今回は前回と同じフェーズ8の「 モノづくり 」です。その第3項目の『 ソフト面やハード面 』13項目中の第8項目である、分譲マンションの商品計画上で住戸への縦動線になります大事な「 エレベーター 」に関する、適正台数や仕様に関して充分理解して戴きたいと思い、 今回は『 「 エレベーター 」の台数と仕様について…。 』のお話を致します。
前回はフェーズ8「 モノづくり 」の『 ソフト面やハード面 』13項目中の第7項目である『「 屋外廊下形式 」と「 屋内廊下形式 」のメリット及びディメリット。 』に関してのお話を致しました。
「 モノづくり 」に於いて、住まいの『 ソフト面やハード面 』の充実を図るという事で13項目用意致しました。今回はその第8項目で分譲マンションの商品企画時点で売れ行きをもっとも左右致します『 「 エレベーター 」の台数と仕様について…。 』と言う事を、皆様に具体的に詳しく御説明致します。
さて、今回も私が建築家として最も得意とする「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」であります。分譲マンションの「 モノづくり 」に対する「 こだわり 」に於いてマンションのエントランスから住戸への縦動線になります「 エレベーター 」の台数や仕様が如何に大切であるかの御説明致します。
毎回このコラムで、申し上げていますが、最近の準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの傾向は、良い商品を作って分譲しているディベロッパーと、販売力のみ強いディベロッパーとの「 2極分化 」が進んでいる様に感じられます。販売力のみに頼っているディベロッパーにとっては大変な時期が現在進行中でありますので私はとても危惧致しております。
更に、不動産業界は「 超大手、大手ディベの寡占化 」が進んでいます。これらの会社を凌駕する為には是非、分譲予定物件の「 モノづくり 」にはトコトン「 こだわり 」を持って、顧客に購入意欲をかきたてる良い商品を作る事が大切です。良い商品を作り続ける事に依り潜在顧客の信用を勝ち取り、不動産業界に於いて良い評判を立てて、更に会社の信用度を増せば「 ブランディング形成 」( ブランドを高める事 )になり「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対峙できる様になる事です。
魅力的な良い商品作りを継続されていれば、一般消費者の社会で会社名や「 ブランド 」の知名度も上がりますので、先程申し上げました様に不動産業界の中で超大手や大手ディベロッパーと同様に世間は評価致しております。それでこそ、準大手や中堅ディベロッパーが生き残れる道だと思います。
その様になる為にも、今回のタイトルの「 モノづくり 」第3項目の『 ソフト面やハード面 』13項目中の最初の第8項目である『 「 エレベーター 」の台数と仕様について…。 』の内容は前回に引き続き分譲マンションの商品企画・基本計画時点の第一歩で、この選択も売れ行きを大きく左右する重要な事なのです。
今回も私が今迄手がけました新規分譲マンション等の設計業務の経験に基づいた大変貴重なお話です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーの方々はこれから行う、分譲マンション等の商品企画・基本計画時点で是非「 エレベーター 」の適正台数や仕様にこだわりをもって設計して戴きたいと存じます。
その前に一言。私が今までの業務経験を踏まえて申し上げたい事は、準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーは、これからは絶対に『 製販一体 』の体制で分譲マンション等の商品企画業務を遂行して戴きたいと思います。その理由は販売担当者が顧客の生の声を商品企画会議で発言し、その内容が良ければどんどん商品企画等に反映できるからなのです。
そして更に、今回の『 「 エレベーター 」の台数と仕様について…。 』の具体的な内容が販売の方々にも良く理解でき顧客に対する販売ツールにもなるからなのです。
前置きはさておき、本題である『 「 エレベーター 」の台数と仕様について…。 』をこれから具体的に御説明致します。
このコラムの冒頭で申し上げました様に分譲マンションでエントランスホールより住戸への縦動線で大切なのは「 エレベーター 」の適正台数と仕様なのです。
新規分譲マンションの商品企画・基本計画時点で「 エレベーター 」の適正台数と仕様を決定致します。
まず一番目に「 エレベーター 」の適正台数に関して御説明致します。
最近、超高層や高層マンションが都心のみでなく郊外の主要駅前等にどんどん建ってきています。これらのマンションの図面をチェック致しますと、どうもエレベーターの台数が不足している様に思われます。
ちなみに、商業施設や事務所ビルのエレベーターの台数計算は平常時の滞在人数より計算致します。
