきなのが労働環境です。
特に、社歴の長い中小企業では、昔ながらの紙の伝票や帳簿書類で仕事していることが少なくありません。
経理社員のパソコンは何世代も前の旧式のタイプで、ソフトウェアも最新版に更新されていないことがよくあります。
新しい人材に働いてもらうには、仕事道具を新しくするのも重要です。
若い世代はデジタルツールを使いこなすことに長けています。逆に従来の紙中心の手作業は苦手ですので、いままでどおりの仕事のやり方を教えても、時間ばかりかかりミスも増えてしまいます。
クラウド会計ソフトや経費精算アプリなど、最新のデジタルツールを活用することで、若い経理社員が働きやすい環境を提供しましょう。
また、若い世代は定型的な経理業務を自動化することに抵抗がありません。会計システムの自動仕訳や事務処理のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの便利な機能の導入にも意欲的です。
新しい世代が、新しい道具で働くことにより、業務効率化が実現可能です。
経験の浅い経理社員が新しいデジタルツールを使いこなせるのか、不安に思う経営者や管理職も多いことでしょう。
しかし、これに関しても、AIが進化しているので心配要りません。最近の会計システムやクラウドサービスには、AIが組み込まれたチャットボット機能が用意されています。
使い方やわからないことは、AIチャットボットに質問すると教えてくれます。システム操作関係だけでなく、経理実務に関する質問に24時間対応してくれるので、若手経理社員の疑問を即座に解決できます。
これにより、自己解決能力が高まり、経理知識も養えます。
若手社員に竹槍で働かせていませんか?
■ 経理の研修教育を充実させる
道具を新しくしたら、次にやることは人材育成です。
中小企業では、これまで経理社員の研修教育にあまり力を入れてこなかった傾向があります。
人材教育のやり方は、OJT(On-the-Job Training)とOFF-JT(Off-the-Job Training)を組み合わせた研修プランが理想的です。
実務を通じたOJTは、新入社員が即戦力として活躍するための効果的な方法です。一方、外部研修やオンラインセミナーを利用したOFF-JTもスキルアップに欠かせません。
OJT(On-the-Job Training)とOFF-JT(Off-the-Job Training)を組み合わせることで、実践的なスキルと体系的な知識をバランス良く習得できます。
学びの選択肢を増やして、社員の特性に合わせて主体的に取り組めるように、OJTとOFF-JTのバランスを考えるといいでしょう。
経理の場合、会計制度の変更や税制改正が毎年のようにありますので、新しい知識を定期的にアップデートする必要があります。
中小企業の中には、自社の実務に直接影響のない知識は不要と考えている経営者がいますが、若い経理社員ほど新しい専門知識が習得できていないことに不安を抱いているものです。
自分が成長できる職場環境でないと感じることが、若い世代の離職率を高める要因の一つとなっています。
さすがに、新人や若手経理社員の教育をすべてAIに任せるわけにはいきませんので、研修教育は計画的に継続して取り組みたいところです。
経理社員は研修教育を年間何時間受講していますか?
■ 若い経理社員を孤立させない
社員の定着率を高めるために、多くの会社で取り組まれているのが、若手社員を孤立させないようにすることです。
代表的な取り組みであるメンター制度を経理にも導入します。
若手経理社員に対して経験豊富な先輩社員をメンターとしてつけ、仕事をしながら業務の流れを学ばせる制度です。
OJTとの違いは、メンターが若手社員の業務以外の悩みなどの相談にも乗ることで、不安を解消し、安心して成長できる環境を提供します。
もう一つが、定期的な1対1のミーティングの実施です。
経験の浅い若手経理社員ほど自分のスキルに自信がないため、定期的な評価とフィードバックを重視する傾向が強いと言われています。
経理社員に対しても定期的な1対1のミーティングを通じて、努力や成果を認め、今後の成長の方向性を具体的に伝えましょう。
また、経理社員のキャリアビジョンに寄り添い、会社の将来像とつながりを感じさせることで、モチベーションを高めることができます。
オープンなコミュニケーションの場を設けて、上司や先輩社員と気軽に相談できる環境を整えるのも重要です。
経理担当者も事業部門との会議や、金融機関などとの打ち合わせにも、早い段階から同席させます。
若手経理社員が部門をまたいだプロジェクトなどへも積極的にメンバーとして参加すれば、仕事の段取りを学びながら、会社組織と打ち解けやすくなります。
経理社員が笑顔で会話しているのを見たことがありますか?
■ 新しいやり方で若手経理社員を育成する
今回は、経理の若手社員の育て方について、説明しました。
ポイントは次の3つです。
・ 経理業務に新しいデジタルツールを導入する
・ OJTとOFF-JTを組み合わせて人材育成する
・ メンター制度や1対1ミーティングでフォローする
若い世代の育成には、従来の育成方法にとらわれず、彼らの特徴に合わせた柔軟なアプローチが求められます。
これからは中小企業の経理においても、デジタルツールやAIを積極的に活用し、OJTとOFF-JTを組み合わせ、メンター制度を推進することが重要になります。
若い世代の経理社員の能力を最大限に引き出し、企業の成長に貢献してもらいましょう。
経理を新しく活性化するために何から始めますか?