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- 第79回『【完全版】地下鉄のギタリスト』(著:土門秀明)
通常ならば、そろそろ初秋の爽やかな空気が感じられる時期ですが、
今年は、いまだに猛暑、終わらず…。
この暑さにやられて仕事が低下している方も多くいるようですし、
気分一新!
心の底から元気になる本を紹介します。
それは、
『【完全版】地下鉄のギタリスト』(著:土門秀明)
です。
音楽活動を諦めサラリーマンとなった著者が、人間関係や日々のストレスで精神崩壊。
会社を辞め、ギター1本だけ持って単身ロンドンへ!
そして、日本人初のロンドン地下鉄公認のバスカー(楽器演奏者)となり、
その後、10年以上にわたって活動。
本書はその激動、激闘の日々を綴った貴重な実録です。
…激闘とは言ったものの、著者が熱弁を奮っているわけでも、
雄叫びを上げているわけでもありません。
むしろ、語り口はクール。
淡々と様子が語られているからこそ、より心に響くものがあるというか。
どこか小津安二郎の映画の世界に通じるものを感じます。
まず、経験談として面白い。
バスキングをわかりやすく例えるなら、いわば地下鉄構内における
路上ミュージシャンのようなもの。
著者は、なんと、このバスキングによる日々のチップを収入源として、
ロンドンで10年以上も生活してきたのです。
日本では、とても考えられない話ですし、当然ながら日々の経験も
我々の想像を超えるもの!
日常の中にある非日常、さらには異文化を味わうにも
またとない一冊と言えます。
そして、ここで紹介するからには、もちろんビジネスを高めることにも
大いに関係ある内容です。
なぜなら、単に地下鉄に行って演奏していれば、生活するのに十分なチップが
得られるわけではないからです。
演奏だけで生活していくためには、演奏以外の要素も必要なのです。
これはビジネスマンとて同じこと。
たとえば、コミュニケーション力、マーケティング力、計画性、状況を察知する力…
本書の文中に、多くの要素が綴られていますが、中でも
「有名ミュージシャン、バスキングに挑戦」の記は必読。
有名だから稼げるわけでも、演奏さえすれば稼げるわけでもないことが、
よくわかります。そして何が必要なのか、も。
多い日には1日(4時間)で、111ポンド(当時の日本円で約2万2000円)も
稼いだというその背景には、演奏力に加え、サラリーマン時代の経験を活かした
"ビジネス力"もあったものと考えられます。
10年以上もの長きにわたってロンドンでの生活を可能たらしめたものを
感じ取ることは、挑戦する経営者やリーダーにとって大きな意味を持つことでしょう!
異文化体験のワクワクするような読み物として、
経営者やリーダーのビジネス力を高める必読書として、
ぜひ読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、本書の付録CDです。
全曲が著者の土門秀明氏による演奏。
しかもロンドン地下鉄構内で録音された、まさにライブアルバム!
現場の雰囲気も感じながら、合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。