中国経済の低迷が続いている。米中対立の激化や米国の制裁に伴う外国投資及び輸出の減少が大きな原因だ。しかし、さらに深層的な理由がある。それは総人口の減少及び労働力人口の急減によって、経済成長をけん引してきた、「3M」(My car、My home、Mobile)に代表される耐久消費材の消費ブームは既にピークアウトとなっているからだ。
新たな成長分野を見つけず、中国をめぐる国際環境が改善しない限り、景気低迷の脱却が難しいと思う。
「現役世代」人口は11年で6516万人減少
中国は14億人を有する世界一の人口大国だ。しかし、今年にこの座をインドに明け渡す。中国は人口減少に転じ、インドが人口増加を続けているからだ。
図1に示すように、中国の総人口は2021年の14億1,260万人がピークで、翌年の22年は85万人が減り、今年さらに減少するのは確実な状態となっている。総人口の減少及び少子高齢化の進行は、国民消費に与える影響が大きく、今の景気低迷と密接な関係にある。
出所)国家統計局の統計により筆者が作成。
総人口の減少よりさらに深刻なのは、労働力人口の急減である。中国では60歳定年を定めており、統計上では16~59歳が労働力人口とされる。この人口層はいわゆる「現役世代」だ。これらの人たちは社会的な富を創造する担い手でありながら、消費の主力でもある。
嘗て、安価かつ豊富な労働力人口は無尽蔵と言われ、中国の高度成長をけん引してきた。しかし、この人口層は2011年にピークに達し、12年からは減少に転じた。22年まで11年連続の減少、累計6,516万人が減り、減少分は日本の総人口の半分に相当する(図2を参照)。単純に計算すれば、毎年約600万人の減少だ。これは、生産と消費の両方から中国経済にダメージを与えている。
出所)国家統計局の統計により筆者が作成。
特に消費への影響は甚大だ。結果的にはマイカー、マイホーム、モバイルという「3M」の消費ブームのピークアウトに繋がった。