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経済・株式・資産

第107回「クラウド時代には地味な企業がサブスクで高成長企業に変貌する可能性を秘める」サイバーリンクス

深読み企業分析

サイバーリンクスの主要サービスは食品流通小売業向けや食品流通卸売業向けの流通クラウド、行政向けの基幹系・情報系の情報システムなどを提供する官公庁クラウド、NTTドコモの代理店を運営するモバイルネットワークの3事業となっている。なお、モバイルネットワークは本社のある和歌山県内に7店舗のドコモショップを運営する県内最大手である。また、官公庁向けクラウドも和歌山県のウエイトが高い。

2021年12月期の各主要サービスの売上高は、流通クラウド40億円、官公庁クラウド61億円、モバイルネットワーク29億円となっている。この他、新規事業としてマイナンバーカードをベースとしたトラストサービスが0.9億円ある。

2021年12月期の経常利益9.5億円の内訳は、流通クラウド5.6億円、官公庁クラウド5.9億円、モバイル3.8億円となっており、この他全社費用やトラストサービスのマイナスが計5.7億円ある。

直近7期間の経常利益は期によるばらつきはあるが、最近はかなり好調で、7期間の年平均経常利益成長率は7.2%となっている。順調ではあるものの、利益規模自体は依然小さなものである。

この7期間のサービスごとの売上高、経常利益推移はかなりまちまちである。モバイルネットワーク事業の売上高は市場の成熟もあって、2015年度をピークに減少傾向をたどっている。ただし、NTTからの販売奨励金もあって、経常利益は微減傾向ながら横ばい圏となっている。官公庁クラウドは期による売上のばらつきが大きいが、2020年度から2021年度にかけては、大規模な防災行政無線デジタル化工事やGIGAスクールの売上寄与、利益寄与があって売上、利益とも高水準となった。ただし、今期からはそれらが一巡しているため売上は減少傾向となっている。

その中にあってコンスタントに売上、利益を伸ばしているのが流通クラウドである。売上高は2014年の約20億円が2021年には40億円に、経常利益は2014年の1億円弱が2021年には5.6億円となっている。もっとも、2018年、2019年は新規システムの大型開発があり、一旦収益が大きく落ち込み、2020年、2021年と急拡大している。

同社は2005年に日本で初めてクラウドを用いた小売業向けの基幹業務サービス「@rms(アームズ)」を投入している。当初投入したアームズは売上規模300億円までの中小スーパー向けであった。そして、中小小売業向けの提供実績をベースに2019年までに開発したのが、売上高1,000億円規模まで使える次期アームズである。これによって、顧客対象企業は格段に広がることになる。

同社によると対象市場の店舗数は21,000店であり、同社の顧客はそのうちの1,288店舗(2021年12月末)となる。これは全体の6.1%に相当するものであり、顧客の開拓余地はかなり大きい。

このビジネスはシステム開発に大きな費用が掛かるものの、導入が始まると新たな費用はほとんど発生しない。そのため、軌道に乗ってくると、売上の増分が小さくとも利益増分は極めて大きなものとなる。

次期アームズの開発費が2018年、2019年とかかったため、この2期間の利益は大幅に落ち込んでいる。ちなみに、直前の利益ピークの2017年に対して、4年後の2021年までの年平均売上高成長率はわずか3.6%に過ぎないが、この間の経常利益の年平均成長率は28.4%となっている。この間の売上高の増分は5.2億円ほどであるが、経常利益の増分は3.5億円に達する。

2022年6月上期決算の流通クラウドの売上増分の245百万円に対して、経常利益の増分は154百万円となっている。これは全社の経常利益増分の149百万円を若干上回るものである。

会社側ではこの流通クラウドのみで4年後の2025年までに、売上高で10.6億円、経常利益で5.4億円の増加を見込んでいるが、実態はむしろその計画を上回るピッチで進んでいる。

ここまで見てきたように過去の同社は地味な成長軌道を描いてきたとも言える。しかし、次期アームズの開発によって、潜在顧客対象が格段に拡がり、またそのターゲットに着実に浸透することで、想定以上の利益成長を遂げる見込みである。まさに地味で着実に見えた企業であるが、クラウドとSaas(Software as a Service:インターネットを通じて利用できるソフトウェア)によっていつのまにか高成長企業の仲間入りを果たしそうである。

有賀の眼

今やクラウドを活用したSaas、そしてサブスクはまさに成長するネット企業の代名詞のような位置づけになっています。しかし、Saas業者でも苦戦している業者は決して少なくありません。その苦戦の原因は、収益性の高いビジネスゆえに競争もまた激しいということです。

その競争の中で最も大きな差別化要因は、いかに顧客の属性、業種を絞り込み、対象顧客に特化した対応ができるかということにかかっています。同社は、まずは売上高300億円までの小売業に絞り込み、着実に実績を積み上げ、その実績をベースに一段階上の1000億円までの企業に対象を広げたことで、市場と信頼を一気に手に入れたと言えます。

意外とこの売上規模の違いというのはいいステップアップのパターンだったではないかと考えられます。スタート時点でいきなり対象顧客を広くとるより、時間はかかるものの、開発コストが少なくて済み、リスクも小さいステップアップのパターンだった言えるのではないでしょうか。

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