処がマンションでのエレベーターの適正台数計算は事務所ビル等と同じ計算式で行なうとどうしても不足しがちです。マンションの階数やワンフロアー当たりの戸数に依っての違いは有ります。更に、超高層マンションに使われている、超高速エレベーターでも台数は若干の違いがありますが、不足気味です。
そこで、我々マンション設計者は今までの経験則でマンションのエレベーターの適正台数は高さや形状にかかわらずに通常は住戸50戸当りに1基を基準としています。全住戸数を50で割って小数点以下は三捨四入の計算での「 エレベーター 」台数としています。四捨五入では少ないのです。
スピードやキャパシティー( かごの定員数 )の違いが有っても朝の通勤・通学時には各階の住戸の方がいっせいにエレベーターのボタンを押すので各階停止になり、実際には設置されていますエレベーターの仕様に書かれていますスピードはほとんど出ていない状況なのです。
超高層や高層のマンションの中間階以下に住戸が有る人は朝の通勤・通学時には「 満員通過 」になり待たされる事がよく有るのです。マンションのエレベーターの台数が少なくて会社に遅刻したと言う話さえ聞きます。その様な事例では、例えば12階建て高層マンションの6階の方で全て下階へ行くエレベーターが満員通過で3分位待たされて、ついに階段を駆け降りたそうです。
ある書籍に書いてありましたが、エレベーターを待つ時間は1分以上ですと、とても長時間に感じられるそうです。
さきほど例に挙げましたマンションは総戸数120戸地上12階建でエレベーターが2基しかないそうです。総戸数120戸を50戸で割りますと2.4台ですので四捨五入致しますとエレベーターは2基になってしまいますが、やはり総戸数を50戸で割ってでた数字の小数点以下は三捨四入して台数に含み3台にすべきだと思います。
これからの時代は夫婦共稼ぎの方々が増え朝の通勤時間に嫌な思いをさせない為にも、超高層、高層マンションを計画されている方は「 エレベーター 」の台数は総戸数を50戸で割った数字とその数字の小数点以下を三捨四入した台数にすべきだと思います。
この様な事を申し上げますと「 エレベーター 」の台数が増えて毎月の管理費が高くなると言われる方々がいらっしゃいますが「 エレベーター 」の保守点検費用は1台につき月に約7~9万円位です。総戸数で割れば多くても月に2~3千円程度毎月の管理費上がるだけです。それよりも「 エレベーター 」の待ち時間を短くされる事の方が購入者( 入居者 )への配慮ではないかと思います。
ちなみに、 本年( 2014年 )の7月末頃に建築基準法の一部改正により、エレベーターシャフト面積が容積率より除外される事になる旨を国土交通大臣が発言したそうです。尚、現在は共同住宅( マンションやアパート等 )や事務所ビル等に於いて、エレベーターの昇降路部分の面積がエレベーターの有る階は全て床面積に含まれ、容積率対象床面積に含まれているのです。
それが、本年の7月末頃に、共同住宅のエレベーターシャフト面積が容積率対象床面積より除外される様になったのです。
今迄の建築基準法の52条6項ではマンション等共同住宅では階段、共用廊下やバルコニー( 条件付 )等の床面積のみは容積率対象床面積から除外されていましたが、その建築基準法52条6項を改正し、エレベーターシャフト面積も容積率対象床面積から除外すると言う事です。
その事に依り今迄「 エレベーター 」昇降路部分が容積率対象床面積に算入されていましたが、その面積分、専有床面積( 売り面積 )になり売上金額がかなり増えますので、今後良心的なマンションディベロッパー( 売主 )は「 エレベーター」の台数を増やす事が購入者( 入居者 )へ気遣いだと思います。
二番目に「 エレベーター 」の位置のお話しを致します。
「 エレベーター 」の位置は各階の一番遠い住戸からエレベーターホールまでの距離が50メートル以内にある方が良いのです。この理由は女性や高齢者の方々が重い荷物(ゴミ出し等)を運ぶ時の限度の距離は50メートルと言われているからです。
超高層の塔状のマンションですとエレベーターは各フロアーのセンターコアー( 建物内の中心に共用施設を集めて設置した所 )に有りますので、住戸玄関から50m以上という事はまれです。
処が、塔状で無く版状の高層マンションでは廊下の長さが長い場合が多いので妻側の端の住戸玄関からエレベーターホールまでの距離が50mを超えるケースが多々見受けられます。
この様な場合にはエレベーターが2台以上必要で分けて配置致しますのが売主や設計者の購入者への配慮なのです。
三番目にマンションのエレベーターの仕様に関して大事な点を御説明致します。
まず「エレベーター 」で一番大切な仕様は9人乗りトランク付か否かです。この仕様のエレベーターが最低でも1基は必要です。このトランク付が大切なのです。
このトランク付きとはエレベーターカゴ奥の正面の壁の下部が観音開きになっておりまして、開くと長い物が運べる様になっています。脳溢血等で倒れた時は水平に搬送しないと、生命に係わりますので救急車のストレッチャーも水平に搬送する為にエレベーターにこのトランクが必要な訳です。
