スーパーマーケットの経営をしている伊藤社長は、社内の労働問題について相談するため、顧問弁護士である賛多弁護士の事務所を訪問しました。相談後、伊藤社長は、賛多弁護士に、ため息混りに、昨今は従業員の確保が難しいと愚痴をこぼしました。そこから、高年齢労働者の話になり、本年(2026年)4月1日に施行された高年齢労働者についての労働安全衛生法等の改正・施行についての話になりました。
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賛多弁護士:最近はかなり高齢の方も、従業員として雇用の対象に入っているのではないですか。
伊藤社長:そのとおりです。元気な高齢者もたくさんいらっしゃるので、応募していただければ、採用できる方はたくさんいらっしゃると思います。
賛多弁護士:やはり、労働者として高齢者のニーズはありますよね。ところで、高齢者といえば、本年(2026年)4月1日に、労働安全衛生法等の改正法が施行されたのはご存じですか。
伊藤社長: 高齢者についての改正なのですか。
賛多弁護士:そうです。多様な人材が安全で、安心して働き続けられる職場環境の整備を推進するという改正の一環で、高年齢の労働者の労働災害防止を推進するための改正もなされました(注1)。
伊藤社長:会社として何か対応をする必要があるのでしょうか。
賛多弁護士:高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理などの必要な措置を講ずることが事業者の努力義務となりました。
伊藤社長:努力義務ですか。どのような努力義務が課せられたのですか。
賛多弁護士:事業者がすることとしては、①安全衛生管理体制を確立すること、②職場環境の改善をすること、③高年齢者の健康や体力の状況の把握すること、④高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応をすること、⑤安全衛生教育をすることが挙げられます。
伊藤社長:そうなんですね。結構いろいろありますね。もう少し具体的に教えていただけますか。
賛多弁護士:労働安全衛生法において、厚生労働大臣は、事業者が講ずべき措置に関して、適切かつ有効な実施を図るための指針を公表することが規定されましたが、本年(2026年)2月10日に、その指針(注2)(注3)が公示されました。
伊藤社長:それを見ればよいわけですね。
賛多弁護士:はい。例えば、①安全衛生管理体制を確立することというのは、経営トップによる方針表明及び体制整備をすることや、安全衛生委員会等における調査審議するなど労使で話し合うこと、また、高年齢者の労働災害防止のためのリスクアセスメントを実施することが挙げられています。
伊藤社長:なるほど。他はどうですか。
賛多弁護士:②職場環境の改善をすることとしては、高年齢者が安全に働き続けられるよう、施設、設備、装置等の改善を行うことや、筋力、バランス能力、敏捷性、全身持久力、感覚機能、認知機能の低下等を考 慮して作業内容等の見直しを行い、実施することが記載されています。
伊藤社長:確かに、高齢者に合わせた環境を整備することは必要ですね。
賛多弁護士:③高年齢者の健康や体力の状況の把握することというのは、健康診断を確実に実施することや体力チェックを継続的に実施することなどが挙げられています。
伊藤社長:健康診断は実施していますが、今後は、体力チェックも継続的にするよう対応していくことが大切ということですね。
賛多弁護士:はい。また、④高年齢者の健康や体力の状況に応じた対応をすることというのは、個々の高年齢者の健康や体力の状況を踏まえて必要に応じ就業上の措置を講じることや、高年齢者の状況に応じた業務の提供、さらには、集団及び個々の高年齢者を対象として、身体機能等の維持向上 のための取組を実施することなどが挙げられています。
伊藤社長:あと1つありましたね。
賛多弁護士:⑤安全衛生教育をすることですね。これは、高年齢者に対する安全衛生教育等と、管理監督者等に対する高年齢者の特性と高年齢者に対する安全衛生対策についての教育を行うというものです。
伊藤社長:確かに、高齢者の労働災害防止には、高齢者自身が理解するだけではなく、周りの高年齢者以外の従業員の理解は必須ですね。
賛多弁護士:おっしゃるとおりです。
伊藤社長:帰ったら、総務部の者に話をしたいと思います。
賛多弁護士:そうそう、高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や、専門家による指導を受けるための経費の一部を補助する制度もあるようです(注4)。
是非、積極的に取り組まれて、御社はよい人材を安定して確保でき、従業員の方も安心して働けるということになるとよいですね。
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高年齢労働者が増加する中、高年齢労働者は他の世代に比べ、労働災害の発生率が高いというのが現状であり、今後、労働者の高齢化に伴い、高年齢労働者の労働災害の発生率が増加することが予想されます。そのような中で、上記労働安全衛生法等の改正、高年齢労働者の労働災害防止のための指針の公示は、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理等、高年齢労働者の労働災害の防止を図るために設けられたものです。現在、努力義務ではありますが、できるところから積極的に対策をとって、それをよりよい職場にする施策の1つとされるとよいと思料いたします。
(注1)厚生労働省 「労働安全衛生法及び作業環境測定法 改正の主なポイントについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001513749.pdf
(注2)厚生労働省 「高年齢者の労働災害防止のための指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001654284.pdf
(注3)厚生労働省 「高年齢者の労働災害防止のための指針 概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001706312.pdf
(注4)厚生労働書 「エイジフレンドリー補助金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09940.html
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 堀 招子





















