今年5月1日に開幕した上海万博は、7月末時点で来場者人数が3500万人を記録し、一日平均は38万人にのぼった。
そのうち、7月の一日平均は44万人に達した。8月からは学校が一斉に夏休みに入り、9月、10月は旅行シーズンとなり、上海万博はピークを迎える。閉幕の10月末までには7000万人突破は確実な状態となっている。
この記録は1970年の大阪万博(6400万人)を大幅に上回り、史上最多となる。上海万博の経済効果が大きい。インフラ投資のほか、旅行会社、鉄道・航空会社、ホテル業、小売業、サービス業などの分野は万博の恩恵を大きく受ける。
全国の経済成長率も0.5ポイントアップと言われる。万博効果もあって、今年1-6月期のGDP成長率は11.1%にのぼり、通年では10%台をキープさ れる見通しとなる。上海万博終了まで、中国経済成長が挫折するシナリオはまずないと見ていい。
問題は上海万博終了後、中国経済は成長持続するかそれとも失速するかである。個人的な見方だが、上海万博終了後は要注意の時期に入る。中国経済が多くの不安材料を抱えているからである。
当面の懸念材料としては、国内リスクと国際リスクという二大リスク要素が挙げられる。国内リスク要素は住宅バブルの懸念という。中国主要70都市の住宅価 格上昇率は今年2月10.7%、3月11.7%、4月12.8%、5月12.4%、6月11.4%と、5カ月連続で10%を超え、明らかにバブル状態と なっている。
こうした住宅バブルの強まりに対し、中国政府はもの凄く警戒している。周知の通り、米国発の金融危機のきっかけは正に住宅バブルの崩壊である。もし、中国の住宅バブルが崩壊すれば、金融不安が起きかねず、高度成長も挫折する恐れがある。
この最悪のシナリオを回避するために、中国政府はいま必死になって、住宅ローンの規制を強化したり、商業銀行が中央銀行に預かる預金準備率を引き上げたりなど金融引き締め措置を取っており、住宅バブルの抑制に注力している。
国際リスク要素とは、ギリシャ債務危機をきっかけとするユーロ危機の拡散を指す。ユーロ危機はまだ終息せず、EU実体経済への波及が懸念される。EUは地域別で中国の最大の輸出先であり、EU経済が挫折すれば中国の輸出も大きな打撃を受ける。
要するに、上海万博後の中国経済が成長持続するかそれとも失速するかは、政府の住宅バブル抑制対策が奏功するかどうか、またユーロ危機が収束するかどうか によって大きく左右される。国内の住宅バブルと国際のユーロ危機の行方を注視深く見守る必要がある。
さらに、中長期に見れば、中国経済は格差問題と役人の腐敗問題という二大「時限爆弾」を抱えている。政府が下手に対応した場合、「時限爆弾」は爆発する。これについては、次回に詳しく説明する。