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情報を制するものが勝利を手にする(1)
無敵艦隊を迎え撃つ英国

指導者たる者かくあるべし

 1588年、日本では戦国時代の末期にあたるが、海の向こうでは、英国(イングランド)が未曾有の国難に直面していた。

 スペインの支配下にあったオランダの独立運動を支援し、海上ゲリラを繰り返す英国に業を煮やしたスペイン国王、フェリペ2世は周到に英国上陸侵攻作戦を立案し、その実行の機会を狙っていた。

 スペインは新大陸の富を一手に握り、圧倒的な海軍力とカトリックシンジケートを背景に世界帝国を築き上げていた。

 対するエリザベス女王(1世)治下の英国は、人口で比べてもスペイン・ポルトガルによるカトリック連合の半分にも満たない450万人の弱小島国に過ぎなかった。

 フェリペが密かに練り上げた作戦は、「無敵艦隊」と呼ばれる大艦隊を英仏海峡に送り込んで制海権を握り、対岸のオランダに駐留する陸上兵力3万人とともにロンドンを急襲しようというものだった。

 さらにエリザベスと対立するカトリック陣営のスコットランドの兵を決起させて南北から英国を挟撃し、一気の制圧を目論んでいた。

 エリザベスもただ手を拱いていたわけではない。正規海軍のほかに、スペインの新大陸航路の往来を攻撃しつづけていた海賊の艦船も動員し数の上では迎え撃つ体制を整えていた。しかしどうみても一流艦隊と間に合わせの“泥船海軍”の海戦では勝ち目はなかった。

 結果的には、歴史が示すように英国は、数度の海戦で無敵艦隊を破り、海洋帝国スペインは没落の最初の一歩を踏み出してしまう。

 英国史では、海賊を率いて参戦したドレーク、ホーキンズの二人の英雄の勇猛果敢な戦いぶりと智恵に焦点をあてて英国民統合の象徴として偶像化している。

 しかし、その後、世界史を動かすことになる英国海軍の栄光は、そのようにおとぎ話じみた英雄誕生だけでもたらされたのだろうか。

 『孫子』に言う。「明主賢将が行動を起こして敵に勝ち、人並みはずれた成功を手にするのは、あらかじめ敵情を知ることによってである」(用間篇第十三)。

 1588年5月9日、無敵艦隊はポルトガルのリスボン港を出港して英仏海峡に向かった。艦隊は帆船を中心に130隻、約1万8千人の兵士を満載していた。

 迎え撃つ英国海軍には、どのように勝算を組み立てていたのだろうか。(この項、次回に続く)

 

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

参考文献

『アルマダの戦い スペイン無敵艦隊の悲劇』マイケル・ルイス著 幸田礼雅訳 新評論
『世界史をつくった海賊』竹田いさみ著 ちくま新書
『エリザベスⅠ世 大英帝国の幕あけ』青木道彦著 講談社現代新書
『物語スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代』岩根圀和著 中公新書

 

 

 

 

 

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