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第93話 米中首脳会談の舞台裏(下)

中国経済の最新動向

 先日、筆者は中国ビジネスフォーラム4月例会にて、「中国から見たトランプ政権と米中貿易戦争の行方」を演題に講演した。講演の中で、今月6~7月に米フロリダ州にあるトランプ大統領自身の別荘マール・ア・ラーゴで行われた米中首脳会談の背景、成果及び米中関係の行方について詳しく解説した。本コラムでは、「米中首脳会談の舞台裏」という連載シリーズの形で、3回に分けて講演内容を中心にレポートをまとめた。今回は第3弾で、「米シリア攻撃は習近平氏へのお土産だ」というテーマで異論を展開する。
 
●米シリア攻撃は習近平主席へのお土産だ
 4月6日夜、米フロリダ州のトランプ大統領の別荘。トランプ大統領主催の習近平国家主席夫婦を歓迎する晩餐会は終盤を迎え、デザートが持ち出されたところ、トランプ氏から習近平氏に米国によるシリア攻撃を説明した。マスコミは米シリア攻撃を「習主席への圧力」とか「宴会攻撃」とか喧伝しているが、筆者は全く違う見解を持ち、これが事実上「習近平氏へのお土産」だと考えている。習近平氏はきっと喜んでいると思う。理由は次の3つである。
 
 1つ目は、米国は中東・欧州・東アジア三正面作戦の余裕がないため、シリア攻撃で東アジアにおける米中衝突のリスクが逆に低下する。北朝鮮への警告や圧力が強まるが、実際に米国による先制攻撃の可能性は低い。
 
 2つ目は、シリア攻撃で米ロ関係の悪化は決定的となり、中国にとってトランプ政権の誕生で「米ロ連携、中国けん制」という悪夢が消えた。また、米ロ対立によって、「ロシアと連携して中国をけん制する」という安倍政権の思惑も狂ってしまう。結果的には大国間の政治力学は中国有利に働く可能性が出てきた。
 
 3つ目は、シリア攻撃によって、米国が再び中東戦争の泥沼に陥る可能性があり、中国にとって台頭継続の好機となる。実際、2001年9.11事件以降、米国はアフガン戦争とイラク戦争という2つの戦争を発動し、いずれも泥沼化してしまった。そのため、2001~10年の10年間、米国は衰弱すると同時に、中国は急速に台頭している。2000年、中国の経済規模は1兆2,149億ドルで僅か米国(10兆2,847億ドル)の12%に過ぎなかった。しかし、2010年になると、中国のGDPは10年間で5倍増の6兆662億ドルにのぼり、米国(14兆9,644億ドル)の40.5%に相当するようになった。ちなみに、2016年時点で中国と米国の格差はさらに61.3%まで縮められた(図1を参照)。
 
china93_01.jpg
出所)IMFデータにより沈才彬が作成。2016年数字はIMF2016年10月時点の予測。
 
 それでは実際、習近平氏はトランプ大統領からシリア攻撃の報告を受けてどう反応しただろうか? 米国側の説明によれば、習主席は10秒間沈黙し、通訳に「もう一度言って欲しい」と聞き返した後、トランプ大統領に「子供たちが殺された時には、(攻撃は)仕方がない」と述べ、理解を示したという。
 
 周知の通り、中国はこれまで、国連安保理でのシリア関連決議案に対し、6回にわたってロシアとともに拒否権を発動してきた。習主席による米シリア攻撃に理解を示した姿勢は、シリア問題における中国の立場の大きな転換を示唆している。事実、4月12日、米英仏作成の安保理決議案に対し、中国は拒否権を発動せず、棄権票を投じた。
 
 習近平氏の柔軟な対応はトランプ氏の厚い信頼を得た。翌日4月7日、トランプ大統領は習近平主席と2人切りで(通訳だけ同席)、4時間以上密談した(次頁写真を参照)。2人は米中関係、安全保障、通商問題、北朝鮮問題など幅広い分野で意見交換を行われ、突っ込んだ話ができたと見られる。密談内容は公表されていないが、米中双方は多くの問題で取引ができたという見方は間違いないだろう。これは後日のトランプ大統領による習主席絶賛や中国重視の発言からも窺える。
 
china93_02.jpg【写真説明】トランプ大統領と習近平主席による二人きりの密談は4時間以上に及ぶ。

 トランプ・習近平密談の際、日本や安倍首相に関する言及があったかどうか?あった場合どんな内容なのか?日本は疑心暗鬼の必要がないが、首脳会談を契機とする米中急接近の動きを注意深く見守る必要はある。
 
 特に、トランプ大統領は年内に中国訪問を予定している。もし訪日より先に訪中すれば、日本のショックが大きい。もう1つ要警戒のことはトランプ政権の中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加である。これが実現すれば、AIIBに反対し続けてきた日本は完全にハシゴを外されたことになる。日本は早急に対応策を考えなければならない。

 

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