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第199話 中国車、先進国への輸出も急増

中国経済の最新動向

 中国の自動車輸出が連年急増している。2023年日本を追い越した以降、3年連続で世界一の座を保っている。新興国・途上国のみならず、英国やベルギー、オーストラリアなど先進国への輸出も急速に伸びている。中国車には一体どんな変化があったのか?本稿は最新情報を駆使し、その深層的な理由を掘り起こしていく。

 

●輸出台数が700万台突破 外国勢の凋落が鮮明へ

 中国汽車工業協会の発表によれば、2025年中国の新車販売が前年比9.4%増の3440万台に達し、3年連続で3000万台の大台を突破した。うち、電気自動車(EV)など新エネルギー車(NEV)が前年比28.2%増の1649万台にのぼり、全体の48%を占める。

 メーカー別の販売台数を見れば、BYDが460万台で全国一位、吉利が359.8万台で3位、国産メーカーの健闘ぶりが目立つ。特にBYDの販売台数はフォードグループ、ホンダ及び日産を上回り、世界6位へ躍進を果たした。特に同社の世界でのEV販売台数が前年比27.86%増の225万6714台となり、米国EV大手テスラの163万6129台(前年比▼8.6%)を初めて上回り、世界首位となった。

 自動車の輸出については、2025年中国の輸出台数が700万台を突破し、709.8万台に達した。前年に比べれば21.1%増加し、3年連続で世界一を飾った。うち、EVなど新エネ車の輸出が倍増の251.6万台にのぼり、輸出全体をけん引している。

 メーカー別の輸出台数を見れば、国産メーカーが輸出の主力であることがわかる。上位10社に9社が国産メーカーだ。奇瑞が前年比17.4%増の134.4万台で1位、BYDが140%増の105.4万台で2位。外国勢にはテスラが22.6万台で9位だが、12月ではトップ10から姿が消えた。輸出の主力交替が鮮明となり、外国勢が凋落する格好となっている。

 

●先進国への輸出も急増

 これまで中国車の輸出先が主にアジア・アフリカ・中南米など新興国・途上国というグローバルサウスの国々だった。しかし今は英国、オーストラリアなど先進国への輸出も急増している。

 表1は2025年1~11月中国乗用車輸出先上位10ヵ国への輸出台数及び伸び率を示すデータだ。これによれば、輸出先トップ10に英国4位、ベルギー6位、オーストラリア7位など先進国3ヶ国がランクインされた。前年に比べれば、英国が54%増で26万9900万台、オースラトリアが61.2%増で23万を記録した。ベルギーがEUによる中国製EV制裁措置の影響を受けたが、それでも4.6%増加し26万6608台にのぼった。

 それではなぜ先進国でも中国車が人気モノになっているのか?

 嘗て中国製品は安かろう悪かろうのイメージが強かったが、今はこのような面影はすっかり消えた。先進国への車輸出はEVがメーンで、中国のEV技術も車載バッテリー技術も世界の先頭を走っている。大規模生産でEV完成車の価格も日米欧より格段に安い。量産体制+技術力+快速なモデル更新+完全たるサプライチェン。これは中国勢の優位性であり、国際競争力がライバルを圧倒する秘密兵器とも言える。

 さらに、英国とオーストラリアは米国や日本及びドイツ、フランス、イタリアなどのように自国の車ブランドを持たず、中国車の輸入で雇用や経済を圧迫する懸念がない。中国製EVの価格や品質の競争力があれば、別に日米欧のブランド車に拘る必要もない。

 

 

●カナダ、英国、EUとの関係改善が追い風へ

 今年、中国車の先進国輸出が更に拡大する見通しとなる。理由はEUの対中国制裁措置の見直しとカナダの中国製EVに対する特別関税の撤廃にある。

 周知のように、2024年に当時のカナダ政府はアメリカのバイデン政権に追随して中国製EVに対し100%の関税を導入した。しかし、2025年3月にカナダ銀行総裁のマーク・カーニー氏が首相就任後、悪化した対中関係の改善に強い意欲を示している。今年1月にカーニー首相がカナダ首相として8年ぶりに訪中し、習近平国家主席、李強首相と相次いで会談した。そして中国との戦略的パートナーシップの締結を発表した。

 この合意により、カナダ政府はこれまで中国製EVに課してきた100%の関税を、年間4万9000台を上限に6.1%まで引き下げる。輸入枠も5年目までに年間7万台へと拡大される予定だ。

 カナダ市場で販売しているEVに比べれば、同種類の中国製EV価格は1万~1.5万カナダドル安い。品質も全く劣らないので、競争力が十分あると見られる。言うまでもなく、加中間の合意は中国自動車の輸出にとって、追い風になるのが間違いない。

 中国自動車メーカーにとって、もう1つの朗報は中国・EU貿易交渉の進展だ。EUは嘗て中国政府による補助金で中国製EVが不当に安く売られ、欧州自動車産業の脅威になっているとして2024年10月に追加関税を発動した。従来の10%に最大35.3%を上乗せし、最大45.3%としている。反発した中国はEU産の豚肉や乳製品に関税を課すなど対立が深まっていた。

しかし、トランプ関税によって、EUは米中と二正面作戦に追い込まれ、中国に対し関係改善を模索せざるを得ない。12日EU欧州委員会は、中国から輸入するEVに関し、最低価格の設定などを中国の輸出業者に求める指針を公表した。EUが中国製EVに課している追加関税の撤廃につながる可能性が出てきた。

一方、中国商務省もEU側の指針公表について「今回の進展は中国とEUの対話の精神と協議の成果を十分に反映している」と評価した。「中国とEUの経済、貿易関係の健全な発展だけでなく、ルールに基づく国際貿易秩序の維持にも資する」とコメントを付けた。EU側の譲歩に対する見返りとして、中国はEU産の豚肉や乳製品の関税の引き下げを約束したという。

 中国とEUの経済・貿易交渉の進展によって、中国製EVの欧州輸出拡大に繋がることがほぼ確実だと思われる。

 英国のスターマー首相も近く英首相として8年ぶりに中国を訪問する。首脳会談を通じて中国との関係修復を図る。英中関係の改善は中国製自動車輸出のプラス材料ともなりそうである。

 今後、EVの現地生産や技術移転を含めて、中国の自動車メーカー各社が先進国市場への進出を加速し、販路拡大に注力するだろう。2026年中国車の先進国輸出がさらに拡大すると、筆者が見ている。当然、日本勢と第三国での競争も一層熾烈さを増すに違いない。(了)

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