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第155話 今年5.5%成長の政府目標が絶望的

中国経済の最新動向

 「ゼロコロナ」政策によるロックタウンの多発・乱発によって、中国経済に険しい雲行きが漂っている。政府が掲げている5.5%成長という経済目標の達成は危うく、ほぼ絶望的な状態となっている。

 

 

◆現下の中国経済の体感温度は「氷点下」

 5月16日、中国国家統計局が今年4月の主要経済指標を発表した。それによると、生産動向を示す工業生産は前年同月比2.9%減となり、3月5.0%増から一転して悪化した。上海など主要都市のロックタウンが相次いだことで、物流やサプライチェーン(供給網)が混乱したことが響いたと見られる。工業生産がマイナスに転落したのは、2020年3月以来、2年1カ月ぶりの前年割れだった。

 

 主要産品の生産量では、自動車が前年同月に比べ43.5%減、集積回路(IC)12.1%減、パソコン16.8%減となっている。発電量も4.3%減少した。

 

 消費も低迷している。消費動向を示す小売の売上高は前年同月比で11・1%減、下落幅は3月(3.5%)から拡大。そのうち、ロックタウンなど外出制限の影響を受けやすい飲食店収入が22.7%減となった。中国自動車工業協会によると、4月の新車販売台数は47.6%減と急落し、2020年「武漢封鎖」以来の落ち幅を記録した。特に上海市自動車販売業協会によると、同市4月の新車販売台数は「ゼロ」だった。ロックタウン代償の大きさが伺える。

 

 また、1~4月の住宅販売面積と販売金額は前年同期に比べ、それぞれ20.9%減、29.5%減となっている。

自動車と住宅は中国の経済成長をけん引する2大エンジンだが、今はいずれもエンスト状態となっている。

 

 投資動向を示す固定資産投資は、1~4月の累計で前年同期比6.8%増、伸び率は1~3月の9.3%から大幅に縮小。単月で計算すれば、4月はマイナス成長の可能性が高い。中国の固定資産投資は設備投資、インフラ投資、不動産投資から構成される。そのうち、4月の不動産開発投資は2.7%減でマイナスに転落。昨年から続いてきた不動産業界への規制強化の影響を払拭できずに悪化が続いている。

 

 工業生産減少及びサプライチェーン寸断の影響を受け、中国の輸出が停滞している。4月の輸出はドルペースで3.9%増、1~2月の16.3%増、3月の14.7%増に比べれば、急ブレーキがかかったことは明らかだ。

 

 外需停滞、内需不振。春に真冬が戻るような寒さで、4月の中国経済を体感温度に例えば、「氷点下」と言えよう。

 

 

◆急減する主要都市の財政収入

 ロックダウン多発は、企業の経営活動を直撃している。その結果、国の税収など財政収入は急減している。

 

 財政部の発表によれば、2022年1~4月全国財政収入は74,293億元(1元=19円)で前年同期比4.8%減、うち税収は62,319億元で7.6%減となっている。財政支出は前年同期比5.9%増の80,933億元、財政赤字は6,640億元(約12.6兆円)にのぼる。

 

 都市封鎖のため主要都市の財政収支はそろって悪化している。下のに示す

 出所)各市政府部門の発表により、筆者が作成。

 ように、南京、蘇州、深せん、杭州、寧波、重慶、武漢、広州など8主要都市は、寧波 (950万人)を除いて、全て人口1000万人を超える大都市だ。今年1~4月の財政収入は微増(1.2%)の広州市を除くと、ほかの7都市はいずれもマイナスに転落した。うち、南京▼15.1%、蘇州▼10.4%、深せん▼12.6%と、二桁の減少となっている。

 

 単月で見ると、上記8都市の4月財政収入はそろって二桁のマイナスを記録した。うち、武漢▼29.8%、重慶▼35%、寧波▼36.1%、杭州▼37%、深せん▼44%、蘇州▼49.6%、南京▼54.9%となっている。南京、蘇州、杭州、寧波4都市は「グレータ上海」経済圏に所在し、上海ロックタウンの悪影響が鮮明に浮き彫りになっている。

 

 本稿の執筆を終えた時点で、上海と北京両市は4月の財政収支をまだ発表してないが、北京はマイナスに転落し、上海はゼロに近い可能性が高い。

 

 中国の財政収支から見ても、現実無視・コスト無視のゼロコロナ対策の限界が明らかだ。この対策を見直さない限り、財政収支がさらに悪化する恐れがあり、今秋開催の党大会に冷や水を差しかねない。

 

 

◆若者たちの「失業潮」が襲ってくる

 「ゼロコロナ」対策⇒都市封鎖⇒企業経営圧迫⇒経済打撃⇒雇用悪化。中国経済はこうした悪循環に陥っている。

 

 現在、中国の雇用情勢は厳しさを増している。政府は今年の都市部登録失業率を5.5%以下に目標設定している。しかし、国家統計局の発表によれば、4月の失業率が6.1%にのぼり、前月より0.3ポイント上昇した。「農民工」という農村部からの出稼ぎ労働者が失業者統計対象にならないが、仕事を失った農民工も失業統計に入れると、失業率が10%を超えるだろう。

 

 若者たちの雇用は特に深刻だ。国家発展・改革委員会5月17日付の発表によれば、今年4月に16~24歳の若者たちの失業率は18.2%に達し、統計開始以来最悪の水準だ。

 

 今年の夏に、史上最多の1076万人の大学生が卒業する。今は就職活動の最中だが、4月中旬までの就職内定率は15.4%にとどまっている。予測によれば、今年7月時点の若者の失業率が20%を突破するという。この水準は武漢封鎖の20年7月(16.8%)を大幅に上回る。

 

 最近、李克強首相は一連の会合で、「雇用安定」を連呼しているが、現実では数多くの人々が「セロコロナ」のために仕事を失ってしまった。経済重視の李首相も「ゼロコロナ」という壁の前に雇用回復の妙策がない。

 

 

◆今年5.5%成長の政府目標が絶望的

 1~3月期の中国GDP成長率は4.8%。4~6月期はさらに減速し、2%台にとどまる可能性が高いと筆者は見ている。

 

 今年前半の実績が政府目標5.5%より遥かに低いため、通年の目標を実現するには、今年後半に2四半期連続の6%台成長が必要だ。しかし、今後も不確定要素が多く、V字型回復に期待が薄い。

 

 要するに、「ゼロコロナ」によるロックタウン多発、見通せないウクライナ戦争の行方、米国金融緩和の終結と利上げなど、中国経済をめぐる内外環境は厳しさを増し、政府が掲げる5.5%という成長目標は絶望的と言っても決して過言ではない。

 

 IMFは既に2022年中国経済の見通しを4.8%から4.4%に下方修正した。筆者は4%前後になるのではないかと予測している。3期目を狙う習近平体制にとっては、決して喜ばしい数字ではない。 

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