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戦略・戦術

第七十六話 コロナ禍をチャンスに変えた沖縄のヴィンテージ家具店PEARL.の挑戦

中小企業の「1位づくり」戦略

 こんにちは1位づくり戦略コンサルタント 佐藤元相です。
 沖縄の企業は、独特の風土と文化の中で、他の地域とは異なるビジネスモデルを築いています。

 令和6年7月5日に当社主催で行われた企業視察では、その沖縄ならではの企業文化を実際に肌で感じる貴重な機会がありました。中でも特に印象的だったのが、ヴィンテージ家具を扱うPEARL.です。

 PEARL.は、沖縄の伝統的な「ゆんたく」を経営の基盤に据え、顧客との対話を何よりも大切にしている企業です。「おしゃべり」を意味する沖縄の方言「ゆんたく」を通じて、ニーズを的確に捉え、ビジネスに活かすそのスタイルは、私たちにとっても非常に新鮮で、今後のビジネスのヒントが詰まっていました。

 

ヴィンテージ家具店 PEARL.の挑戦

 PEARL.はヴィンテージ・アンティーク家具の輸入販売およびリペアを専門とする会社です。アメリカのヴィンテージ家具に特化し、その個性と魅力で顧客の心を捉えてきました。

 しかし、2019年に始まったコロナ禍により、事業に大きな影響が出ました。PEARL.はアメリカへ直接渡米して家具を仕入れることを主要なビジネスとしてきましたが、コロナ禍で国際物流が混乱し、渡米が不可能となり、仕入れがストップしてしまいました。

 また、県外からの観光客やバイヤーも来店できなくなり、県外からの売上が大幅に減少。従来のビジネスモデルでは、事業継続がとても困難な状況に陥りました。

 この危機を乗り越えるため、PEARL.は顧客との対話を通じて柔軟に対応策を講じました。特に重要だったのは、「ゆんたく」と呼ばれるお客さまとの会話です。

 

地元顧客に焦点を当てた商品開発

 コロナ禍で県外顧客の来店が見込めない中、地元顧客を中心により深い関わり方を行うようになりました。

 社長は「お客さまとのゆんたくが商売の基本」と、事業でもっとも大切なことだと話しています。「家具を売るのではなく対話を楽しんでもらう」ヴィンテージ家具に囲まれたお店の雰囲気はの中で子どもの話しや暮らしのことを話し出すと、お客さまはリラックスして、さまざま相談も出てきます。

 ゆんたくの中から「多くの人が自宅で過ごす時間が増える、使い慣れた家具を長く使いたいというニーズがあるのではないか」と社長は仮説を立て、リペアサービスの強化を決意しました。「思い出の詰まった家具をもっと使いたい」という潜在的な声に応え、丁寧なリペアを行うことで、お客さまに喜んでもらえると確信したのです。

 社長は「リペアは単なる修理じゃない。家具の物語を引き継いでいく仕事だ」と語ります。顧客にとって大切な家具を蘇らせ、100年先まで使い続けられる家具作りを目指すその姿勢が、多くのお客さまから支持を集め、リペアの依頼が増えていきました。

 社長は「お客さまが暮らしのことを話してくれる。そこから、その人にぴったりの家具が見えてくるんだよ」と語ります。

 

 

オンライン販売の拡充とテレビカメラを使った個別対応

 また、県外の顧客に対しても新たな対応が求められました。PEARL.はInstagramを活用して、商品の魅力を全国に発信。オンライン販売に注力し、コロナ禍でも地元以外の顧客にアプローチできる体制を整えました。

 スタッフはお客さまの要望を聞くだけでなく、自らの自己紹介や沖縄での日常についてもテレビカメラを通じて共有し、顧客との関係を深めています。誕生日パーティーやお店の日常の話題を交え、画面越しでも親近感を持ってもらえるよう心を込めて対応し、オンラインでも「ゆんたく」を大切にしています。

 この独特な対応が、オンラインでも顧客に選ばれる理由の一つです。業界の先駆けとなったこのサービスは、その魅力に共感する多くの顧客を引き寄せてきました。

 

リピーターの増加と口コミ効果

 PEARL.で家具のリペアやオリジナル家具を購入した顧客は、その高い品質と親身なサービスに大いに満足し、リピーターとなっています。

 「家族のように接してもらえる」という声が多く、口コミによってさらに新しい顧客が増加しています。この家族のような対応がPEARL.の大きな強みであり、顧客は単なる一時的な顧客ではなく「生涯顧客」として長くPEARL.と関わり続けているのです。

 

エリアを超えた人気とB2B市場への進出

 また、B2B市場にも進出し、地元業者と協力して店舗やカフェの内装家具を提供するなど、新たなビジネスチャンスを掴んでいます。これにより、PEARL.は単なる個人向け家具販売にとどまらず、業務用市場にも存在感を示しつつあります。

 

顧客ニーズの高度化と生涯顧客化への挑戦

 これからのテーマは「生涯顧客化」です。単に一度の取引で終わらせるのではなく、家具の購入やリペアを通じて長くお客さまとつながり続けることが重要です。Perlは今後も、「ゆんたくしましょ」と顧客を家族のように受け入れ、一人ひとりのお客さまを大切にしながら、生涯にわたる関係を築いていくことを目指しています。

 PEARL.は、「顧客との対話」を通じてニーズに応える姿勢にあります。社長が大切にする「ゆんたく」は、お客さまの声を聞き、それを商品やサービスに反映するための重要な手段です。顧客を家族のように大切にし、長期的な信頼関係を築く姿勢が、PEARL.の成長を支えています。

 


PEARL.
https://pearlgraffity.ti-da.net/

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