今年7月15日、中国国家統計局は2026年1~6月期のGDP成長率を4.7%と発表した。IMFも7月8日に2026年の中国経済成長率見通しを前回発表の4.4%から4.6%へ0.2ポイント上方修正した。一見すれば、中国経済は堅調な推移を見せている。しかし、実際に好調な外需と低迷な内需が大きく乖離し、歪んだ成長構図を示している。
外需と内需が大きく乖離する「K」字型成長
筆者は今年1~7月の中国の外需(輸出)と内需(消費)の伸び率を調べた。輸出は3月(2.5%増)を除けば他の6カ月がいずれも2桁成長を記録している。一方、消費は低迷を続け、終始ゼロパーセントを挟んで推移している。
月ごとの輸出と消費の伸び率をグラフで表示すれば、図1のように、上の線が輸出の伸び率を、下の線が消費の伸び率をそれぞれ示し、綺麗な「K」字を描いている。筆者は内外需が大きく乖離する中国の経済成長を「K字型成長」を呼ぶ。言うまでもなく、「K字型成長」は歪んだ成長にほかならない。
出所)中国国家統計局の発表により筆者が作成。輸出の伸び率はドルベース。
「K字型成長」の主な原因は2つ。1つは電気自動車(EV)を代表とする中国テック産業の勃興、もう1つは不動産バブルの崩壊だ。前者は中国の輸出急増をけん引し、後者は中国の国内消費を圧迫している。
テック製品が中国の輸出をけん引
中国の輸出構造を詳しく調べれば、テック製品の急増が輸出全体をけん引することがわかる。
中国税関の発表によれば、今年1-7月に輸出全体が2兆5,226億ドルにのぼり、前年同期に比べて18.5%増えた。そのうち、データ自動処理設備(45.2%増)、集積回路(99.5%増)、自動車(54.9%増)、船舶(37.9%増)など技術集約型製品はいずれも輸出全体の2倍以上の伸び率で輸出が拡大している(表1を参照)。特に、自動車のうち、EVとPEVを含む新エネ車の輸出は前年同期比2.2倍の290万9,000台を記録し、自動車全体の輸出を力強く牽引している。
上記4品目だけで輸出金額は中国輸出全体の21%を占める。一方、衣服類(0.9%増)、繊維製品(3.9%増)、靴類(▼6.9%)、玩具(▼9.7%)など伝統的な労働集約型製品の輸出は微増または減少に転落した。
昔、衣服など4品目の輸出は中国のドル箱だったが、今は下り坂を辿り、金額ベースでは輸出全体の8.5%に過ぎない。技術集約型製品と労働集約型製品の輸出は、このように明暗を分けている。
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表1 2026年1-7月中国テック製品の輸出金額と伸び率 |
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輸出商品名 |
金額(億ドル) |
伸び率 |
シェア |
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輸出全体 |
25,226 |
18.5% |
100% |
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データ自動処理設備 |
1,662 |
45.2% |
6.9% |
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集積回路 |
2,160 |
99.5% |
8.5% |
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自動車(完成車) |
1,108 |
54.9% |
4.4% |
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船舶 |
387 |
37.9% |
1.5% |
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※備考 |
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衣服類 |
894 |
0.9% |
3.5% |
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メリヤスなど繊維製品 |
853 |
3.9% |
3.4% |
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靴類 |
238 |
▼6.9% |
0.9% |
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玩具 |
190 |
▼9.7% |
0.7% |
出所)中国税関の発表により筆者が作成。輸出金額や伸び率はドルベース。
不動産バブルの崩壊は国内消費を圧迫
中国不動産のバブル崩壊は惨烈だ。図2のように、中国の不動産産業は2022年からバブルが弾け始め、不動産投資や住宅販売金額が5年連続で減少を続けている。特に23年からマイナス幅が拡大し、両者ともに3年連続で2桁減を記録した。
出所)中国国家統計局の発表により筆者が作成。
建設、鉄鋼、セメント、家具など関連産業を含めれば、不動産産業は嘗て中国のGDPの約3割を占め、経済成長をけん引する最大の産業分野だった。不動産バブルの崩壊は建機、鉄鋼、セメントなどの製造業に直接的なインパクトを与えるのみならず、家具、家電、不動産仲介などの業界にも波及的な影響を及ぼしている。
中国人民銀行が2019年に行われた調査によれば、都市部家庭の持ち家比率が96%に達し、住宅資産は家庭総資産の59.1%を占める。不動産バブルの崩壊によって、住宅価格が大幅に下落し、国民の家庭資産を直撃する。さらに多くの家庭がバブル期に住宅ローンを借りて住宅を購入したが、今はローンの返済に苦しんでいる。不動産バブルの崩壊は国民の消費を大いに圧迫し、内需低迷の長期化をもたらす張本人である。
従って、不動産の立て直しが成功しない限り、中国経済が内需低迷から抜け出すことが難しいと思う。
貿易摩擦の激化が不可避
国内消費の低迷が長期化する中で、中国企業は海外市場に活路を求め、輸出の拡大に努めてきた。
輸出の急増によって、中国に貿易黒字の巨大化がもたらされる。昨年、中国の貿易黒字が1兆ドル大台を突破し、前人未踏の1兆1,889億ドルに達した。この規模はドイツなど世界貿易黒字国ランキング(2025年)上位10ヵ国(中国を除く)のトータルを上回っている。
言うまでもなく、中国貿易黒字の巨大化が異常であり、持続可能なものではない。このままでは、貿易摩擦の激化が避けられない。
その典型的な事例はEUだ。EUは中国にとって、ASEANに次ぐ2番目の貿易相手と輸出先である。ここ数年、中国・EUの間の貿易ではEU側の赤字増加が常態化している。EU側の発表では、2025年にその額が3,600億ユーロ(約58兆5600億円)に達した。EUのフォンデアライエン委員長によれば、「中国からEUへの輸入は過去5年間で45%増加」「昨年は初めて全ての加盟国が対中貿易赤字となった。これは単に安価な輸入品の問題ではない。過剰生産能力がEUの製造基盤を蝕んでいる」と問題視した。
今年に入ってもEU側の対中貿易赤字の縮小が見られない。中国税関の発表によれば、1-7月だけでEU向けの輸出が前年同期比35.7%増の2,108億ドルに達し、通年は3,600億ドルを突破する見通しとなっている。
その背景には、中国のグリーンテック産業の勃興が一因と見られる。過去10年間、中国は先端製造業での優位性獲得に努め、電気自動車(EV)、太陽光パネル、リチウム電池などの製品で巨大な市場シェアを確立してきた。これらのグリーンテック製品の輸出の波は欧州の生産者に競り勝ち、欧州製造業を脅かす存在となっている。そのため、EUは中国の過剰生産能力を問題視し、対中制裁措置を相次いで発動し、中国も対抗措置を講じている。現在、中国とEUの間の貿易摩擦は過熱化の様相を示している。
中国とEUの貿易摩擦に示すように、今後、中国と諸外国との貿易摩擦の激化が避けられないと見られる。いかに内需と外需のバランスを取り、持続可能な経済成長を保つか。中国政府の対応が注目される。(了)

















