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人間学・古典

第43回『二十四節季』の話

令和時代の「社長の人間力の磨き方」

 日本は「四季」のはっきりした気候の良い国だとの定評がある一方、世界的な異常気象の影響による猛暑や暖冬などで、徐々に四季の変わり目が曖昧になって久しい。昨年の夏も記録的な猛暑に悩まされたのは記憶に新しいところだ。

 

  それでも、春には数々の花が咲き、秋は山を色取り取りの紅葉が彩り、季節ごとに旬の味を届けてくれる食べ物も多い。常夏の島や厳寒の大陸などを除けば、その移ろいの境目は曖昧でも季節はある。しかし、日本のように毎年の暦の中でそれぞれの季節を更に細かく分けている国はそう多くはないだろう。

 

 最近は、今回取り上げる「二十四節季」や、それをさらに細分化した「七十二候」などに関する書籍も増えており、多くの人々がその言葉や意味を知ることになったようだ。言うまでもなく、日本の「暦」は農事を元にした暦が中心になっており、ここで取り上げる「二十四節季」も農事暦の立場を持つ言葉が多い。そのため、毎年一日か二日ではあるがそれぞれの日付が動く。これも先人の知恵のなせる技で、コンピュータやインターネットはなくとも、五感や経験則を大切にした生活から生み出されたものだ。

 

 ちなみに、2023年の「二十四節季」の最初は、1月6日の「小寒」から始まる。俗に「寒の入り」とも言われ、これから寒くなるという注意だ。2週間後の「大寒」は寒さが最も厳しい時期で「寒の底」とも言う。月が変われば季節も変わり、2月4日「立春」を迎える。2月19日の「雨水(うすい)」は、空から降る雪が雨に変わる、との意味だ。そして半月後の3月6日「啓蟄(けいちつ)」には穴に身を潜めていた虫が顔を出し、春も本番といったところ。3月21日の「春分」は昼夜の長さがほぼ等しくなる日で、この日を挟んだ一週間は「彼岸」となる。ただし、「彼岸」は仏教行事であり、二十四節季には入らない。「秋分」も同様で、区別のために「春彼岸」「秋彼岸」と呼ぶこともある。俗説だが、春には牡丹が咲くので「あんころ餅」を「ぼた餅」と呼び、秋は萩の季節なので「おはぎ」と呼ぶとか。

 

 年度替わり、入学シーズンでもある 4月5日の「清明(せいめい)」は、世の中の物がすべて清々しく明るく見える春のイメージか。半月後の4月20日の「穀雨(こくう)」は、田畑の準備も終わり、春の雨が降り出す頃だ。そろそろ夏の気配を感じるのが5月6日の「立夏」で、21日の「小満(しょうまん)」には多くの物の成長が著しくなる。

 

 6月に入ると6日の「芒種(ぼうしゅ)」はとげのある穀類の種まきの時期で、21日の「夏至」は一年で最も昼間が長い日になる。2023年は7月7日の「七夕」と「小暑(しょうしょ)」が重なり、本格的な夏、到来である。23日の「大暑(たいしょ)」の頃は夏の盛りで、この辺りには「土用の丑の日」があり、スタミナを付けたいところだが、近年はなかなか財布が許さない。

 

 現在の実状にはそぐわないが、暦では8月8日の「立秋」で早くも秋の予感。23日の「処暑(しょしょ)」には、さすがの残暑も勢いを失い始めるというが、「暑さ寒さも彼岸まで」の俚諺もある。しかし、二十四節季では9月8日の「白露(はくろ)」では土地も冷え、そろそろ梅雨が降り始めるとも言う。そして、23日の「秋分」には「春分」と同様に昼夜の長さがほぼ等しくなり、以降はだんだん夜が長くなってゆく。

 

 秋。10月8日の「寒露(かんろ)」ではそろそろ露が凍りそうになるとのことだが、現代ではクール・ビズがようやく終わり、まだ暑さの名残を感じる頃だ。しかし、古来からの農事暦では10月24日の「霜降(そうこう)」では露が霜に変わり始めると言われている。今なら、最高の行楽シーズン辺りである。

 

 冬。11月8日の「立冬」ではそろそろ冬の気配が感じられ、22日の「小雪(しょうせつ)」ではちらほらと雪が舞い始める。南北に長い日本ではあるが、さすがに近年、10月に初雪の例はあまりないだろう。

 

 年も暮れ。12月7日の「大雪(たいせつ)」には、字の如く盛んに雪が降り始める。22日の「冬至」は夏至の逆で、昼間が最も短い一日。「ゆず湯」で暖まり、「かぼちゃ」を食べる習慣が今も残る。実際を言えば、かぼちゃは夏が最も美味しい夏野菜だが、冬場に不足しがちなビタミンの供給源としての意味が大きいのだろう。ちなみに、古くは「南瓜」(なんきん)、「唐茄子」と言ったように、外来の野菜である。

 

 駆け足で「二十四節季」をたどってみたが、現在との暦との差がかなり大きいものもある。ただ、大事なのは農事暦の意味に加え、昔の日本人は四季折々の風情を大切にし、自然と向き合って生活をしてきたことだ。この感覚は失いたくない。多少日にちがずれても、たまには手紙の中で「暦では霜降と申しますが暖かな秋で」とか「間もなく寒の底を迎えます」などの一言を加えれば、さり気ないインテリジェンスも漂うのではなかろうか。ご先祖様には「手紙で使うために考えたのではない」とお叱りを蒙りそうだが、今の日本では先人の知恵を活かし伝える方法が他には思い付かないほど、気候も風土も変わってしまったのだ。過去への謝意といささかのお詫びも込めて、こうした表現もたまには悪くはないだろう。

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