先代が創業し、社歴50年を越える「S社」を訪ねた。
現在の社長は、二代目の息子さんである。そうは言っても既に50歳をこえて自信満々で新しい事業に挑戦中である。
若い時分は、例によってJC活動にもエネルギーを注ぎ、専務時代には、経営の近代化をめざし、随分無駄金を使ってしまったと、自戒しておられた。
父である社長からは「お前の金は死に金だ」と、しょっちゅう苦言を呈されたらしいが、その時は反発するだけで、深く意味も考えていなかった、とも言っておられた。
当時、会社は関連会社を一つ持っていて本業は父が社長、関連会社の専務をご本人が担当され、一人前の経営者になったつもりでいたそうだ。
時代の変化もあり、将来伸びそうな現業を4人のメンバーで、新事業として立ち上げグループ企業からの出資、自分も500万円を出資し、いざ営業となったが一向に仕事が獲れず見る見る間に資本金が底をつき、生れて初めて「金の大切さが身にしみた」と。
今になって思えば「それまでは、オヤジの金をただ使うだけで、まさに死に金」。その後、飛び込みに飛び込みを重ね、小さいながら初受注をいただき、その取引先は今でも継続していて、紹介もたくさんいただいた。初契約の状況は今でも鮮明に覚えていると。
現在は3番目の会社である新事業が一番大きくなり中核事業となって、3社の社長を兼務しているが、今日自分が何とかやれるのは、3番目の会社を立ち上げたからだと、お話ししておられた。
それでも3社目の創業時の給料は2番目の専務をしていた会社から出ていたので、甘いといえば甘いが・・・とも。
別の会社では、3代目に当たる現社長がまだ若い時分、赤字体質の子会社の建て直しを父である現会長から命じられ、悪戦苦闘のすえ、何とか業績を持ち直し本社に戻ってきた経験をしている。
それでも本社での社長就任時には随分苦労をし、10年経った今では、かなり自分の経営を推進できるところまで来ている。
弱音も何回も聞いたが、決して逃げることなく正面突破で解決している。子会社での経験が効いているのだろう。
もちろん父が子を厳しく教育し経営者として立派に育てられた方も多いと思うが、どうしても互いに反発して親子ゲンカになる例も本当に多く見てきた。なかなか難しい。
誰も助けてくれない状況を、いかに努力で切り抜け利益を出し続けるか?まさに後継者にとっては「仕事それ自体が、自分の経営力を磨き込む砥石」である。
現業だけを担当させても、経営管理者にはなれても起業家には、なかなか成れない。中堅、中小企業では社長が新事業を定期的に成功させなければ永い繁栄は難しい。
そのためにも若い時期、後継候補に1.5次創業を体験させておくことが極めて重要になる。がむしゃらに働かなければ業を起こすことは困難である。それでも、まったくのゼロから身を起こした先代の苦労には比べものにならないだろう。
お金や取引先を大事にしたり社員を一生懸命教育したり、何より売りに強かったり、創業者の一面をしっかり身につけた後継者を育てて欲しい。
また後継者は難題に挑戦して欲しい。必ず本人のためになる。
(2009年11月18日配信)