大手を追わず、独自の発想、独創的な商品開発で業績を伸ばしている中堅飲料メーカーの木村飲料株式会社が注目を集めている。カレー味の「カレーラムネ」からお茶を使ったコーラ「しずおかコーラ」まで、数々のユニーク商品を発売し、ヒットを飛ばしている炭酸飲料の会社だ。同社は昭和28年に創業以来、着実に業績を伸ばし、微増だが、売上げは右肩上がりを続けている。
約30年前は静岡県内にサイダー製造業者は30数社あったが、唯一、生き残っている会社である。業界の中では「中小企業で新しいことにチャレンジする会社」「大手の真似でなく、独自の商品開発で成長している会社」という位置づけで、ユニークでアイデア商品に関連した話題を提供している会社として、マスコミにも頻繁に登場する認知度の高い企業である。
同社の特徴はいくつかあるが、最も目立つのが商品開発力とユニークなネーミングを世の中に送り出していることである。同社で一番売れている商品といえば、2007年春に、売り出した「カレーラムネ」が約250万本、発売1年足らずの「しずおかコーラ」は80万本である。
ヒットを続けている「カレーラムネ」は、開発当初、大半の社員が「不味くて、売れない」と言っていた商品である。「こんなインパクトのあるものが他にあるか」ということで、木村英文社長(55歳)の独断で製造に踏み切った。ところが、蓋を開けてみると、売れすぎて生産が間に合わないという状態が続いた。その時、木村社長は学んだ。「変なジュースでもいいんだ」と気づいた。大手の真似でなく、大手が通らない道を通らなければ中小企業は生き残れない、と実感した。
次から次にヒットを飛ばす商品開発力はどこに秘密があるのか。「値段でアピールしないこと。失敗を恐れずに挑戦することです。飲んで楽しい商品を目指し、全社員でアイデアを出し合っています。へそ曲がり的なアイデアは私の思いつきです。アイデアは常に出し合っていますが、10年前のアイデアがタイミングで製品になることもあります」(木村社長)
仕事で挑戦することを進めているが、社員に対して「お客様第一に考えてください」と常に呼びかけている。お客の満足度が高ければ、売上げは伸びるという。木村社長の口ぐせは「ま、いいか」で、「致命傷でなければ、少しくらいの失敗は薬です」という考えだ。型にはまらない、脱常識の商品開発で企業の活力を維持しようという狙いである。
上妻英夫