menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家の
”声”と”文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ
  • 小
  • 中
  • 大

経済・株式・資産

第94話 なぜ日本企業は中国市場から逃げるのか?

中国経済の最新動向

◆日本の対中投資は4年連続減少
 2012年以降、日本企業の対中直接投資の減少は止まらない。中国商務省のデータによれば、実行ベースで日本の対中投資金額が2012年の74億ドルをピークに、13年71億ドル、14年43億ドル、15年32億ドル、16年31億ドルと減少の一途を辿っている。4年連続減少で、16年の投資額は12年の4割強に過ぎない。
 
 過去5年間、中国の名目GDPは48.4兆元(約7.5兆ドル)から74.4兆元(約11.4兆ドル)へと54%増加、国内需要は年平均12%のスピードで拡大している。世界各国も中国の巨大市場に照準し、対中直接投資を増やしている。例えば、米国は2012~16年対中投資が28億ドルから38億ドル(35.7%増)、韓国は30億ドルから47億ドル(56.7%増)、英国は4億ドルから22億ドル(5.5倍増)、ドイツは15億ドルから27億ドル(80%増)など、いずれも大幅な増加を見せている(図1を参照)。
 
china94_01.jpg
出所)中国商務省統計データにより沈才彬が作成。
 
 主要国が相次いで対中投資を増やしている中、日本だけが激減させている。日本企業は中国の巨大市場に背を向けていると言われても仕方がない。
 
◆生産コスト上昇でメリット減退
 それではなぜ日本企業は中国市場から逃げているか?第一の理由は言うまでもなく日中関係の悪化である。2012年、日本政府の尖閣諸島国有化に反発し、中国では大規模な反日デモが発生し、湖南省平和堂など一部の日系企業は現地の反日暴動によって大きな被害を受けた。2015年から日中関係は若干改善されたが、現状では日本企業がなかなか反日暴動のトラウマから抜け出せないでいる。
 
 第二の理由は日本政府の外交戦略にある。2013年以降、TPP推進、米リバランス戦略への呼応、中国けん制などは日本の外交戦略の基軸に置かれ、民間企業のビジネスもこの戦略に影響される。そのため、日本の対外投資は中国よりTPP加盟国へシフトする動きが鮮明になってきた。
 
 第三の理由は中国生産コストの上昇だ。経済成長に伴う国民所得の増加によって中国の人件費は過去5年間倍増し、ASEAN諸国や南アジア諸国より遥かに高い。中国現地生産のメリットが大きく減退している。
 
◆中国経済の大変化に追いつかず
さらに日本企業は中国経済の構造的な大変化に追いつかないという、より深層的な理由もある。筆者は年間5、6回で中国現地調査を実施している。現地調査を通じ、中国経済の「5つのシフト」という大変化を痛感している。即ち、(1)成長センターは沿海部から内陸部へシフト、(2)産業構造は製造業からサービス業へシフト、(3)製造業では輸出から内需へシフト、(4)消費分野では店舗消費からネット通販へシフト、(5)支払い手段はキャッシュ決済からスマホ電子決済へシフトなどである。
 
 だが、日本企業の対中投資は内陸部より沿海部に、産業分野ではサービス業より製造業に、製造業では内需より輸出に、消費分野ではネット通販より店舗販売に、支払い手段はスマホ決済よりキャッシュ決済に、それぞれ集中している。中国の構造的な大変化に、日本企業は全く追いついていないのが現状だ。そのため、一部の日本企業は現実逃避の形で中国市場から逃げている。
 
 しかし、日本企業は国内市場だけではもう飯が食えないという厳しい現実に直面する。中国市場を抜きにして日本の経済成長も産業発展も語れない。日本企業は早急に対中戦略を見直し、積極的に中国市場を切り開かなければならない。

 

第93話 米中首脳会談の舞台裏(下)前のページ

第95話 2018年深圳は香港を逆転する次のページ

JMCAおすすめ商品・サービスopen_in_new

関連セミナー・商品

  1. 沈 才彬(しん さいひん)「爆発する中国経済」CD

    音声・映像

    沈 才彬(しん さいひん)「爆発する中国経済」CD

関連記事

  1. 第22話 「乱世にチャンスあり」―2012年中国ビジネスへの視点―

  2. 第158話 なぜ日本企業は政府の行政指導に背を向けるか

  3. 第135話 「李克強指数」で中国の景気回復を検証する

最新の経営コラム

  1. 知的生産のセンス

  2. 第174話 「期末に戻せばバレない」の罠 ~運転資金の”一時流用”を銀行が確実に見抜く理由〜

  3. 第九十八話 紙問屋であり続けることをやめた後継者 ― 守るものは信用。変えるものは事業。城南村田ホールディングスの経営戦略

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 人事・労務

    第38話 人事制度の点検・見直し、始めていますか?(2)
  2. 税務・会計

    第125回 経理を補助するAIアシスタント
  3. 戦略・戦術

    第6話  「高額退職金を受け取り会社に貸し付けよ」
  4. 戦略・戦術

    第15回 人が採用できない時代に突入!!継続できる企業は、採用できる企業
  5. 仕事術

    第107回 超簡単にビデオコミュニケーション「Amazon Echo Show」
keyboard_arrow_up