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経済・株式・資産

第126話 2020年の中国経済成長率は6%前後

中国経済の最新動向

◆減速が続く中国経済 28年ぶりの低成長

 中国統計当局の発表によれば、今年第1四半期の成長率が6.4%、第2四半期6.2%、第3四半期6%と、中国経済の減速が止まらない。6%成長は1992年四半期統計開始以来の最低水準だった。予測によれば、今年の中国経済成長率は6.2%にとどまり、1991年以降、28年ぶりの最低水準を記録することになる(図1を参照)。米中貿易戦争による悪影響は鮮明になったことが示されている。

china 126 1.png

出所)中国国家統計局の発表により沈才彬が作成。

 

 経済成長の三大要素である輸出、投資、消費はいずれも低迷が続いている。今年1~11月、前年同期に比べれば、ドルベースの輸出は2.2%減、インフラ・設備・不動産を含む固定資産投資は5.2%増、全国小売総額は8%増となり、昨年通年の実績よりそれぞれ12.1ポイント、0.7ポイント、1ポイント低下したのである。

 

 消費低迷の典型事例は自動車の新車販売の不振である。次頁図2に示すように、今年11月の新車販売台数は前年同月比▼3.6%で、昨年6月以来、17月連続で減少が続いている。

china 126 2.png

出所)中国汽車工業協会の発表により沈才彬が作成。

 

◆明るい兆しも出てきた

 しかし、中国経済の減速が続く中、明るい兆しも出てきた。今年11月の製造業販売者指数(PMI)、鉱工業生産、輸出入総額、消費などはいずれも上向きの動きが示されているからだ。

 

 まず製造業と非製造業の販売者指数を見よう。図3のように、今年11月中国の製造業販売者指数(PMI)は50.2に達し、7カ月ぶりに好不況の分水嶺である50を上回っている。非製造業販売者指数も54.4に上り、今年3月以来の高水準となっている。

china 126 3.png

出所)中国国家統計局の発表により沈才彬が作成。

 11月の鉱工業生産も製造業販売者指数の好転を裏付けている。当局の発表によれば、11月の鉱工業生産は前年同月に比べ6.2%増で、10月4.7%増より急速に改善している(下表1を参照)。

 

表1 2019年11月の中国経済データ

              11月   10月    9月

・鉱工業生産伸び率    6.2%   4.7%   5.8%

・非製造業販売者指数   54.4   52.8    53.7

・製造業販売者指数    50.2   49.3    49.8

・社会小売総額伸び率   8.0%   7.2%   7.8%    

・固定資産投資伸び率   5.2%   5.2%   5.4%

・輸出入伸び率(元ベース)1.8%   ▼0.4%  ▼3.3%

・消費者物価指数     4.5%   3.8%   3.0% 

 

 鉱工業生産の好転は輸出入の改善にも反映されている。中国税関の発表によれば、11月の輸入は7カ月ぶりにプラスに転じ、ドルベースで0.3%増となった。輸出は▼0.5%で前月の▼3.3%より減少幅は大きく縮小している(図4を参照)。ちなみに、人民元ベースでは輸入2.5%増、輸出1.3%増と、いずれもプラス成長となっている。

 

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出所)中国海関の発表により沈才彬が作成。

 

 消費も伸びている。11月の全国小売総額は前年同月比で8%増、10月の7.2%増より大幅に増えた。11月の新車販売はまだマイナスを脱出していないが、マイナス幅は昨年7月以来の最小となっている。特に注目すべきなのは、11月の新車生産台数だ。前年同月比3.8%増の259万台にのぼり、14月ぶりのプラス転換が実現できた。生産と販売のパフォーマンスから見れば、中国の新車販売は早ければ今年12月、遅くても来年早々にプラス転換が実現されると見られる。

 

 生産、消費、輸出、投資など経済成長を左右する主なファクターのうち、横ばいの投資を除けば、ほかの3大ファクターはいずれも大きな改善が見られ、明るい兆しが見えてきたのは事実である。

 

2020年の経済成長率は6%前後

 11月経済のパフォーマンスから見れば、中国経済は底打ちになる可能性が高い。第4四半期のGDP成長率は6%を割ることが無く、2019年通年は6.2%前後の成長がキープされると、筆者は見ている。

 

 2020年、中国経済をめぐる国際環境は不確定要素が多く、予測が難しいが、6%前後になるのではないかと思う。米中第一段階の合意が着実に履行し、貿易交渉が妥結すれば、6%を超える成長が期待される。

 

 仮に米中交渉が旨く進まず、貿易戦争が拡大した場合、来年の中国経済はさらに5.8%成長に低下する可能性が高い。ただし、インド(18年7.2%、19年1Q5.8%、2Q5%、3Q4.5%)のような成長率が急落するシナリオが極めて低いと見て良い。なぜかというと、中国政府は米中関係の悪化に備え、積極的な財政政策と緩和的金融政策など多くの景気刺激策を打ち出しており、効果も表れ始めているからだ。結局、6%前後(±0.2%)の経済成長は維持されるだろう。

(了)

 

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