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- 強い会社を築く ビジネス・クリニック
- 第56話 「お客様に奉仕する、企業に奉仕する」
私心、私事を第一にするのではなく、働く職場についたならば企業の考え、お客様に奉仕することを第一に考えて行動させる社風づくり、こういうことを社長として社員に理解させることが出来るかどうか、それが「稼ぐ組織」の第一条件であると考えます。
そして、それはまず社長自身が、滅私奉公で働いているかどうかで決まるのではないでしょうか。
社長が私利私欲に凝り固まって、社長個人のご都合が、市場(お客様)にも、会社にもすべてに最優先するようでは、お話にならない。会社の利益は全部自分の利益だと考え、そのおこぼれを社員に渡してやるという考えでは、社員が滅私奉公するはずもないし、組織として利益を稼ぎ出す力も生まれない。あまりに当たり前のことです。
私がこう言うと、ほとんどの社長が「私はそれほどお粗末じゃない」と仰ることでしょう。しかしこれまで多くの経営者にお会いしてきて、「我が社は顧客や市場の為に何が出来るのか、社長業に徹底的にのめり込むことにより立派に自己実現を果たしている」つまり「自分の会社に滅私奉公している」と自信を持って言い切れる社長がいったい何人いるのか疑問に思っているのです。
ご自身の事業経営に人生をかけて悔いを残さないためには、社長として「何の為にこの商売・事業をするのか」そして「何の為に金儲けをするのか」ということを、まず念頭においておかなければ、社長として滅私奉公など出来ないのです。
同時にそれは経営理念でもある。理念なき経営では従業員はついてきません。
利益を出す前に、理念を確立する。いつの時代も、社員の鼻先にニンジンをぶら下げて、金銭だけの動機づけでやっている会社があるが、そんな会社が10年持ったためしがない。
理念がないから金儲けのためには手段を選ばずになってしまい、はじめは伸びるが、必ずどこかでつまずいて長い繁栄が続かないものです。
アメリカの経営はドライだとか何だとか言われるが、優秀な経営者はまったく違います。宗教観に根ざした使命感とでもいうか、それを経営理念としている人が多い。高度な顧客満足サービスで有名な百貨店のノードストロームに社長の例を出すまでもなく、毎週、教会に行く社長が当たり前だ。
勿論、毎週教会に行くから敬虔な宗教家だと言うつもりはありません。しかし日本は勿論宗教観が違うから一概に言えないが、毎週神社やお寺にお参りに行く社長が何人いるでしょうか。年に数回のご先祖様への墓参りだって、この頃は怪しいものです。
社長にないものを、社員に求めてはいけないし、得られるはずもないのです。
教会に行く人は懺悔に行くのです。神社に行く人は願い事ばかりで欲深いのです。神社のお参りは感謝を表しに行くことが正しいのです。
社長の、使命感に裏づけられた経営理念と滅私奉公の労働価値観こそ「稼ぐ組織」づくりの基礎として、心していただきたいものです。