今年一番の話題作といえば、何と言っても、
『百年の孤独』(著:ガブリエル・ガルシア=マルケス)
です。
著者は、コロンビアの文豪で、ノーベル文学賞作家のガルシア=マルケス。
50年以上も前に書かれ、日本での初翻訳からも50年以上が経っているにも関わらず、
今年6月初めて文庫化。
発売から4ヶ月の時点で、なんと36万部を突破!
どの書店に行っても平積み、さらにはオリジナルグッズが販売されるほどの人気ぶり。
海外文学の翻訳作品、しかもメジャーとは言えないラテン・アメリカ文学で
前例のないほどの大ヒットとなっています。
ということで、一般の方からはもちろん、当事者とも言うべき出版業界の方からも、
「なぜそんなに売れてるのか?」
「読んだ方がいいのか?」
と、よく聞かれます。
売れている理由の一つは、宣伝文句の巧みさにあると思います。
「『百年の孤独』が文庫化されたとき、世界が終わる」
という、いわば都市伝説を端的に述べたものですが、
この刺激的な言葉がSNS時代にハマったのかと。
それと、黒魔術っぽい怪しげな表紙も見逃せません。
単行本は真っ白で、寂しげな雰囲気でしたが、
正反対のイメージを文庫化に際して作り上げ、
“SNS映え”に成功した、と言ってよいでしょう。
本格派の海外文学がこんなに話題になるのは、めったにないことですから、
個人的に嬉しい限りですが、気になることも一つあります。
それは、内容の難解さです。
話題作という理由で買った人の8割は読破できないのでは?
読みにくい理由の1つは、登場人物が多いこと、
しかも全く同じ名前の人が複数いること。
時間的にも、現在と過去が複雑に絡んでいたり、幻想的なところがあり、
ワケがわからなくなりやすい。
(このガルシア=マルケス独特の手法は”魔術的リアリズム”と呼ばれています)
舞台が南米の架空の村なので、その生活ぶりも想像しにくい。
といった感じで挫折しやすい要素は、いくらでもあります。
しかし、経営者・リーダーには、ぜひとも読んでほしい一冊です。
というのも、経営や組織運営につながる要素が多々あるからです。
本書は、一つの家系の百年にわたる栄枯盛衰の歴史を描いています。
新しい村を立ち上げ、繁栄させ、そして沈んでいく様は、
幾多の企業に見られた姿と重なるところが大いにあるはず。
事業や組織の「人間関係」や「世代交代」、「変化と適応」、
「創造と革新」、「多様性」などを考える材料となります。
もちろん「リーダーシップ」の重要性に触れられるのは、言うまでもありません。
本書の真の面白さがわかるのは、経営者・リーダーだ!
といっても過言ではないと個人的には思っています。
さらに、この『百年の孤独』が12月からネットフリックスで映像化されることもあり、
ますます話題沸騰していくことが予想されます。
話のネタとしても、きっと役立つでしょう。
いろいろな意味で読んで損なし!
読むなら、今です。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『ライヴ・イン・モントリオール』
(演奏:上原ひろみ&エドマール・カスタネーダ)です。
日本が誇る世界的ジャズピアニスト、上原ひろみと、
コロンビアの天才ハープ奏者エドマール・カスタネーダがコラボした歴史的名盤。
カスタネーダのハープは従来のハープのイメージを大きく覆す画期的なもの。
ある意味、”魔術的リアリズム”と言ってもいいくらいで、
コロンビアの空気までもが伝わってくるかのよう。
本書と合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。