黒字の会社だが、過大な銀行融資を返せなくなった会社の社長さんが、「返済ができないけれど、なんとか仕事は続けたい」と弁護士さんに相談したところ、破産をすすめられた。
社長は「こんな会社でも本業は黒字なので、返済がなければやっていけるのです。だから破産はしたくないのです・・・」とくいさがると、弁護士さんは「それでは民事再生を・・・」とすすめることになる。
この話、実際の話だ。
弁護士さんは法的な手続にもちこみたがる。
法的手続で儲けている弁護士さんという職業からいえば、当たり前と言えばそのとおりの話で、ある一定の形にあてはめるのが好きな日本人の多くが、破産だからといって何十万円、何百万円を支払い、民事再生だからといって何百万円を何の疑問も感ぜずに支払うことになる。
ところが、破産でも民事再生でもなく事業を展開する術もあるのだ。僕が顧問契約をしている会社のほとんどがこれにあたる。弁護士さんがついている企業でも、むやみに一定の型にあてはめることはしない。
しかも債務者社長さんは、 ほとんど自分で債権者・銀行と交渉をするようになる。
僕の顧問契約先企業のほとんどが、僕に助言や判断の難しい部分のアドバイスを求めたりはするが債権者との交渉の中から学ぶべきものを学んでいき、対等に交渉できるくらいにまで成長する。もちろんこれに向かない経営者もいる。
破産にしてもすべての担保不動産を売却してから破産したほうのが得なのに、形にあてはめようとして、債務不履行だから即破産というきわめてまじめな判断をしてしまう。
じっさい、形に当てはめるほうが楽なのだ。
だから、社長さんの多くが、残念なことに、この「最大の経営危機」から何かを学ぼうとすることを避けようとする。その結果、失敗から学ぶことができずに本当の再起さえできなくなってしまう。
せっかくのチャンスなのに。
「最大の経営危機」から学ぶことが出来れば、それはその企業・社長にとって最大の強みになる。
赤字補填資金を過大に借りていて返せなくなり「破産」しかすべのない企業があるのだけれど、ビジネス自体をその強みから再構築することで売上高営業利益率を黒字化した前年比の十倍以上にし、経費のほとんどを変動費にすることで再起させようとしている。
こんなケースは社長の決断と、そこから学ぶ力と意思がなければできない。
今の日本におこっている大災害も、そこから学ぼうとすること、学ぶことができれば再起し、より成長できるようにも思えるのだが・・・。
失敗から学ぶことはもっとも大切なことのひとつだ。