会社の「儲け」を示しているのが「利益」です。社長は、月次決算で必ず利益の金額を確認します。そのとき、目標設定した利益の金額を達成したかどうかで一喜一憂しがちです。増益の場合にはさらに利益を増やす手を打ち、減益の場合にはすぐに経費の使い方を見直します。
社長が毎月の利益の金額だけを見て経営していると、視野が狭くなり、打つ手が限られてしまうことがよくあります。
そこで今回は、利益を改善するときに役立つ“「売上高営業利益率」3つの点検”について説明します。利益を「金額」だけでなく「比率」で点検することにより、経営改善のヒントが見つかる可能性が広がります。
御社の今期の利益は、目標に対して何%達成していますか?
①各部門の「売上高営業利益率」を把握して、経費配分を見直す
経営分析において利益率を計算する場合の「利益」には、「売上高総利益」「営業利益」「経常利益」「税引き前利益」「純利益」など様々な利益が使われます。
月次決算では、売上高から「販売費および一般管理費」までを控除した「営業利益」を使うことをお勧めします。特に部門の業績管理においては、各部で直接把握できる数字が「営業利益」までだからです。
月次決算がまとまったら、まず損益計算書で会社全体の「売上高営業利益率」を確認します。
次に、部門ごとに分類集計した「売上高営業利益率」を見るために、経理に指示して会計システムから部門別の損益計算書を出力してもらいます。
部門別に集計された損益計算書の「営業損益」の金額欄の横に「売上高営業利益率」が記載されています。会社全体の「売上高営業利益率」と、各部門の「売上高営業利益率」を横に並べて比較してみます。
部門の事業内容や、取り扱っている商品、販売方式等により、「売上高営業利益率」は異なってきます。また、業種業態が同じであっても、営業地域や事業規模により「売上高営業利益率」が違ってくることもあります。
各部門の「売上高営業利益率」を見比べて、「売上高営業利益率」が高い部門と低い部門の違いを把握します。経費の配分などを再検討し、利益率の底上げを促してください。
前月の各部門の「売上高営業利益率」は、何%でしたか?
②「売上高営業利益率」を時系列で比較して変化をキャッチ、その原因を追究する
次に、時間軸をずらして「売上高営業利益率」の変化を見ます。
経理に依頼して、会計システムから「月次損益推移表」を出してもらいます。期首から前月までの損益計算書を月別に横に並べた表です。月次損益推移表についても、会社と部門、それぞれについて出力して「売上高営業利益率」の変動を見ます。
「売上高営業利益率」は通常は10%以下の小さな数値ですので、変化を見落としがちです。しかし時系列に並べると、変化に気づけます。
大切なのは、社長や幹部が利益率の変化をキャッチし、原因を確かめることです。利益率が好調に推移している部門は、どの営業活動の成果が数字に現れたのかを確認します。逆に利益率が悪化傾向にある部門は、他の部門と比べて何が違っているのかを検証します。
季節変動によって業績が変動する事業では、前年同月と「売上高営業利益率」を比較してみます。同様に、予算の数字と実績値についても「売上高営業利益率」を比較し、その達成状況を確認します。
「売上高営業利益率」を「過去・現在・将来」と比較することで、会社や事業の収益性の変化を見ることができます。
御社の収益性は、ここ数年どのように変化していますか?
③「売上高営業利益率」が高い〈同業他社の販売費と管理費の使い方〉を参考にする
「売上高営業利益率」を部門別に検証し、実績値や予算値と対比させたら、最後に同業他社と比較します。地域別や規模別の同業他社の経営数値は、顧問の会計事務所や取引銀行の担当者に依頼すれば入手できます。
一般的に業種が同じであれば、売上高から仕入高(売上原価)を差し引いた粗利益(売上高総利益)の割合(粗利益率)はおおよそ似ています。したがって、同業他社と比べて「売上高営業利益率」が大幅に異なる場合は、販売費や管理費の使い方に違いがあるということになります。
「売上高営業利益率」が高い企業は、優れたマーケティング戦略や販売手法を導入して、効果的な販売費の使い方をしているかもしれません。利益を生まない仕事には、ローコストオペレーションを徹底していることも考えられます。
「売上高営業利益率」が高い企業と比べることで、自社の経費の使い方を見直すきっかけにしてください。
御社は同業他社と比べて、「売上高営業利益率」が高いですか?
「売上高営業利益率」3つの点検で、経営改善のポイントを見つける
今回見てきたとおり、月次決算で営業利益を検証するときには、「金額」だけではなく「比率」も点検すると、経営改善のポイントが見つかりやすくなります。
「売上高営業利益率」の点検の仕方は、次の3つです。
点検① 各部門の「売上高営業利益率」を把握して、経費配分を見直す
点検②「売上高営業利益率」を時系列で比較して変化をキャッチ、その原因を追究する
点検③「売上高営業利益率」の高い〈同業他社の販売費と管理費の使い方〉を参考にする
最近では、利益金額の目標だけではなく、「売上高営業利益率」の目標を設定している会社も増えています。営業利益の目標を金額だけで設定するよりも、例えば「売上高営業利益率5%」のように比率と一緒に目標設定します。
このようにすると、各部門の社員が金額だけを追うのではなく、販売費の利益獲得効率を考え、管理費の費用対効果を工夫するようになっていきます。