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万物流転する世を生き抜く(2) ローマ・カルタゴ戦争

指導者たる者かくあるべし

 紀元前三世紀の地中海世界は、イタリアのローマと北アフリカを拠点とするカルタゴが覇権を争っていた。
 
  現代に暮らすわれわれは、やがてカルタゴは歴史の舞台から姿を消し、ローマがヨーロッパの大半を勢力圏におさめ繁栄に向かうことを知っている。
 
  勝者と敗者を分けたものは何か。勝敗は偶然なのか。カルタゴのハンニバル、ローマのスキピオという二人の若き英雄の軌跡をたどってみる。
 
  海洋民族のフェニキア人を祖とするカルタゴは巧みな航海術を駆使して地中海沿岸の諸都市との交易で栄えた。
 
  対するローマは農業中心の一都市国家に過ぎなかったが、次第にその外交・軍事力によって周囲に版図を広げはじめていた。
 
  そして両者は、長靴の形をしたイタリア半島のつま先に蹴られた小石のようなシチリア島で利害が激突する。
 
  現在のチュニジアにあったカルタゴ本国は、シチリアを交易拠点としていたが、勢力を南イタリアまで拡張してきたローマは、この島へ軍を進めた。
 
  23年に及んだ海と陸での戦いの末、カルタゴは放逐され、西地中海の制海権はローマが握ることとなった(第一次ポエニ戦争、紀元前264〜241年)。
 
  海を越えての戦いならば、強力な海軍と輸送船団を有するカルタゴに分があった。無敵の重装歩兵を押し立てての陸戦の国で、海軍には縁のないローマ人は、戦いの初期に捕獲した巨大なカルタゴ戦艦を解体してそっくりな船を建造し、海戦に勝利するまでになった。
 
  必要とあれば技術でも文化でも、果ては神までも、たとえ敵からであれ異民族から貪欲に移入する柔軟さがローマ人にはあった。
 
  この戦いに敗れたカルタゴの猛将ハミルカルは本国を離れ、鉱山利権確保のためイベリア半島(スペイン)に渡る。
 
  同行を願い出た七歳の息子ハンニバルをハミルカルは、バアル神の前で「一生、ローマを敵とする」と誓わせたという。
 
  スペインで幼少期を過ごしたハンニバルは、カルタゴから海の盟主の地位を奪ったローマが、ガリア(フランス)南部に進出し、やがてスペイン沿岸に手を伸ばすに違いないとの危機感を感じるようになっていた。
 
 「祖国の国益を守るために、敵の本拠地、イタリアへ攻め入ろう」
 
  とてつもない構想がこの若者にもたげはじめていた。  (この項、次週へ続く)
 
 
 ※参考文献
 
  『ハンニバル 地中海世界の覇権をかけて』長谷川博隆著 講談社学術文庫
  『ローマ・カルタゴ百年戦争』塚原富衛著 学研M文庫
  『ローマ人の物語Ⅱ ハンニバル戦記』塩野七生著 新潮社
 
 
 
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  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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