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第154回「料理サイトを巧みに活用し、マネタイジングに成功した企業」エブリー

深読み企業分析

インターネット上には様々な分野において、無数の評価サイトや紹介サイトが存在する。例えば、飲食店を評価するサイトならば食べログ、一休、ホットペッパーグルメ、オズモールなどなどいくらでも出てくる。また、料理サイトであれば、主婦が自慢の料理を投降するようなサイトや料理人がレシピを公開するサイトにCockpad、クラシル、デリッシュキッチンなどがある。

これらのサイトは生活に密着しており、常に一般消費者にとっては便利なサイトでもあり、視聴頻度も高いものである。そのため、ネットビジネスにとっての入口である閲覧数は比較的稼ぎやすい。しかし、そのモデルのマネタイジングには各社苦労しており、さらには高収益モデルへと昇華させる企業は一握りにとどまっている。

一つには、飲食店評価サイトにしても料理の紹介サイトにしても参入が比較的簡単で、ライバルが次々と現れることがある。また、その仕組みをそのままマネタイズしようとしても実はフィットしないことも多い。例えば、飲食店評価サイトでマネタイジングしようとして、飲食店にサイトへの広告掲載を持ちかける。しかし、消費者から見れば、飲食店の選択手段として評価を見るためにサイトを訪れるわけで、広告より消費者の評価を重視することになり、アクセスが多かったとしても広告掲載のメリットは小さなものにとどまる。

料理サイトのマネタイジングの一つとしては、企業が自社製品を使ったメニューを掲載することがあるが、実際、どれだけの効果があるのかの検証は簡単ではなく、思い切って広告費を投入できるものでもない。

その結果、当初は脚光を浴びたサイトもその後業績が伸び悩んで、上場にこぎつけた企業の株価にも低迷する企業が目立つ。料理サイトの草分けとして上場し脚光を浴びたクックパッド(2193)であるがレシピサイトのマネタイズがうまく行かずに収益は低迷し、株価も10年ほど前には2,880円まであったが、今や127円である。グルメサイト運営でもぐるなび(2440)は123円、Retty(7356)が114円とそれぞれ低位株に甘んじている。

もちろん、巧みにマネタイジングに成功した企業もある。そんな企業の1社につい最近上場したばかりのエブリー(607A)という会社がある。デリッシュキッチンという料理レシピ紹介サイトを運営する会社である。主要事業を端的に表現すれば、自社で運営する料理サイト、様々なSNS、アプリなどで集めた個人の食生活のデータを用いて、食品メーカーに効果的な広告手段を提案し、自ら小売業店頭に設置したデジタルサイネージや自社で運営する様々なサイトで流す広告を食品メーカーに販売する企業である。

直近5年間の年平均売上高成長率は19.2%、営業利益は5期前の1,364百万円の赤字が、2026年6月期に324百万円の黒字へと転換した。売上が大きく伸び、利益が急拡大している背景は、同社の広告が極めて効果的で、顧客が投じた広告費以上の効果を顧客が実感できるため、その顧客がどんどん広告費を増やすことで、同社は売上の伸びの割りに経費が増えずに高い利益成長が遂げられるためである。

同社の最大の強みは、まずは、消費者の食生活のデータの収集力である。食生活に関するビッグデータのデータ量では国内でもトップクラスと言えよう。

同社が運営する料理動画サイトの「デリッシュキッチン」は、多くの料理動画サイトが個人の投稿や食品メーカーの自社商品を使った調理動画で成り立っているのに対して、同社ではプロの料理人がコンテンツ作成を担っており、そのコンテンツが57,000本もあって、レシピ評価でも5.0の満点に対して、平均4.4と高評価を獲得している。しかも、AI時代を迎えて、多くのサイトが視聴者流入数の減少問題を抱えているが、このデリッシュキッチンはクォリティが高いため、AIフレンドリーであり、引用数、流入数とも増加しているということ。

また、同社が運営するアプリや様々なウェブのSNS (Instagram、Facebook、YouTube、X、LINE News、TikTok、Pinterestなど)のフォロワー数も合計で1,300万に達する。それらの合計のMAU(Monthly Active Users の略:日本語では月間アクティブユーザー数:1か月間に1回以上利用した重複のないユーザー数)は3,100万と国内最大規模となっている。

さらに、同社では食品小売業の店頭におけるデジタルサイネージ設置台数が11,300台となっており、リテールメディアとしては国内最大規模を構築している。このデジタルサイネージは購買者に最も近い接点として広告主の関心自体は高いものである。明らかにテレビやネットよりも購買行動に結び付きやすい可能性のあるメディアと言えよう。

そして、同社ではそのデジタルサイネージを設置している店舗からID-POSデータの提供を受けることで、そのデジタルサイネージに広告を出稿した商品の売れ行きが、広告の掲載前後でどう変化したかを検証することができる。つまり、他のメディア以上に、広告効果を直接的に検証できる状況を作り上げているということである。

これらのツールは消費者情報の収集ツールであると同時に、メーカーに販売する広告を掲載するメディアの役割も果たしている。つまり、トータルのネット上の集客力を示す3,100万のMAU、デジタルサイネージの保有台数11,300台の意味するものは、販売した広告の露出の頻度を示すものとなる。

このように最も購買行動に結び付きやすい小売業店頭のデジタルサイネージがあり、顧客が広告の費用対効果を感じやすく、しかも極めて高い効果があるため、顧客が広告費を次々投入する形を作り上げたのがエブリーである。

有賀の眼

同社のビジネスの特徴は、少数のロイヤル顧客からの広告売上で成長するというものである。同社ではロイヤル顧客を売上高1,000万円以上の顧客としているが、前期の売上高に占めるロイヤル顧客の売上ウエイトは81.1%となっている。2期前のロイヤル顧客の売上ウエイトは69.3%であり、2期間でロイヤル顧客の売上ウエイトが11.8%ptの上昇となった。

前期の全顧客数は835社であるが、そのうちロイヤル顧客の客数はわずかに80社である。顧客数で見れば12.6%の顧客で80%以上の売上を計上していることになる。ただし、ロイヤル顧客数自体も増えており、前々期の62社が前期には80社となった。そのように新規にロイヤル顧客が増えたにもかかわらず、顧客単価は大幅に上昇している。つまり、まさにどの顧客も毎期、毎期、売上高を増やしていることを意味しているということである。これが同社の最大の強みと言えるのではないかと思われる。

現時点における一顧客当たり売上高はわずか4,000万円強である。顧客は大手食品メーカーであり、食品メーカーは国内においても広告費への投入金額は極めて高水準な業種である。大手の広告費は100億円ほどあっても全くおかしくはない。同社では個々の企業の売上を増やすことに注力しており、目標としての顧客単価は7億円としている。食品大手の広告費の水準を考えれば十分納得に行く水準と言えよう。

ただし、これを80社にあてはめると、560億円となるが、それも夢ではなかろう。電通調べによれば、2025年の食品関連広告費は2兆8,012億円であり、560億円と言ってもわずか2%に過ぎない。そのような見方をすれば、同社の高成長は当面継続するのではないかと考えられるのである。

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