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人間学・古典

第42講 「言志四録その42」
少にして学べば壮にして為すこと有り。壮にして学べば老いて衰えず。 老いて学べば死して朽ちず。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
青少年時代に学べば、壮年になって為すことがある。
壮年時代に学べば、老年に なって気力が衰えない。
老年時代に学べば、死んでもその人望は朽ちない。


【解説】
掲句が言志四録1133条の中で最もメジャーな1句でしょう。
実際、言志四録が世間の注目を浴びることになったのは、
平成13年春に当時の小泉純一郎首相が衆議院での答弁に、この句を引用したことに始まります。


別講でも紹介しましたが、『言志四録』は、儒者:佐藤一斎先生の著書で全四巻1133条からなります。

最初の言志録は42歳から11年間で書かれたものであり、言志後録は57歳からの10年間、
言志晩録は67歳からの12年間、言志耋録は80歳からの2年間で執筆されました。
最後の言志耋録は340条ですから、全条の3割超を最晩年の2年間で書き上げたのですから、
そのパワーは凄まじいものがあります。

掲句の教えを80歳になってからも実践された一斎先生ですから、青壮年期の学びの量が尋常ではなかったと想像します。
死後150年たった現代にも多くの ファンを惹きつけているその思想の魅力は、人間学を学ぶ者にとっては手本中の手本
にしなければなりませんが、著書の教えと実践が見事に一致しているところ が、一斎先生の何とも素晴しいところです。


掲句は青年・壮年・老年のそれぞれの時代の学びを疎かにするなという教えです。
誰もが命を授かり少・青・壮・老を経て寿命が尽きます。
これが一般的な80年の一生ですが、結果としてそうなる可能性が多いかも
しれませんが、その人生途上に確実に天寿を全うできる保証はどこにもありません。
同年代の人の葬儀に出席しても、不思議と自分の順番だけはまだ先だろうと思うのが常です。
実はこの逃げの気持ちがある間は、残された日々の大切さが皮膚感覚で分かっていないのだろうと思います。
「臨終を想えば緩みなし」という句は、老いを自覚し始めた60歳になった直後の句ですが、自分なりには秀作の句です。
若い頃は誰でも余命の日々の大切さを皮膚感覚で実感できないものですが、できないからこそ掲句のような
素晴しい教えを素直に受け入れて、人生の早い段階から意識して「少・青・壮・老の学び」 が必要となります。



【一斎先生没後150年に関するお知らせ】
私が主宰する『人間学読書会』で言志四録を最初に取上げてから、20年が経過します。
そして本年(平成21年)の10月19日で一斎先生没後150年になります。

一斎先生は岐阜県美濃地方の岩村藩(現在の恵那市岩村町)の出身ですが、この地元では
佐藤一斎顕彰会・いわむら一斎会など、今だに一斎先生の教えを学ぼうとする勉強会が盛んに開催されております。

私も何度か講師としてお邪魔しました。
わずか二万石ほどの小さな旧城下町ですが、大変趣がある処です。
一斎先生のほかにも明治の女子教育に多大な貢献をした下田歌子先生もこの地のご出身ですから、
我が国の近代思想史に大きな影響を与えた由緒ある地域の一つです。

その精神は現在でも未だに健在です。
明智鉄道の岩村駅に降りますと、城跡や藩校跡の資料館に通じる2kmほどの町並みが続きます。
この通りは明治時代の街並みを思い起こさせる風情があり、緩やかな坂道ですから散歩道としても最適です。

そして街の通りに面した家々の軒先ごとに、縦1メートルの木板に書かれた「言志四録の名言」が掲げられています。
全部で200句とのことです。
佐藤一斎顕 彰会の会長鈴木隆一先生以下の会員の皆さんのご努力の成果と聞いておりますが、
これが町並みにマッチし見事に「言志四録の故郷の趣」を漂わせております。
春や秋の訪問予定地としては、かなりのハイレベルのディストネーションです。

また本年21年の晩秋から来春にかけて、地元岩村の資料館の貴重な品々を、
岐阜県立博物館(関市)に移して没後150年の記念行事として展示されます。
私もこけら落としに無料講演会をいたしますので、ぜひお立ち寄りください。

〔岐阜県立博物館:佐藤一斎に関する資料展 ⇒平成21年11月29日(日)~平成22年1月17日(日)〕
〔無料講演会:「120分で聞く言志四録」⇒講師:杉山巌海 平成21年11月29日(日)13:30~〕
 杉山巌海

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