次に大切な仕様はエレベーターの機械に「 P波センサー付地震時管制運転システム 」が付いているか否かです。大きな地震時、事前に地面を伝わってくる振動「 P波 」が有りそれを感知して自動的にエレベーターを最寄り階に止めて扉を開く装置なのです。
通常は地震時に来る「 S波 」で地震が来てからエレベーターを止めるのですが「 P波センサー 」は「 S波センサー 」より事前に地面の波動を感知し、地震の数秒前にエレベーターを止めて扉が開く様になっていますので安心なのです。
その次に大事なのが「 停電時自動着床装置 」です。停電になった時エレベーターが階と階の間に停止するのを防ぎ最寄りの下の階で止まりドアーが開く様になっている装置です。この作動はバッテリーで行いますので、バッテリーのメンテナンスと何年かでのバッテリー交換が必要です。
そして更に大切な事はエレベーターのカゴ内の操作版と対角線側の位置に「 非常警報押しボタン 」が増設されている事です。カゴ内で襲われて操作盤に付いている「 非常警報押しボタン 」に手が届かなくても対角線側の壁にもう一つ「非常警報押しボタン」が設置してあれば手が届き押して異常を知らせられますから子供や女性の方にとっては被害を未然に防ぐ事ができます。
最近はマンションのエレベーターカゴ内天井に監視用テレビカメラが設置されているのが普通ですが、問題はそのモニター画面を誰も監視していないケースがほとんどなので「 非常警報押しボタン 」の増設は絶対に必要です。
最後に最近とても大切になりました「 エレベーター 」の「 自動診断・自動復旧システム 」の設置のお話しを致します。
先程申し上げた様に「 エレベーター 」では震度5程度の地震が起きますと「 P波センサー付地震時管制運転システム 」が設置されていますと、地震の大きな揺れがくる前の初期微動( P波 )で感知致しまして、全てのエレベーターを最寄り階に停止させ、戸開し乗客が降りられる様になっています。
処が「 東日本大震災 」以降問題になっておりますのが、地震発生後に地震の揺れが止まりましてもその後、直ぐには「 エレベーター 」が運転不可能な事です。
「 エレベーター 」の復旧作業は訓練された専門技術者が安全に行うことが重要でありまして、全ての保守及び点検が済むまでエレベーターは運転休止となっております。その結果、マンションやビルの利用者には多大な不便をかける事態が発生したのです。
「 エレベーター 」の復旧作業の為に訓練された専門技術者が直ぐ来てくれれば良いのですが、大抵の場合早くて4~5時間後で遅ければ2~3日後以降になり、その間「 エレベーター 」は使えないのです。特に幼児や高齢者の方々にとってはかなり問題になりました。
この問題を国土交通省は重視し、社会資本整備会建築分科会の建築物など事故・災害部会で検討を重ね、2007年に高さ60メートル( マンションでは約18階 )以下の建物に設置されています「 エレベーター 」に「 自動診断・自動復旧システム 」の設置を容認したのです。尚「 自動診断・自動復旧システム 」は正式には「 自動診断・自動( 仮 )復旧システム 」という事だそうです。
この「 エレベーター 」の「 自動診断・自動復旧システム 」とは何かを、ここで大雑把に御説明致します。
震度5程度の地震が治まった後に、自動的に「 エレベーター 」内に人が乗っていない事を確認し、自動診断運転( 正常時の運行データとの照合等 )を行い、異常なしの場合は約30分後程度で運転を再開する機能を持つシステムの事です。このシステムはあくまでも仮復旧で「 エレベーター 」の正常なスピード等で運転を行うものではなく、最終的には正式な復旧作業を行いますのは先程も申し上げました様に、訓練された専門技術者が徹底的に点検及び保守を致しまして「 エレベーター 」の安全な正常運行が行える様にする事です。仮復旧でもマンションの利用者にとっては「 エレベーター 」が1台でも動く事はとても有りがたい事です。
そして、2009年には諸々の条件を満たせば、高さ200メートル( マンションでは約62階 )以下の建物までは、この「 エレベーター 」「 自動診断・自動復旧システム 」の採用が容認されたのです。
これから新規分譲マンションの計画をされている方々は、今後日本の地震活動を念頭に「 エレベーター 」に「 自動診断・自動復旧システム 」を採用されるべきだと思います。
今回の『 「 エレベーター 」の台数と仕様について…。 』を参考にされて、顧客( ターゲット )の満足度を高めた商品( 新規分譲マンション )を作れば絶対に売れると確信致します。
何度も申し上げています様に、不動産事業で一番大切なのは売主の信用と顧客に対する配慮です。準大手ディベロッパーや中堅ディベロッパーにとって「 超大手、大手ディベの寡占化 」に対抗し勝つ為には顧客へ魅力や気遣いのあるマンションを作り続ける事です。
但し、毎回注意していますが、クレーム等で信用を落とすのは一瞬ですが、再度築くには最低10年はかかります。この事は肝に銘じて下さい。
次回はフェーズ8の「 モノづくり 」第3項目の『 ソフト面やハード面 』13項目中の第9項目である『 駐車場の台数は…。 』に関してのお話を致します。
次回も期待して戴ければ幸いと存じます。
以上