ウェルビーイング経営という言葉が広まった今、従業員の健康や幸福だけでなく、「事業が依って立つ環境そのものが健やかであること」、つまり地球規模のウェルビーイングも含めて考える時代に突入しています。
ここ数年は、世界情勢が不安定となり、同時に、資源問題がビジネス環境に深刻な影響を与えつつあります。特定のエネルギー資源への依存がいかに危ういか、経営者が向き合うべき大きなリスクとして「石油資源問題」が前線に出てきています。しかし、リスクは石油だけではありません。事業が、実は何に支えられているのか—その足元を見つめ直したとき、浮かび上がるのが「水」という究極の資源です。日本は石油大国ではありませんが、水には恵まれた国のはずです。しかし、実は、水でさえも、石油同様に無限ではないという事実は案外知られていません。
今回は、水なしでは成立しない2つの巨大産業、「半導体」と「飲料」のトップランナー企業が実践する、「ウォーターポジティブ(使う以上に水を育む)」への挑戦について学んでみましょう。
事例1:半導体の巨人・TSMCが「熊本」を選んだ理由と、徹底した水循環
もはやデジタル社会の心臓となった半導体。その製造には、想像を絶する大量で清浄な水が必要です。世界最大の受託生産企業、TSMCが熊本に進出した背景には、実は豊富な地下水への信頼があったとされています。しかし、水は無限ではありません。同社が水に対して行う取り組みは多岐にわたります。
・「1日3万t」という膨大な使用量への覚悟
熊本第1工場がフル稼働すると、1日に使う水は約3万tにのぼります。これは住民約10万人の1日の生活用水に匹敵します。 TSMCの日本法人JASMは「資源の使い方や環境への配慮なしに生産活動を持続できない」と断言して、水問題に真剣に取り組んでいます。
・驚異のリサイクル率「75%」と地域への還元
同社の取り組みは、大きく3つの柱で構成されています。
1. 徹底リサイクル: 排水を36種類に細かく分類し、最新のシステム(TMAH回収など)で処理。1つの水を約4回使い回すことで、地下水の取水量を大幅に削減しています。
2. 取水量を上回る「涵養(かんよう)」: 2024年には、取水量の3倍に当たる500万tもの水を地下に戻しました。冬の田んぼに水を張る「水田湛水」を進めるため、協力農家の米を「涵養米」として高く買い取り、社員食堂で提供するという、地域経済を巻き込んだ循環を作っています。
3. 厳格な水質管理: 排水の水質が基準を1ミリでも超えればバルブを閉じる。地域住民の不安に応えるため、徹底した透明性を確保しています。
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