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マネジメント

第94回 『多忙な人ほど時間が多い』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

大学教授のCさんは、数年前に大学を変わった。
新しく教えることになった大学は、自宅から片道一時間以上はかかる。

転居も考えたが、共働きの奥さんにとっては、今の住まいは職住近接。毎日通勤する。
一方、Cさんは、週に三度、大学に行くだけだ。それに、転居にはまとまったおカネもかかる。
Cさんは、通勤時間が少々長くても「我慢」しようと考えた。

そして、実際に通い出してみると、一時間以上、ただ「我慢」しているのではもったいないと
考えるようになった。
そこで、あえて、各駅停車を利用して、もっと時間をかけて通勤することにしたという。

急行は込み合うが、各駅停車は空いている。ただし、時間は20分以上余計にかかる。
だが、ほぼ必ず座れることに着眼した。座れれば、ノートパソコンが使える。
Cさんは通勤電車の中でノートパソコンを開き、論文や、ときおり頼まれる
本や雑誌用の原稿作りを進めるようにしたのである。

結果的には、一時間半あまりのまとまった時間のとれることが「吉」と出た。
原稿を書くには、ある程度のまとまった時間が必要だからだ。


Cさんではないが、通勤しながら論文を書くなど、「二種類の時間の使い方」をしたり、
簡単なことは並行して行うようにすると、持ち時間を倍にできる。

実は、私の時間錬金術のメニューにも「Cさん方式」はちゃんと入っている。
若い頃から私は、通勤の車の中では、ビジネス教養や語学などのテープを聴いたり、
英語の放送を聴いたりしている。
活字を追いながら、英・仏の語学テープや講演テープを聞くこともあった。

朝食時には、家族には申しわけないが、新聞を読む。英語放送も聴いている。
ある程度、英語力は身につけたつもりだが、トレーニングを怠れば、
アスリートの筋肉同様、英語力もすぐ衰えてしまうからだ。

一日一冊は買うといってもよいほど本を買う私は、一度に三冊くらい並行して、
異なる本を読みこなしていく。

地方に講演に行く機会が多いが、新幹線や飛行機の移動時間は貴重な読書タイムである。
長い移動時間がとれる仕事は、本好きの私には、むしろ無上の喜びとなっている。


スターバックスコーヒーの創業者であるハワード・シュルツ氏は、忙しい時ほど
むさぼるように本を読んだという。
飛行機での移動のときは、途中で本が「切れて」しまわないために、いつも何冊も
カバンに本を詰め込んでいたそうだ。私にも同じクセがある。

こうして、時間ケチに徹すれば、ムダ時間が排除できるばかりか、同じ持ち時間でも、
その価値を倍にも、それ以上にも拡大できるはずだと思う。

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