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情報を制するものが勝利を手にする(2)
インテリジェンス(諜報)への投資をためらうな

指導者たる者かくあるべし

 『孫子』の兵法を引くまでもなく、戦いの勝敗を決するものは、開戦前の的確な情報に基づいた十分な勝算である。

 スペインの無敵艦隊を迎え撃つことになった16世紀の英国(イングランド)。英国の情報、諜報組織というと、小説007シリーズで活躍するMI6(英国秘密情報部)が有名だが、近代国家が生まれる以前、現在から400年以上も前のエリザベス女王時代に、国家機関として整備がはじまっている。

 その立役者は、エリザベス側近の秘書長官(国務卿)に抜擢されたフランシス・ウォールシンガムである。彼が秘書長官に就任したのは、スペイン艦隊を撃破する15年前の1573年であった。

 カトリック勢力の明主であるスペインは、新教徒側につくエリザベスを亡き者にしようと機をうかがっていた。そして英国内ではエリザベス暗殺の企みが絶えなかった。

 ウォールシンガムは、国防・治安を担う職務に就くや、小国生き残りのために国内外から“感度のいい”情報を入手することに全力を傾けることになる。

 まずは出身校のケンブリッジの語学に秀でた俊英たちに奨学金を支援してスパイとしてリクルートする。文化人たちもエージェントとして採用し、国内外に配置した。

 彼は情報の重要性を訴えて、情報予算確保に奔走する。就任から10年めの情報予算は、国家予算の15%に達した。情報重視の徹底ぶりをうかがわせる。

 最盛期には国内に100人のスパイを抱え、大陸にも71人のスパイを放っていたという。電信もない時代である。彼は私費を投じてロンドン市内に91頭の有事連絡用の馬を飼っていた。

 また、ウォールシンガムは、海外情報の収集のために、カリブ海・中南米に張り巡らされた海賊組織のネットワークも活用する。こうして彼は、海賊棟梁のフランシス・ドレークをも国家組織、海軍に取り込んでいくことに成功した。

 彼が収集を指示した情報の内容は、スペイン国王・フェリペ2世の宮廷内での発言、スペインが開戦準備金としてイタリア商人に申し入れた借金情報など多岐にわたり、スペインの狙いを丸裸にしてゆく。

 そして、無敵艦隊の英国上陸作戦を把握すると、情報戦のターゲットは、その時期と、無敵艦隊の編成状況と司令官人事に絞られてゆく。 (この項、次回に続く)

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

参考文献

『アルマダの戦い スペイン無敵艦隊の悲劇』マイケル・ルイス著 幸田礼雅訳 新評論
『世界史をつくった海賊』竹田いさみ著 ちくま新書
『エリザベスⅠ世 大英帝国の幕あけ』青木道彦著 講談社現代新書
『物語スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代』岩根圀和著 中公新書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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