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経済・株式・資産

第172話 ”守られる会社”には理由がある

あなたの会社と資産を守る一手

 銀行は本来、合理性で動く組織です。返せる先に貸し、返せない先からは回収する。これが融資の原則です。しかし実務の現場では、業績が厳しくても、明らかにリスクがあっても、長期間にわたって支援が継続される会社が存在します。いわゆる「潰されない会社」です。この違いはどこにあるのでしょうか。

 まず最も大きいのは、「潰した場合の影響の大きさ」です。地域の中核企業であり、従業員や取引先への波及が大きい場合、その会社を破綻させることは単なる一社への与信の問題ではなくなります。銀行にとっても、融資の焦げ付きだけでなく、地域経済への影響、評判リスクが発生する。このような場合、「正しい処理」よりも「維持する合理性」が優先されます。

 次に、「銀行側の引き返せなさ」があげられます。長年にわたり多額の融資を行っている案件では、途中で評価を下げること自体が難しくなります。評価を下げるということは、過去の判断が誤っていたことを意味するからです。結果として、「今さら引けない」という構造が生まれ、支援が継続されます。

 三つ目は、「回収可能性が残っていること」です。ここは非常に重要で、完全に回収不能な会社は守られません。逆に言えば、担保や保証、事業価値などを通じて、「最終的には回収できる」というストーリーが成立している限り、銀行は支援を続ける理由を持ちます。これは表向きの理屈であり、同時に内部を説得する材料でもあります。

 四つ目は、「内部で守る人がいること」です。どんな案件でも、最終的には銀行内部の”人”が動かしています。支店長、本部のキーパーソン。この誰かが「この案件は守る」と判断し、その責任を引き受けている限り、案件は維持されます。金融庁の検査においても守る人がいる企業の場合、雲泥の差がでてきます。ただ、逆に言えば、その人がいなくなった瞬間、評価は一気に現実に引き戻されることもあるのです。

 五つ目は、「形式的な整合性が保たれていること」です。多少実態に問題があっても、契約書に不備がない、担保が設定されている、帳簿上は整っている。このように最低限の形式が維持されていると、外部から見ても”説明可能”な状態になります。銀行にとって重要なのは、完全な正しさよりも「説明できること」なのです。

 そして最後に、「誰も得をしない構造」ということがあります。この会社を潰しても税務署は大きな税収を得られない、銀行は損失を確定させるだけ、行政も評価されない。このような場合、合理的な選択は”現状維持”になるものです。結果として、問題があっても維持されます。

 これらをまとめると、「潰されない会社」とは、特別に優れている会社ではないのです。むしろ、

潰すと影響が大きい
銀行が引けない
回収の理屈が立つ
守る人がいる
形式が整っている

 こうした条件が重なった結果として、潰されない状態が維持されているのが実情です。

 ただし重要なのは、これは”安定”ではないという点です。この状態はあくまでバランスの上に成り立っています。一つでも条件が崩れれば、評価は一気に変わります。守られているように見える会社ほど、じったいはそのバランスに守られているのです。

 経営者にとって重要なのは、「なぜ守られているのか」を理解することです。そしてその状態に安心しないことがたいせつです。

第171話 銀行が「もう守れない」と判断する最終ライン前のページ

第173話 試算表の「棚卸未実施問題」をどう乗り越えるか 〜実務の妥協点と銀行の信頼を勝ち取るロジック〜次のページ

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