「男系男子継承」の妥当性こそ議論の焦点
皇室(天皇家)の家系継承の問題をありのままに捉えれば、皇位継承者を男系男子に限定することに妥当性があるのかに尽きる。その問題を議論せず先送りしたままで、血筋の遠い旧宮家から皇族に養子を迎えることで、皇位継承資格者を確保しようという今回の皇室典範改正に国民が違和感を覚える理由はそこにある。
敗戦後に施行された現在の日本国憲法の第二条は、「皇位は、世襲のもの」と規定し、継承については、「国会の議決した皇室典範の定めるところによる」と定めている。憲法は世襲を定めるだけで、男系男子規定は、皇室典範に委ねている。
今回の典範改正では、施行状況を踏まえて「必要があると認められるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられる」との附則が添えられている。今後の議論の余地を残している。
女性皇族残留が開くもの
保守派は、「男系男子による世襲」が万世一系という世界に誇る皇室のアイデンテティだとして頑なだが、国民の皇室に対して抱く尊崇の根源と、皇室の存在意義はそこにはないのではないか。さかのぼれば、弥生時代に列島各地に地方王権が芽生え、古墳時代にそれが集合、連合する形で統一王権が生まれて皇室へと繋がる。
古代においては、政治権力の中心として天皇家の役割も大きかったが、中世以降は次第に政治から距離を置き、国家統合の聖なる象徴として皇室の文化性が国民の中心に存在し現在に至る。稲作文化の象徴としてのお田植えや、養蚕の作業を皇室行事として伝統が積み重ねられてきた。国民はそこに統治者としてだけでなく、自分たちの文化を代表する身近な存在として皇室を見て、また接してきた。
皇位の継承についても、最近の研究では、6−8世紀の女帝の存在も、単なる政治的な混乱回避のための緊急避難ではなく、統治力を認めての積極的な擁立要素もあったと、認識が変わってきている。
現在の天皇には、血筋を継ぐ直系の愛子内親王がいる。万世一系にこだわるならば、世継ぎは存在することになる。さらに、近年、男子皇族の出生は激減したが、その分、女子の出生は多い。今回の典範改正で、女性皇族は婚姻後も皇族に残ることが容認されたことで、皇族数の確保は進んだ。
女性天皇、女系天皇を認めるならば、皇族内の皇位継承有資格者は大きく膨らむ。それを望むのか、あるいは保守派が主張するように忌避すべきなのか、選択権は国民にある。
もし、あなたに男子がいない場合の世襲問題として考えてみれば答えは出る。
(この項、今回で終わり)
〈関連条文〉
▼日本国憲法第一条
「天皇は、日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴であって、この地位は主権の存する日本国民の総意に基く」
▼同第二条
「皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」
▼皇室典範第一条
「皇位は、皇族に属する男系の男子が、これを継承する」
▼同第二条
「皇位は、左の順序により、皇族に、これを伝える。
一 皇長子
二 皇長孫
三 その他の皇長子の子孫
四 皇次子及びその子孫
五 その他の皇子孫
六 皇兄弟及びその子孫
七 皇伯叔父及びその子孫
(以下略)
(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com
※参考資料
『女系天皇 天皇系譜の源流』工藤隆著 朝日選書
『女帝の古代王権史 』義江明子著 ちくま新書
『皇室典範―明治の起草の攻防から現代の皇位継承問題まで』笠原英彦著 中公新書




















