暑かった夏も終わり、さわやかな秋を迎えました。
いかがお過ごしでしょうか?
秋といえば、読書!
僕が季節労働者のごとく、活躍する時期です(笑)
今、学校司書の研修講義のため、福岡県に来ています。
これから何をお伝えしようか、ワクワクしていますが、
最近出会った1つの映画と一冊の本が、
研修に向かう僕の気持ちを一層熱くさせてくれています。
その映画とは、イタリア映画界の巨匠エルマンノ・オルミ監督の最新作、
『楽園からの旅人』(8月より公開中)。
物語の奥深さに驚嘆するとともに、
非常に印象に残るセリフが出てきました。
「この世の秘宝は、心ある人だ。
私たちの道はまだ遥かに遠い」。
世界の状況が一層混迷する中、
我々が本当に追い求めるべきこと、大切にすべきことは何か?
いま、世界に必要とされる人物とは?
いろいろ考えさせられるところが多く、
余韻がいつまでも続く、名作と出会えた喜びを堪能しています。
そして、ある一人の日本人のことを思い出しました。
その人の名は、出光佐三。
出光興産の創業者で、数々の型破りな言動で、
異端の経営者として知られています。
その出光氏が今年、話題の本とともに
大きな注目を集めています。
第10回本屋大賞の第1位に選ばれ、
100万部を超える大ヒットとなった小説『海賊と呼ばれた男』。
その主人公・国岡鐵造は、出光氏がモデルなのであります。
なぜ今、出光佐三なのか?
その答えに迫るべく、読み進めてハマったのが、
今回紹介する、出光佐三96年の生涯を追ったノンフィクション
『出光佐三 反骨の言魂』(PHPビジネス新書)です。
徹底した人間尊重の姿勢。
タイムカードなし、出勤簿なし。
定年は自分で決める。
社員を家族と考え、何かあった時には、とことん面倒をみる。
戦後、大財閥会社が軒並みリストラを行っている中で、
出光氏は千人を超える社員の一人も解雇しないと宣言し、
実際に実行。
60歳にして戦争でほとんど全てを失い、借金だけが残った、
まさにゼロからの再出発にも関わらず、この心意気!
本書の第三章には、再出発時につくった社員名簿を見て、
「ほう、これが俺の財産目録か」と嬉しそうに微笑んだという
粋なエピソードも描かれています。
人間こそが最高最大の財産であり、何より大事にすべきもの、
という出光氏の信念を感じます。
こういう人だったからこそ、社員も付いてくるし、
窮地の際に、手を差し延べる人たちも現れたんだな、と
思わざるをえません。
奇想天外な発想や行動も、国を愛するがゆえ、
社員や一般国民の幸せを想ってのことですから、
筋が通ってます。
天運に恵まれるべくして、恵まれた人ですよね。
もし可能なら、今の日本を見て、出光氏がどう思うのか、
心底聞いてみたいですよ!
出光氏のような生き方や経営姿勢は、
今や時代遅れで役に立たないものなのか?
それとも、この混迷の時代だからこそ、
見直されるべき、学ぶべきことなのか?
ぜひ本書をお読みになって、
お考えいただければ幸いです。
経営者、リーダーはもちろん、全ての働く人たちに
強くおすすめします!
尚、本書を読む際にお薦めの音楽は、
スペインの名ジャズピアニスト、テテ・モントリューの
『テテ!(Tete!)』
です。
テテ!/amazonへ
実は、講演先で入ったカフェで本書を読んでいた際、
偶然流れてたいたのが、このアルバムなのです。
信じられないほど、本書を読む気分を高めてくれました!
すぐ店主にアルバムを確認し、教えてもらいました(笑)
その意味でも、忘れられない一枚、そして一冊です。
ピアノトリオの最高峰との誉れ高い名盤とともに
ぜひお楽しみください。
では、また次回。