進化をキーワードに会社が企業風土をどのように経営理念とリンクさせれば顧客を創造できるか?を、現場士気を向上することで売り上げをアップさせている会社を事例と共に解説いたします。今回は第3回目です。
~企業理念が共通言語になれば、顧客は会社を信頼する!!~
プレミアムブランドを確立した自動車メーカーと言えば、それはメルセデス・ベンツ。
同社の起源とは1886年、ドイツ政府より世界で初めての原動付き三輪車に許可が下り、その1年後、200㎞少し離れた場所で世界初の四輪自動車が発明され、原動付き三輪車を完成させた技術者カール・ベンツと世界初の四輪自動車を完成させたゴットリープ・ダイムラーが合併したことが始まりでした。
メルセデス・ベンツの創業者二人の理念とは?
それは Das Beste oder nichts. (最良か無か)
この文言<Das Beste oder nichts. (最良か無か) =メルセデス・ベンツ本社の企業理念>は、後に同社の共通言語(下記)へと具体化。企業理念から生まれた共通言語は、社内で代々受け継がれメルセデス・ベンツのカルチャー(企業文化)を醸成していきました。
<メルセデス・ベンツの共通言語(社内の人間だけが意味を理解する言語)とは?>
車を発明した責任
メルセデス・ベンツは、車を発明した責任を、「安全」へのこだわりと定義しフラッグシップ(最高レベル)Sクラスの頭脳(前車追従クルーーズコントロールや車線維持運転支援機能、自動ブレーキなどを可能にした安全運転支援システム)を新型Cクラスにも搭載したのでした。
なぜなら、同社の企業理念(最良か無か)に沿えば「安全」とは、車種クラスに関係なく提供される、どの車種にも備わった一つの機能であったからなのです。
~現場ベクトルを一つにするには、目標=ビジョンが不可欠!!~
新型車種Aクラスで近未来の街をperfume(テクノポップアイドル)がカーチェイスするコンパクトSUV新型GLAがゲーム画面でマリオ(ゲームキャラクター)と走る
こんなCMがメルセデス・ベンツ日本により、メディアに流され、アニメやゲームキャラクターで表現した、運転する楽しさを表現したメルセデス・ベンツ日本のCMは、これまでのメルセデス・ベンツのブランドイメージを損なうことなく“若々しく、常に新しい試みを続けるブランド”とメディアでの評価を得ました。が、この成功には メルセデス・ベンツ日本社長上野金太郎氏のビジョンの存在があったのでした。
同社社長上野金太郎氏の掲げたビジョンとは?
<メルセデス・ベンツ日本のビジョン>
「メルセデス・ベンツ、最も愛されるブランドへ」
このビジョンは“メルセデス・ベンツだけの過分な安全へのこだわりは、特に新しい価値観を持つ顧客に対して共感を得られない“という事実を踏まえ、企業理念の共通言語「車を発明した責任」をマーケティングの側面から解釈(以下)することで、生まれました。
<共通言語「車を発明した責任」の解釈>
共通言語「車を発明した責任」は、“顧客がメルセデス・ベンツというブランドにロイヤリティー(忠誠心)を持つために必須の文言である”が、新しい価値観を持つ顧客に「車を発明した責任」を訴求しても、その価値への共感は得られない
メルセデス・ベンツ日本は、同社社長が共通言語「車を発明した責任」を(上記)慎重に解釈すると同時に、メルセデス・ベンツ日本のビジョンを掲げ(上述)現場が日々取り組む“安全へのこだわり”の延長線上には「メルセデス・ベンツ、最も愛されるブランドへ」という目標があると示すことで現場ベクトルを一つにしていったのです。
~ビジョンが共通言語をマーケティング(売れる仕組み)に変える!!~
企業理念(Das Beste oder nichts. (最良か無か))が具体化された共通言語(車を発明した責任)は、メルセデス・ベンツだけの過分ともいえる全ての車種に搭載される安全という機能となり、メルセデス・ベンツ日本は、8社もの自動車メーカーがひしめく8%しかない日本の輸入車マーケットで日本の富裕層を魅了し、その支持を獲得しました。
しかし、これまでの富裕層顧客だけでは、今後少子高齢化が進む日本でマーケット拡大は難しく会社が向かう目標を示すビジョンによるマーケティング(売れる仕組み)構築は不可欠になるでしょう。
その理由は、現場がビジョンによって会社がどの方向へ向かっているのか?会社が向かっている目標(「メルセデス・ベンツ、最も愛されるブランドへ」)を理解することで、現場は毎日の仕事(安全へのこだわり)に意味を見出すことが可能になるからなのです。
メルセデス・ベンツ日本ビジョンHP(日本語)