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採用・法律

第25回 『高まる債権回収の実効性』

中小企業の新たな法律リスク

 個人、企業を顧客として卸売事業を行っている岡田社長。以前、売掛金が回収出来ず悔しい思いをしたことがありました。来年4月より、債権回収の手段が強化されたと聞いて賛多弁護士のところにやってきました。
 
* * *
 
岡田社長:売掛金が回収しやすくなるという制度ができたと新聞で読みました。 
 
賛多弁護士:本年(令和元年)5月に民事執行法等の改正が成立しました。来年(令和2年)4月施行予定です。
 
岡田社長:それはどのような内容ですか。
 
賛多弁護士:債権回収との関係では、債務者の財産を明らかにする制度の実効性を向上させる制度の改正がなされています。これまで、裁判で売掛金の請求の判決を取っても、債務者の財産の所在がわからない場合強制執行をすることができませんでした。
 
岡田社長:たとえ銀行口座に強制執行をしたとしても残高が数百円ということもありました。
 
賛多弁護士:そうですね。判決などがあっても、債務者の財産の所在がわからなければ強制執行をすることができません。これまでも財産開示手続という債務者に財産を明らかにさせる制度があったのですが、実効性が十分でなく、年間1000件前後とあまり使われない制度となっていました。
 
岡田社長:どう変わったのですか?
 
賛多弁護士:銀行や信用金庫、証券会社等の金融機関から,裁判所を通じて債務者の預貯金や上場株式等があるかどうかを照会する制度ができました。この制度を用いることができれば、これまで口座の所在がわからなくて強制執行ができなかったものができるようになると思われます。また全国の登記所に債務者が不動産を有しているかどうかを照会する制度も設けられました。
 
岡田社長:つまり、財産が隠しにくくなるということですね。新聞では、個人の勤務先も照会できるようになると書いてありましたが。
 
賛多弁護士:はい。個人の勤務先についてデータを持っている自治体・日本年金機構等に問い合わせる制度もできました。ただし、これについては、養育費の債権等、一部の債権の場合にしか用いることができませんので、売掛金債権の場合は当てはまりません。
 
佐藤社長:なるほど。
 
賛多弁護士:実際に売掛金の回収に手間取りそうな時には、すぐご相談ください。
 
岡田社長:ありがとうございます。この制度により、債権回収の実行性が上がることが期待されますね。
 
* * *
 
 令和元年5月10日に民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律が成立し、民事執行法が改正されました。改正は、ここで取り上げた債務者財産の開示制度の実効性の向上以外にも、不動産競売における暴力団員の買受け防止の方策、国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化 国際的な子の返還の強制執行に関する規律の見直し、民事執行法のその他の見直し(差押禁止債権をめぐる規律の見直し等)と多岐にわたっています。その中から企業法務の実務に影響が大きい部分を解説しました。
 
 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 竹内 亮

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