サイバーリンクスは官公庁向けの通信制御システムの販売・保守から始まり、1993年にNTTドコモの携帯電話販売を開始し、2001年にはインターネットデータセンターを開設して、官公庁や流通業向けの基幹業務システムの提供を開始している。
同社は世の中にクラウドという言葉がまだ浸透し始める前の2005年に日本で初めて小売業向けにシェアクラウドの方式でサービスを開始している。2024年12月時点の食品小売業向けの基幹業務システムである「@rms基幹システム」は1,271店舗にまで導入が進んでおり、同社の躍進の柱の一つとなっている。
加えて、ここにきて急拡大しているのが、官公庁向けのクラウドシステムである。同社の官公庁クラウド事業は、主に和歌山県、大阪府、奈良県の自治体向けに行政情報システム、地域防災システムなどのサービスを提供するものである。さらに同社では2019年10月に株式会社南大阪電子計算センターを連結子会社化し、2022年7月に文書管理システム「ActiveCity」を全国に展開する株式会社シナジーを同じく連結子会社化している。
ここに来ては特に我が国では地方公共団体の基幹業務システムを順次「標準準拠システム」に統一し、ガバメントクラウドへ移行する方針が2023年4月から始まっていることで、南大阪電子計算センターの業務量が大きく増えている。これは民間では急速にIT化が進んでいるのに対して、官公庁が旧態依然の紙によるやり取りやフロッピーディスクなどによるデータ保存があることに対する非難もあって、2026年3月までに地方自治体が国のガバメントクラウド方式にすべて切り替えるとしたものである。そうは言っても実際はそこまでに移行できない自治体も残るようではあるが。

そんな背景もあって、同社では流通クラウドと官公庁クラウドがともに高成長局面を迎えている状況にある。同社の連結業績は、2024年12月期までの11期間で売上は2.1倍、営業利益は3.7倍となっている。特に足元ではガバメントクラウドの急拡大もあり、2025年12月期第3四半期累計の連結業績は売上高で14.4%増、営業利益では81.5%増とさらに成長が加速している。
有賀の眼
クラウドは、2006年ごろにAmazonがAmazon Web Services(AWS)を発表してから、実用的なクラウドサービスとして広がりを見せ始めたと言われている。しかし、当時は「クラウド」という言葉が世に知られても、いったいクラウドとは何ぞやというような書籍が次々刊行されるほど、得体のしれないものであったと言えよう。まさか、ここまで世の中を支配するとはなかなか理解はできなかった。
しかし、そんな聡明期に果敢にそのクラウドに挑んだことで、20年後に大きな花が開こうとしている地方企業がある。AWSに代表されるようにクラウドと言えば、大企業が想起される中で、実は同社のような小規模企業が急速に頭角を現す状況に驚くばかりである。



























