高い給料さえ出せば優れた人材がいつでも採用できるのでしょうか。それは大変難しい話です。企業にとって人材とは時間をかけて我慢強く育てた逸材のことであり、実力に相応しい活躍で期待に答えてくれる社員のことだからです。
多くの企業がよりよい人材を育て、ぞんぶんに活躍してもらうために毎年4月に給与改定を実施します。その内訳は①給与規程に定められた実力昇給と②その年の企業業績や物価動向等を考慮し、妥当な金額を給与に上乗せするベースアップであり、二つを併せて「賃上げ」と表現されます。しかし定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)では役割が異なります。
「定昇であれベアであれ、定期的な給与改定など考えられない。春闘とか賃上げなんて大企業の話だ」。真顔でおっしゃる社長もおられました。本当にそれで良いのでしようか。
確かに物価は安定していますから、ベースアップについては据え置きでも良いでしょう。しかし、「もっと良い仕事がしたい」と前向きに考えている社員の実力昇給まで止めて、モチベーションを維持できるのでしょうか。
会社が昇給評語に相応しい実力昇給を放棄すると言うことは、給料分という言葉どおり、クビにならずにすむ程度の成果しか社員に期待しないと言う事です。
大企業であれ、中小企業であれ、会社の将来のために優れた人材を大切に育てたいとのぞむのであれば、実力昇給だけは実施しなければなりません。
なぜなら、この会社が人生を託すに値する企業かどうか、あるいは自分は必要な人材と評価されているか、年ごとの昇給は重要なバロメーターのひとつであり、仕事のできる社員ほど厳しい目で会社の将来を評価しているのですから。