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人間学・古典

第117講 「論語その17」
義を見てせざるは、勇なきなり。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
正しいことを知っていながら、実行できないのは、真の勇気がないからである。



【解説】
掲句は「その鬼にあらずして、これを祭るは諂うなり」という言葉に続くものです。
この時代の鬼とは、先祖の霊魂であり、意地悪をする悪鬼ではありません。
孔子さまも先祖礼拝を大切にしていましたが、理由の無い祭祀は人間の弱さから出てきた諂いの信仰だと批判しています。
根拠となる理由(義)もないのに、祟りを怖れての祭祀信仰は、その人間に勇気がないからだと言っています。
 反社会的組織へのショバ代も諂い信仰に似ています。払わないと悪鬼の形相で人を脅かし、払えば他からの祟りを防いでくれるというのです。
これを断ち切るには、非常に勇気が必要です。

 一般的に宗教は、人間の弱みを餌にして、来世の幸せを実現するために、現世の信仰や寄進を強制します。
孔子さまは、既に2500年前にこの傾向に警告を発し、風評や過剰な恐怖感に惑わされる生き方を戒めています。
 儒教はこのような現実的な教育思想を背景にしていますから、偶像崇拝型宗教と一線を画し、自己鍛錬型の禅宗と結び付く傾向がうかがえます。

 また儒家の中でも、この行動重視を唱えたのが新儒教とも呼ばれる陽明学です。
陽明学は、中国の明代に王守仁(号:陽明)が興した儒家の一派です。
それまでの朱子学を批判し、『心即理』、『知行合一』など、実践重視を説きました。
『心即理』は、本来心と理(体)は一体のものであるとする考え。
『知行合一』は、知ることと行うことは同じ心から発する作用なので、分離不可能であるとする考え。
どちらも、実行・実践しないことを良しとしない思想です。
 「知っていて行わないのは、知らないことと同義である」と主張する思想観は、幕末の陽明学者を通じて、維新の志士たちの倒幕に大きな影響を与えていきました。
本コラムでも採り上げた『言志四録』にも、その思想観が見てとれます。
江戸無血開城という歴史の転換期を支えたのは、机上の学問ではない実践思想だったのです。

 唯、陽明学のその後の流れを見てみますと、自己の正義感に囚われて革命運動にのめり込んでいく者も多く、第二次大戦へ突き進んでいった軍部の姿勢にも影響を与えたともいわれます。
本来優れた心学であった陽明学が、誤った解釈で今日残っていることは非常に残念ですが、実行することの大切さを否定するには及ばないことも事実です。
過ちを犯さないためには、『義』をしっかり学ぶことも大切だということです。

 

杉山巌海

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