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マネジメント

第4回 「対話」と「信頼」が起点 成長を諦めない経営者が今すぐ実践すべき新習慣

ピョートル・F・グジバチの『経営戦略の新常識』

 「情報が属人化して若手が成長しない」「特定の担当者がいないと業務が滞る」「会議は常にトップダウンで、現場が受け身」──こうした課題を抱えていませんか? これらは多くの企業に共通する問題であり、その根本原因は組織内の対話不足にあります。

 社員が自律的に考えて動き、情報共有する組織文化に必要不可欠なのが、「対話」と「信頼」です。経営者が率先して社員と信頼関係を築く行動を増やすだけで、組織のパフォーマンスは大きく向上します。 今回は、対話を軸にした信頼関係の強化方法を解説します。最後には今すぐできる行動リストを設けました。大掛かりな施策を試みる前に、ぜひ実践してみてください。

この記事のポイント

1.対話と信頼は、組織の競争力を高める最重要の経営基盤である

2.1on1ミーティングや雑談の習慣が、心理的安全性を高め、意思決定の精度を向上させる

3.経営者自身が行動を変えることが、最も即効性のある組織変革の手段である

 

対話と信頼が生み出す高パフォーマンスな組織

 Googleの調査結果により、成果を出すチームの共通点は「心理的安全性」の高さであることが明らかになっています。

 心理的安全性は、これまでの記事でも述べた通り、経営者にとって意思決定のスピードと質を上げる戦略要素です。市場機会の損失、イノベーションの停滞、事業リスクの増大といった深刻な損失を回避し、意思決定のスピードを上げる強力な武器となるでしょう。

 心理的安全性を高めるには、相互の「信頼」が欠かせません。そのために、最も手軽で効果的な方法が、日々の「対話」です。

 これらは単なる「職場環境の改善」ではなく「利益向上戦略」そのものです。エンゲージメントの高い社員が増えれば、生産性・定着率が上がり、採用コストも削減できます。リスク管理の面でも有効です。社内全体の情報共有がスムーズになると、問題の早期発見・対処が可能となり、経営の安定性が向上するでしょう。

 経営者自身が率先して「対話」と「信頼」を重視すると、高いパフォーマンスを生む組織に変わっていきます。

「1on1ミーティング」の効果的な導入方法

 対話の代表的な手法が「1on1ミーティング」です。しかし日本の企業では「形式的な月次面談」に終始することが多く、本来の意義が十分に活かされていません。

 単なる進捗確認や評価の場ではなく、「1対1で話す時間」そのものに価値があります。1on1の本来の目的は、社員と上司・経営層との間の心理的安全性を高めること。社員一人ひとりにとって、自分の課題や受けて標を率直に話し、次の行動へのフィードバックを受ける「成長機会」であるべきです。

 よって経営者や管理職は「指導する側」としてではなく、「聞き役」として1on1に臨んでください。社員の成長を促す質問を投げかけ、価値観や本人の中に眠っている思考を引き出すことを意識しましょう。

 アドバイスではなく、問いかけを基本とします。例えば、以下のような質問が有効です。

 「今、どんなことに困っている?」

 「仕事をより良くするために何ができる?」

 「最近、挑戦したいと思っていることは?」

 社員自身で問題を整理し、解決に到達するようサポートしてください。

効果的な「1on1ミーティング」のポイント

  1. 定期的に実施する – 週1回や隔週など、継続的な仕組みにする。
  2.  社員の考えを引き出すオープンな質問にする。
  3.  指示を控えて相手に 「どうすれば解決できるか?」を考えさせ、成長を支援する 
  4. 「他の社員への不満や社内政治を持ち込まない」ルールを明確化し、建設的な対話に限定する。

 1on1を単なる報告の場ではなく、「社員が安心して話せる場」「コーチングの機会」として設計すれば、心理的安全性が高まり、生産性や働きがいも向上します。経営者との1on1は、社員自身もそこで働く意図を再確認し、考えを深めるきっかけになるでしょう。組織全体で、1on1を「主体的な行動を引き出す仕組み」にするのがゴールです。

日常の「雑談」を活用し、信頼関係を強化する

 信頼を築く最も簡単なもう1つの方法が「雑談」です。雑談は「雑な話・世間話」ではありません。

 雑談もまた、1on1と同様に、組織内外の信頼を高め、経営判断の質を向上させる「戦略的対話」の1つです。社員との雑談では、心理的安全性を高めてチーム力を強化できます。またステークホルダーとの対話においても、雑談から高価値な情報が引き出せるようになれば、取引や協業など、新たな可能性が広がるでしょう。

 では、具体的にはどうするか?社員に対しては、例えば朝の挨拶時に「週末はどう過ごした?」と軽く尋ねるだけでも、関係性が大きく変わります。また会議の前後やエレベーターで乗り合わせたときなど、自然な流れでアプローチすれば、素の表情や反応を知ることができます。

効果的な雑談の例

  • 「最近取り組んでいるプロジェクトはどう?」
  • 「会社をもっと良くするために、何かアイデアはある?」
  • 「今、何か困っていることはある?」

 このような何気ない会話の習慣が、信頼関係の土台となります。

 雑談の効力や話題の具体例に興味のある方は、拙書『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』をご覧ください。

経営者が実践すべき「対話」の新習慣

 組織改革の出発点は、経営者が「信頼を土台とした対話」に舵を切ることです。そのためにシンプルかつ即実践できる方法が、「1日5分の対話ルール」です。例えば、以下のような行動があります。

  • 毎朝1人の社員に声をかける
  • 昼の休憩時間に社員と軽い雑談をする
  • 会議前に「最近、良いニュースあった?」と聞く
  • 部下からの報告に「ありがとう」を添える
  • 今週、1人の社員と5分間の1on1を試してみる

【まとめ】「対話が変われば、組織も変わる」信頼を成長を加速

 組織の成長を阻む最大の要因は「対話不足」です。経営者が率先して信頼関係を築き、社員が安心して意見を交わせる環境を作る。

 これで組織のパフォーマンスは大きく向上します。1on1ミーティングの導入、雑談を活用した信頼構築、日常の対話習慣の強化は、今すぐ実践してください。

 単なる風土改善ではなく、組織の競争力を高める経営戦略です。経営者が行動を変えると、社員の自律性も強化され、精度の高い意思決定が可能になり組織の成長も加速するでしょう。

第3回 思考の多様性を育む組織改革のヒント 優秀な経営者でも陥るバイアスの罠とは前のページ

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